学祭・演劇開始・暴風王女は間違えて赤い死神を投げ飛ばしませんでした
すいません。結局2回投稿できませんでした。
今回から演劇編・怒涛のクライマックスです。
ボフミエ皇帝の悪巧みは成功するのか?
そうかシャラザールに瞬殺されるのか?
請うご期待!
毎日更新頑張ります???
午前中にリハを何とか終えた一同は遅い昼を食堂で取った。
そして即座に準備に入る。
荷物を手分けして講堂の裏に運び込む。
「いよいよですわね」
緊張したままでオーボエを持ったソフィアが言った。
「ああついに世界各地に意地悪令嬢として名が広まるのですね」
メーソン子爵令嬢がつぶやく。
「本当に。これで嫁に貰い手が無くなったらエステラさん、一生恨みますわよ」
イザベラが恨みがましそうにエステラを睨む。
「そんな…」
エステラは思わず悪寒を感じてしまう。
「まあ、イザベラさん、これが縁で素敵な殿方から婚約の申し込みがあるかもしれませんよ」
クリスがフォローする。
「それクリス様にあっても悪役令嬢の私には絶対にないですわ」
イザベラが即座に否定する。
「と言うかクリス様。どなたか紹介してください」
メーソンがお願いする。
「そうです。侯爵家では釣書の山が出来ているとか。そのおこぼれでいいので是非とも私にも」
その二人の勢いに思わず引くクリスだった。
「何を言っているのです。二人ともあさましい」
そこにエカテリーナが入ってきた。
「私は自分の魅力でクリスさんからオーウェン様を奪って見せますわ」
仁王立ちで胸を張ってエステラは言い放った。
「あのう。別にオーウェン様は私の物でも無いですけど」
ボソリとクリスが言う。
「えっちょっとクリス待ってよ。俺はクリスの物でありたいんだけど」
オーウェンが慌てて入ってくる。
「あっオーウェン様」
慌ててエカテリーナがオーウェンの腕に縋り付く。
「さすがオーウェン様。大国の王女に好かれてすごいですな」
アルバートがすかさずいう。
「おい、待てアルバート。お前ドラフォードの人間だろ。俺の応援してくれよ。
なんで邪魔する」
「これは異なことを。私はクリス様の騎士です。ドラフォードの騎士ではありませんから」
「私も母からはクリス様と親しくなるようにと厳命されていますが、オーウェン様を応援しろとは一言も言われておりません」
イザベラも言う。
その二人を見て
「ちょっとクリス」
慌ててクリスの方を見るが、既にクリスは本来ならばエカテリーナの取り巻きであるはずのアリサらに囲まれて他の話で盛り上がっていた…。
完全にノルディンの取り巻き連中はクリスに篭絡されていた。
「やっとクリスを見かけられたな」
その光景を遠くから拡大魔法でアーベルが見ていた。
「護衛騎士が二人いるようですが」
「そのうち1人は演劇に出ているだろう。昨日アーロンの視線でリハを一部始終見せてもらって動きは把握した」
クラスメイトの王子らに手を出すと気づかれる可能性があるので護衛隊長のアーロンの意識を乗っ取ったのだ。そしてアーロンからシナリオなどすべての情報を手に入れていた。
そしてサロモンとどこで実行したらよいか何度もシミュレーションを行ったのだ。
そして最終配置も含めて全て昨日のうちに決めていた。
「では予定通り実行しますか?」
サロモンが確認した。
「当然だ」
ボフミア皇帝アーベルは最終決定を下した。
前の演劇部の演劇が16時30分に終わった。
スティーブを中心に怒涛の搬入作業に入る。
講堂の中でも客の入退場がある。
今回はこの通称王族演劇があるので各回全員の入れ替えをさせていた。
そして最終回は2階の貴賓席もすべて解放された。
1階1000席。2階100席のマーマレードでは最大規模の劇場となった講堂だった。
最終回は超満員。場所的に空いているところや控室には魔導電話協会の面々が50名ほど、魔導師も50名ほどが控室も含めて待機していた。
世界100か所同時上映という事で50名もの魔導師が必要だった。
魔導第一師団からも10名ほど応援に繰り出したほどだ。
魔導師の大半は控室から各地に魔力を飛ばす予定だ。
講堂の周りは近衛騎士団をはじめとして魔導第一師団も警備に当たっていた。
ボフミエ皇帝には第一師団の元ジャンヌ中隊が当たっており、基本的には何もできないはずだった。
17時になり時間が来た。
「全世界の皆さん。こんにちは。マーマレード王立学園のパウル・ヒルシュです。
今日は魔導電話を使った世界初の一斉配信を行います。
是非とも御静聴頂きたい。
まず、マーマレードの国王より皆様にご挨拶があります」
ヒルシュ教授の声掛けにより、中継は始まった。
「皆さん。マーマレード国王のジョージ・マーマレードです。
魔導電話が発明されて10年。今や世界各地で使われております。
今回はその技術を使った全国一斉配信を行っております。
私の顔がハンサムに映っておりますか。
映っていたら少し機器の調子がおかしいのかなとも思いますが…」
笑いを誘う。
でも笑ったのは取り巻きのごく一部だ。
「つまらないですな」
ボソリとジャルカが言う。
「ここしばらく、大きな戦いも無く、平和な時が続いております。
今回の劇は戦神シャラザールが題材ですが、
我が国としてはこの劇に北の大国ノルディン、この国マーマレードそして同盟国のドラフォードの3か国の皇太子とボフミエの王子が手を取り合って共演するというのも初めての画期的な事です。
卒業してもこの学園で仲間として過ごした事をいつまでも覚えて友愛に励まれ、
この平和が永久に続くことをお祈りしてあいさつに代えさせていただきます」
拍手が会場から響く。
「マーマレードの国王よりの挨拶でした。
ではさっそく演劇に入りたいと存じます。
題名はシャラザールの光です。
ゆっくりお楽しみください」
ヒルシュは画面から消えた。
そして画面は森林地帯を走る馬車に替わった。
その横でペトロ・グリンゲン、ソフィア・サハロフ、フローラ・ダンステルブが立ち上がって演奏を始める。
そしてその馬車の前に巨大な魔獣が立ちふさがった。
「ギャオー」
巨大な咆哮をあげる。
馬車は馬もろとも風圧でひっくり返される。
そして、その馬車の残骸にドシンドシンと巨大な魔獣が迫る。
あと少しで馬車を踏みつぶそうとした時に転移して現れたシャラザールが魔獣を弾き飛ばしていた。
「姫様――――」
客席から黄色い声がかかる。
それに手をふろうとして倒れた魔獣から脚を蹴られて慌てて魔獣に手をかける。
そして隣から渡された、魔獣人形をぐるぐる回しだす。
「オーラオーラオーラ」
魔獣を振り回すジャンヌの掛け声に母のエリザベス王妃は頭を押さえた。
これが国民初お披露目の皇太子がこの登場の仕方。
-ジャルカ何やっているのよ!
エリザベスは心の中で盛大に突っ込んでいた。
「喰らえ――――」
そして客席の頭上に魔獣を放り投げた。
その魔獣は一番高いところで破裂すると星のかけらをキラキラ輝かせながら四散した…








