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Eat xxx  作者: 凱
1/13

《Edward》


「・・・ハァ、」


身に染みるような冷たい季節、夜と朝の間に彼はいた。

仕留めた獲物を抱えて乗り慣れた愛車へと歩を進める。

冬は好きだ、少しでも鮮度が保てるから

そんな事を考えながら車のトランクへ獲物を横たわらせる。

それの首にはまるでチョーカーのように痣ができていた。

刺したり切ったりすれば服や車が汚れてしまう。

絞殺は彼なりのこだわりだった。


「早く帰って解体しないと・・・」


寒さに少し身震いしてから運転席へ乗り込むと

ラジオもつけずに車を走らせた。





《Elizabeth》


あぁ面倒なのに捕まった、と彼女は眉間に皺を寄せる。


「なぁ一緒に飲もうぜ。いい店知ってるからさ」


酒臭い息を吐きながら並んで歩く男は、彼女が働くパブの客である。


「何度も断ってるでしょ。いい加減どっか行ってよ」


少し幼い顔立ちの彼女が睨んだところで、男はヘラヘラと笑うだけだった。


「恋人が迎えに来るの。勘違いされたくないから離れて」

「一人は危ないだろ、だから俺も一緒に待っててやるよ」


本当に来るならな、と下卑た笑みを浮かべる。

何度目かの溜息をついた彼女は、少し離れた明かりに気付き走り出した。





《Edward》


もうそろそろ家に着くという所で車に向かってくる人影を見つけ、速度を落とし車を停めた。

知り合いかと目を凝らしたが覚えのない顔だ。

知らない女は運転席の窓をノックしてきた。

一体何なんだ、と思いながら窓を開ける。


「どうし「待ってたわダーリン!」


女は彼の言葉を遮ると笑顔で彼の首に腕を絡めた。


「?」


突然のことに意味が分からないという表情の彼に、「話を合わせて」と小声で女が訴える。

女の後方に目をやれば若い男がじとと此方を見ていた。


(そういう事か・・・面倒くさいな)


思いながらも彼は出来る限り自然な笑みを浮かべる。


「待たせたね、さぁ早く帰ろう」


そう言って、女が助手席に乗りこんだのを確認し再び車を走らせた。





《Elizabeth》


「ありがとう!助かったわ」


笑顔で感謝を述べる彼女は

恩人が変わった嗜好をもっていることなど知らない。


「ねぇ、恩人さん。お名前は?」

「・・・エドワード」

「イニシャルが同じね。私はエリザベス・ナイトリー。皆はリズって呼ぶわ」


男はさも興味のなさそうな顔でちらと彼女を見た。


「それで、どこまで送ればいいのかな?」

「もうすぐそこよ。噴水広場までお願い」

「・・・・・・」


返事もなく無表情で運転を続ける男をじっと見つめた。


「僕の顔に何か?」


怪訝そうに見つめ返す男。


「本当の貴方って無愛想なのね」


貶すつもりはない。彼女は思った事を口にしただけなのだから。


「・・・それが何か問題でも?」

「こっちの方がいいわ、さっきの笑顔は何だか胡散臭かったから」


屈託なく笑う彼女を見て男は更に眉をひそめた。





《Edward》


「送ってくれてありがとう!今度お礼を・・・」

「何もしなくていいよ」


だからさっさと降りてくれ、と思いながら無愛想に答える。


「でも私の気が済まないわ」

「僕がいいって言ってるんだ、気にしなくていい」


少し不満そうだった女は名案だという風に目を輝かせた。


「じゃあもしまた会えたら運命ってことで食事でもどう?」

「は?運命?」

「そう!運命!また貴方に会いたいし会える気がするの」


はぁ?と訳が分からないという彼の態度にも屈せず女は微笑む。


「だって貴方みたいな人、初めてだもの」


ニコニコしている女を改めて見る。

陽の光が波打ったような髪、澄んだ空のような瞳

容姿が優れた自分に冷たい男などいなかった、ということだろうか。

呆れたように溜息をつき了承すれば、女がようやく車を降りた。


「またね、エディ!」


そう言って笑顔で手を振る女を一瞥しアクセルを踏んだ。


「変わった女・・・」


バックミラー越しにまだ手を振ってる姿を見て再び溜息をついた。


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