表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか、おなじ空をともに  作者: 青山 樹
第一章 『世界に示す絆の姿』
5/72

第二話 『転世の道』

 おいこらちょっと待て、なんだこの仕打ちは!


 とにかく浮上しようと必死にもがく。

 しかし何かに引きずり込まれるように体はどんどん沈んでいき、水面に見える光は遠ざかっていった。


 しばらくして、息苦しさをまったく感じていないことに気づく。

 口に水が入ってくる感じはしないし、目や耳も痛くない。

 水に浸かっているという感覚もなく、水温も感じなかった。

 これは一体、どういう状況なのだろうか。


 改めてまわりの様子を見ても、暗闇以外には何も見えない。星の光が全て消えた宇宙空間のようだ。

 手や足を動かしてみても、何の感触もない。


 ……ん? 待てよ。

 どうして自分の体は、はっきりと見えるんだ?


「いよいよわけわかんねえな、これ……」


 ためしに声を出してみると、普段と同じように聞こえた。

 しかしこれで現状の謎が解決されたわけではない。周囲には何も変化がなく、おれは沈み続けていた。


 もしかするとこの空間は、おれがいた世界とこれから行く世界の境界みたいなものなのかもしれない。


 だとしたら、今は移動中ということなのだろうか。こういう面倒な手順は省略してほしいもんだ。

 気がついたら別世界に転世していたとか、そういうサービスに変更するべきだろう。

 今度ラトナに会ったらそう提案してみるか。


 しかし……。また、会えるだろうか。あの自称神様に。


 それにしても、おれはどこまで沈んでいけばいいんだ。

 このまま地獄の底まで落ちていくんじゃないかと恐怖すら感じてしまう。

 沈むより浮上するほうが天国に召されているようなかんじがしてまだ気が楽だってのに。


 そうだ。もしかして……。


 逆立ちをするように体を動かし、頭と足の位置を逆転させる。

 すると思った通り、おれの体は浮上していった。

 どうやらここではおれが何かしらの基準になっているらしい。


 やがて、はるか上のほうに水面にゆらめく光のようなものが見えた。

 その光を目指して体を動かす。それにともない、光はどんどん近づいてきた。


 あと少しで光に手が届く。


 そこまで来たところで、光は爆発するように弾け、目の前が真っ白になった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ