魔導電話で全国生中継を行う予定です
今まで送れてすいません。
何とか続き書き続けられるように皆さん応援よろしくお願いします。
「いかがですかな。ベッカー殿」
演劇の練習風景をビデオに撮った物をボフミエの商人マンフリード・ベッカーに見せながらオーウェンは言った。
「この演劇はすごいですな。最後の戦いだけで、見ごたえはすごくあります」
「貴国のヘルマン王子も大国の皇帝役で出られます」
「私は形だけだがな」
同席させられているヘルマンは謙遜して言った。
「音楽監督としてペトロ殿もヴァイオリンを弾かれます」
「ほう、公爵様のご令息が」
「私も初めて聞いたのですが、ものすごくお上手なのですよ」
オーウェンが褒める。
「そうなのですか。それは初耳ですな。」
「殿下。褒めすぎです」
謙遜してペトロは言った。
「最後の殺陣はフェビアン殿とシュテファン殿も出られていますし、出来たら大規模な公演にしたいなと思いまして」
「これを魔導電話の画面を巨大化した物で上演するとのことですな」
「そうなのです。ボフミエの王都や公爵領なので上演いただけないかなと思いまして」
「なるほど。娯楽の少ないわが国では喜ばれるのでは無いかなと思いますよ」
「そうでしょう。技術的な事はマーマレードのヒルシュ教授らから協力頂けることになっています」
「なるほど」
「そう、これが本格的に成功すればいろんなことを上映できるのですよ。
あなたが売りたい商品を紹介するなども将来的に可能なのかと思います。
今かんでおかれる事は将来的にも有用かと」
「なるほど。それはいい事をお伺いしました」
早速本国に帰って手配をするというマンフリードに一か所は同時中継をしたいとオーウェンは言っておいた。
「殿下。これって何のメリットがあるんですか?」
ボフミエの連中が帰った後にジェキンスが聞いてくる。
「おばあさまや公爵に恩が売れる」
オーウェンが言った。
同時中継やビデオ上映は撮影は1回で済む。
後は撮影とそれを上映する設備の手配のみだ。
マーマレード国営魔導電話協会と各国の合弁会社の全面バックアップで始まる魔導電話配信の第一号に採用されることが決まったのだ。
今回はドラフォード、ノルディン、マーマレードの皇太子の出演という事でその3国での同時配信も決まっていた。特にマーマレードにおいては最近の不祥事を払拭するためにも、新皇太子のお披露目も兼ねて多くの街頭電話配信が急遽決まっていた。
それに便乗するつもりでドラフォードでも30か所での同時配信にこぎつけたのだ。
祖母や公爵も活躍するクリスを見られれば喜ぶだろう。
「それに私とクリス嬢の仲の良いところも見せられる」
ついでに国民に未来のドラフォード妃のお披露目もオーウェンの頭の中では兼ねていた。
「でも殿下。最終的に殿下はクリス様をふられるんですよね」
「それをお前が言うな。それでなくてもガーネット達に散々言われているのだぞ」
オーウェンはとたんに機嫌が悪くなる。
「すいません」
「まあ冗談はさておいて、これをやることによって人をボフミエとノルディンに堂々と送り込める」
「人を送り込める?」
「そう、特にボフミエにはあまり人は送りこめてはいないだろう」
それをヘルマン王子とグリンゲン公爵家を乗せてボフミエでも同時上映させるのだ。
技術援助で人も送り込める。
「ボフミエが何か企んでいる可能性もある。
もし何かあれば即座に対応できる体制をつけておきたい」
ドラフォードはボフミエが何かを企んでいるのは気付いていた。
「人員はそれを見込んで厳選させろ。魔導技師に混じって魔導騎士も入り込ませろ」
オーウェンも不吉な予感がしていた。
最悪ボフミエ付近にいる軍にも対応させたい。
最近のボフミエでの天候不順と皇帝の不審な動きはオーウェンの元にも挙がって来ていた。
ボフミエが何かを企んでいる可能性がある。
何人かの諜報員が消息を絶っている報告も上がっていた。
今回の上演も断られる可能性もあるが、その時は不審の噂でも流してやろうとオーウェンは考えていた。
その日の練習は舞台はクライマックス。
「行くなクリス!」
エリオットはクリスに抱きついた。
「俺を置いて行かないでくれ」
きつくクリスを抱きしめる。
「エリオット様」
シャルは振り返ってエリオットの名前を呼ぶ。
一瞬目が合う二人。
そしてシャルは前を向いて思いっきり肘鉄をくらわす。
「うっ」
そのまま、崩れ落ちるエリオット。
「ごめんなさい。エリオット様」
崩れ落ちたエリオットを見て言う。
「今まであなたと一緒にいられて本当に楽しかった」
正面を向いてシャルは言う。
「この幸せがいつまでも続けば良いと思っていた」
そして下を見る。
「でも、このままでは何万と言う人が死ぬわ。
アーバンの大軍には私が行くしかないの」
「シャル!」
エリオットが手を伸ばそうとする。
「さようなら。エリオット。私たちの分まで幸せになってね」
と言うとシャルは両手を握った。
「シャル――――!」
エリオットが呼び止めようと叫ぶ声にかぶさるように
「ジャラザール!」
シャルは大声で叫ぶ。
と同時にクリスの手のひらから閃光が舞台一杯迸って世界が真っ白になった。
その後、あまりのまぶしさをもろに直視してしまって皆目が見えなくなってその日はそれ以上演劇の練習が続けられなかった…
クリスの魔力は最強です








