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Eat xxx  作者: 凱
5/13

《Edward》


『私を食べて』


エリザベスの言葉に目を見開いた。


「あ!変な意味じゃないわ。そのままの意味よ」


変な意味でも良いけど、と彼女がはにかんだ。


「・・・そのままの意味の方がおかしいって分かってる?」

「勿論分かってるわ」


何故か得意げな彼女を見て、彼は頭を抱える。


あと少しのところで達成することは出来なかったが、確かに仕留めた後は食べるつもりでいた。

しかし相手から言われるとなんだか拍子抜けしてしまう。

溜息をつく彼の頬にしなやかな手が触れた。

その手の持ち主が今までにない真剣な顔で告げる。


「好きよ、エドワード」





《Elizabeth》


暫し間が空いてから彼が苦々しい顔で口を開く。


「悪いけど、それが被食に繋がる意味が分からない」

「私が変わってるだけよ。普通は食べられたいなんて思わないわ」


ますます眉間の皺が深くなる彼を見てクスクスと笑う。


「私は好きな人と一つになりたいだけ。死ぬまで一緒、なんて御免だわ。死んでも離れたくない。離さない」


彼女が前々から願っていたこと。愛する人に食べられること。

それを口にするのはこれが初めてだった。

言えなかったのではない。

そう思うほどの相手に出逢わなかったから。


「・・・愛だの恋だの、僕は知らないし分からない。けど君を愛していないことは分かってるし、寧ろ殺したいと思っている」


それでもいいのだ。

彼自身が'知らない'と、'分からない'と思っているなら、それでいい。


「食べてくれるならどうだっていいわ。永遠に愛してる、なんて言ってくれたところでそれを証明する術はないんだし、本当の気持ちは本人にしか分からないもの。私は私が愛した人に食べてもらえるならそれで十分。で、エディは食べてくれるの?」


幼子がおねだりするような顔でエドワードを見つめた。





《Edward》


運命だ何だと言っていたが、冗談だと思っていた。

まさか愛を伝えられるなんて思っていなかった。

その言葉に、心臓のあたりがじんわりと熱をもったことが、何故なのか分からず不快に感じていた。


「・・・・・・断る」


少し考えてから答えると彼女は残念そうに眉を寄せる。


「どうして?美味しそうじゃない?」


そういう問題ではないし、寧ろ美味そうだと思っていた。


「僕は君を殺したい。けどまだ、殺せない」


だからそれまで待ってくれ、と言い終わると同時、彼女はあの夜のように彼の首に腕を絡めた。





《Elizabeth》


「ありがとう、エディ!」


血色の悪い彼の頬に自分の頬を擦り寄せる。

まるで婚約でもしたかのように彼女の心は歓びに満ちていた。


「分かったから離れてくれないか・・・」


迷惑そうな声が聞こえて、笑いながら腕を離した。


「一緒に暮らす準備をしなくちゃ。今日は帰って荷物をまとめるわ。明日の昼頃には来れると思うから。あっ、買い物もしなくちゃ!それと、」


そう捲したてるとエドワードは狼狽えた。

表情の乏しい彼のこんな姿を見れるのは自分だけじゃないか、と思う。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!意味が分からない。どうしたら一緒に暮らすことになるんだ」


あたふたとする愛しい彼につい顔が綻んだ。





《Edward》


「いい案だと思わない?一緒にいれば私を殺せるタイミングを逃さずに済むわ。貴方は殺したい時に殺して、私は早く食べてもらえる。でしょ?」


確かに彼女の意見も有りだと思うが、自分がもっとおかしくなるんじゃないかという不安もあった。

それに楽しみのことも。

変わり者の彼女に食人嗜好の事が知れれば、受け入れるどころか歓喜の舞でも踊り出しそうだ。

早く食べられたいが為に自殺でもしてしまうんじゃないか。

それは避けたい。彼女は自分の手で。


「・・・条件がある。僕が殺すまでは絶対死なない事」


言い終えるかどうかというところで再び彼女に抱き締められ、どうしてこうなってしまったのかと深い深い溜息をついた。




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