ボフミエ王宮攻防戦3 ボフミエ帝国魔法の塔崩壊
城門の中では血みどろの戦いが始まっていた。
兵士たちが出てくると所かまわず手当たり次第にアレクとジャンヌは叩っ切っていく。
「姉さん!」
ウィルは姉を求めて魔法の塔に向かおうとする。
「ウイル、取り敢えず地下牢だ。後ろの住民たちを連れて行く」
ジャンヌが叫ぶ。
「しかし、魔導師が少なくないか」
アレクが騎士を弾き飛ばしながら言った。
あまりにも本拠の護衛が弱すぎるのだ。
数も少ない。
「確かに魔導帝国ならもっといておかしくないはずだ」
「おい、魔導師はどうした」
弾き飛ばした騎士の胸倉をつかんで引き上げてアレクが聞く。
「ふんっ貴様らがいくら探ってもここには魔導師も皇帝陛下もおられぬわ」
騎士がカラ元気で答える。
「どこに行った?」
アレクが聞く。
「ふんっ。知らぬわ。たとえ知っていても答えぬ」
アレクはにやりと笑った。
「貴様、目をくりぬかれたいとみえる」
剣を振りかざす。
「ひえええ」
男は慌てた。
脂汗をたらたら垂らす。
「アレク、答えないならさっさと殺せば」
「そうだな、ジャンヌ。あっさり首でも落とすか」
アレクは更に不吉な顔をする。
「アレクって、赤髪のアレクってひょっとして赤い死神…」
男は目を見開いてアレクを見た。
自国のノルディン皇帝でさえ恐れる赤い死神。
その殺した人間の数は100万を下らないと。
男はもう震えを通り越して失禁していた。
「そう、で皇帝はどうしたって」
アレクが尋ねる。
「ど、ど、何処かの娘を追ってみ、南に行ったと」
震えてドモリながら男は言った。
「娘の名前は」
「し、しりません。ほ、本当です」
「ふんっ、では殺そうか」
「ひ、ヒィー――」
男は今にも気絶しそうだった。
「姉様がいないのならばこんなところに用は無いですね」
ウィルはさっそく転移していこうとする。
「ウィル待て。この人たちを何とかしないと」
後ろの住民たちを見てジャンヌが言う。
ウィルは後ろを見て諦めた。
(もし庶民を見捨てたなんて姉様に知られたら絶対に二度と話などしてくれない…)
「おい、こいつらの家族はどこにいる」
アレクが聞く。
「地下の発掘現場に」
「発掘現場?」
アレクが聞き返す。
「古代の遺跡を発掘しているとか」
なんで王宮にそんなのがあるのかは判らなかったが、アレクは男に案内させた。
王宮の地下が洞窟の入り口になっていた。
その前の10名ほどの見張りを一瞬で3人は倒す。
鉄格子もジャンヌの一閃でぶち破られていた。
地下から運び出した土を運んでいた囚人たちはジャルカが杖を一閃すると鎖をつけられた囚人たちの手かせと足かせが取れて自由になる。
「おとう!」
「ケイトや」
見知った顔を見つけた住民たちが駆け寄る。
しかし、奥にはまだまだ捕まったものが働かされていそうだった。
「!」
その時すさまじい魔導反応が遠くに感じられた。
こんなところまで感じるなんてとんでもない力だ。
「今、すさまじい魔力を感じたぞ」
ジャンヌがジャルカに言う。
「さようですな、これくらいの魔力を有する方となるとクリス様しか心当たりはありませんが」
「姉様」
ウイルはすぐにでも転移していきそうだった。
「場所はここから南に300キロばかり下ったところかと」
ジャルカが言う。
「まあ、クリスの事だから問題はないとは思うが」
ジャンヌが言うが、
「姫様。姉様は姫様みたいな暴風王女では無いんです」
ウィルが喰ってかかる。
「何を言う。クリスはシャラザール山を一瞬で弾き飛ばすほどの魔力を持っているのだぞ」
「それと大丈夫かは別問題です」
ジャンヌの返事に即座に反論する。
何しろ姉はジャンヌと違ってかよわいのだ。
「この囚人たちを解放するのに、あと1日はかかるみたいだが」
アレクが言う。
「まあここは私一人がいれば何とでもなりましょう」
ジャルカが言った。
そして、解放した者の中で使えそうなもの達に次々に指示を下していく。
ジャルカは人質に取っていた騎士にもアレクに殺されたくなかったら言うとおりにしろ
と脅して使いだした。
「魔法の塔のある限りここから半径10キロは転移の魔法は使えませんが」
ジャルカが言う。
ボフミエ魔導帝国の象徴の王城、その中心の魔法の塔は長年の魔導の研究の蓄積と
ボフミエ帝国の王城の守備のかなめだった。
「ならばその塔を叩っ切るのみ」
ウィルは言うや地下から駆けだした。
地上に飛び出すや、
「やっ」
と叫んで飛び上がって剣を一閃する。
ガキーン
大きな音がしたが、塔はびくともしなかった。
「まだまだだな」
ジャンヌは笑って言うと今度は自分で飛び上がる。
「喰らえ!」
大声で叫びながら剣を一閃した。
ドカーン
すさまじい音と噴煙が上がる。
しかし、その噴煙の晴れた後にはびくともしていない魔法の塔が聳え立っていた。
「あははは、君たちでは無理かな」
残ったアレクが笑って言うと、魔力を纏って飛び上がる。
「喰らえ、必殺剣」
アレクは渾身の魔力を剣に込めると横に一閃させる。
光が塔を直撃した後辺りは白い光に包まれる。
ズキューン
そしてそのあとにすさまじい音が周りに襲い掛かる。
「ふふふ」
決まったとアレクは思った。
ウィルもジャンヌもまだまだだと。
しかし、白い光が収まった後にはびくともしていない魔法の塔があった。
「ふぉっふぉっふぉっ。お三方ともまだまだ修行が足りませんな」
ジャルカが後ろから笑った。
「技が派手でも効かなければ意味がありませんぞ」
言われた3人はあらぬ方を見て誤魔化す。
「ならばジャルカは出来るのか」
ジャンヌがきっとして聞く。
「ふっふっふっ、では御覧じろ」
ジャルカはトントンと杖で地面を叩いた。
それだけだ。
「えっ」
3人はしばらくしてジャルカと塔を交互に見る。
「何も起こらないではないか」
馬鹿にしたようにジャンヌが言う。
「姫様の目は節穴ですな」
「何を…」
ジャンヌが反論しようとした時だ。
ピキッと塔に斜めのひび割れが走った。
「えっ」
驚く3人をしり目に塔がその線に従ってゆっくりと倒れていく。
それは誰もいない森の方にゆっくりと倒れていった。
すさまじい大音響とともにボフミエの象徴魔法の塔は消滅した。
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