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勇者になりたいショタ召喚師は、開幕五分で奴隷になりました。

勇者になりたいショタ召喚師は、開幕五分で奴隷になりました。<短編>

お試しで書いた短編小説です。気に入って頂けたのなら感想欄にコメントをお願いします!

 僕の名前は、ナオ・ヘビーローテーション。田舎村生まれの《かけだし召喚師》さ。

 師匠から免許皆伝の太鼓判を押された僕は、憧れだった《勇者》になるため、故郷を離れて都会の街へやって来たんだ。

 この街で、凄腕の仲間を集めて僕は、誰もが認める一人前の勇者になってやる!

 ……おっと。そんな事を言っているうちに綺麗なお姉さん達を発見したぞ。流石は、都会の美人だ! 田舎とはレベルが違うぜ!


「ねえねえそこのお姉さん! 僕と一緒にレモンスカッシュしない?」

「ええ〜っ? 何この子、超可愛い〜っ!」

「ボウヤ、何処から来たのぉ? お父さんとお母さんはぁ?」


 僕のナイスな口説き文句に、お姉さん達は早速僕に興味津々のようだ。

 因みに、僕の両親は、僕が三歳の頃に他界している。まあ、そんな話をしても重いだけだからここは適当に誤魔化そう。


「僕、勇者になるために都会に来たんだ。お姉さん達! 僕にこの街のことを教えて!」

「ふふっ、いいよ。お姉さん達に任せて♪」

「ボウヤの知らない事。私達が教えて、あ・げ・る♪」


 ヤッホォーイ!! 期待通りの展開だぁー!! このために勇者目指してんだよ僕は!!

 お姉さん達に手招きされるがまま、僕は路地の奥へと進んでいった。

 僕に勇者生活は始まったばかり! ここからどんな物語が始まるのか。ワクワクが止まらないぜ!!




 *****




 はい。

 そんな訳でですね、ここが地下牢となっております。

 地下はロウソクの灯りだけで非常に薄暗く、他の牢に閉じ込められているむさ苦しい野郎どもの唸り声が響き渡っていますです。はい。


「チックショーーー!! せめて売られる前にあの二人のおっぱい揉んでおくんだったーーーー!!」


 なんて事だ……。招かれるままにホイホイ釣られていった僕も悪いけど、まさか一度のスキンシップも無しに奴隷商に売り渡されるとは。

 あのお姉さん達、どうやら裏世界の住人だったようだ。通りで変なタトゥーが彫ってあるわけだ。介入してる組織のマークなのかな?


「そして何故僕は全裸にされてるんだ? まさか、ここってそういう奴隷専門なの?」


 持ち物は全て奪われ、衣服すら纏わないすっぽんぽんな状態。

 しかし、ここで一番の問題となるのは、僕の売られる先が『どっち』なのかという事だ。

 もし『アッー!』の方なら速攻で首を切る自信があるよ僕は。

 ……まあ、いつまでもこんな所に居てもしょうがないか。とっとと出よう。


「んっ。待てよ、この声は……?」


 怒号が鳴り響くこの地下牢の中で、微かに聞こえる声が一つ。

 これは、そう。

 少女のすすり泣きだ。


「オラァッッッ!!!!」


 考えるより先に、僕は隣の壁を拳で破壊した。

 その向こうには、同じく牢屋に閉じ込められていた、見た目から察するに12歳くらいの少女。

 僕と違って、全裸ではなく麻の衣服を着ているけど、僕は自身の審美眼を駆使して彼女のステータスを測る。

 んんんっ! ステータス・オープン!

 バスト80! ウエスト56! ヒップ84! 身長は150センチ! 体重40キロ!

 黒髪スレンダー! 素朴だが笑えば非常に愛嬌のありそうな顔立ち! やや体が細めなのは栄養失調か!?

 えっ? 戦闘能力? 知らんッッ!!


「……ふぅ〜、合格だ。お嬢さん、僕と一緒に世界をひっくり返さないかい?」

「え、え? 貴方、誰? なんで裸……。ていうか、壁が」


 色んなことが立て続けに起こったせいで、名も知らぬ少女は呆気に取られているようだ。

 一方、壁が破壊された音を聞いてか、おそらく警備の人間であろう者が走ってくる音が聞こえてきた。

 ふむ、まずはこの場を切り抜けなくちゃならないかな。


「《SAMONN‼︎》 パワードゴブリン‼︎ ここに誰も近づけさせるな!!」


 召喚の呪文を詠唱し、魔法陣から巨大な図体の男が出現する。

 パワードゴブリン。体長2メートルを超える魔物だ。筋肉隆々の肉体を活かした腕力、そしてどれだけ攻撃されても倒れない耐久力が自慢のパワータイプさ! 時間稼ぎにはピッタリ!


「う、うわぁ! 何だコイツ!?」

「一体、何処からこんな魔物が……! ぐわぁぁぁぁ!!」


 牢屋の外から看守の叫び声が聞こえてくる。どうやら上手く足止めしてくれているようだ。

 さて、では僕は今出来うる限りのことをしようじゃないか。

 狭い牢屋の中。男女二人。何も起こらないはずがなく……。

 まあ、何はともあれ自己紹介からだな。


「初めましてお嬢さん! 僕はナオ・ヘビーローテーション。故郷を離れて旅をする勇者見習いさ! 君の名前を教えてくれないかい?(バリトンボイス)」


 うん。駄目だ。頑張って大人っぽい声を出そうと思ったけど失敗した。やっぱり無理するのは良くないね。

 そして少女は、恐る恐るといった態度で自己紹介をしてくれた。


「私は、ルカです」

「ルカさんか! 素敵な名前ですね、何なら交換して欲しいくらいです! まあそれは冗談なんですが、どうでしょう。この後僕と一緒にレモンスカッシュでも?」

「え、え?」

「ああ、こんなむさ苦しい場所で立ち話というのもなんですね! 一度明るい外へ出て、今後のことでも話し合いましょう! おっと! お支度がまだならどうぞ焦らずに! 僕は何時間でも貴方のためにお待ちしますよ! なぁに問題ありません! だって一日は長いんですから!!」


 捲し立てるように喋り出す僕を相手に、少女は困惑した表情を浮かべていた。どうしたら良いのかわからないといった様子だ。

 ここで僕は、自分の失敗に気付いた。どうやら少し興奮し過ぎたらしい。都会の空気には慣れてないから、少々浮き足立ってしまったみたいだ。

 場の空気を変えるため、僕は牢の外を確認する。そこには、気を失って倒れている複数人の看守とパワードゴブリンがいた。看守の装備は、ボロボロになっていたが、パワードゴブリンには傷一つない。圧勝だったようだ。

 僕は満足した笑みを浮かべる。

 その瞬間、突然パワードゴブリンの胴体が二つに切り裂かれた。


「……え?」


 僕は、呆けた声を上げる。先程まで無敵のタフネスを主張していたパワードゴブリンの上半身はドサっと崩れ落ち、下半身だけになったゴブリンは間違いなく絶命している。

 誰がこんな事を? そう思った瞬間、僕は背筋に悪寒を感じる。


「おっと」


 とっさに身を低くして剣撃を避ける。

 剣を振るってきた人物は、さっき僕が街で口説いた綺麗なお姉さんの一人だった。服装は変わっているが、お姉さんの肩には例のタトゥーが彫られており、それが非常にエロティックであった。


「騒ぎがあるから確認してみれば、ビックリ。さっきのボウヤじゃない♪」

「まさか、またこうして出会えるなんて……。これって、もしかして『運・命』!?」


 これぞ千載一遇のチャンス! あの時受けた恨み(十分前くらい)、今ここで晴らしてみせる!


「細かい事はさておき、そのおっぱいを揉ませろ!!(よくも騙してくれたな! ここでお前を成敗してやる!)」

「出会った時から只者じゃないと思っていたけど、面白い。ここで相手してあげるわ♪」

「どうせ相手してくれるならエロ方面でお願いします! 《SAMONN‼︎ 》ローパー‼︎ ポイズンスライム‼︎」


 相手は美女。即ち、僕がこれから召喚する魔物は、それに適したものでなければならない。そう、エロ方面に特化した魔物を!

 それがこの二体。ローパーとスライムだ!

 ローパーは、ニュルニュルの触手を生やしたどう見てもエロい魔物。

 スライムは、グニュグニャの体で衣服だけを溶かす酸を吐き出すこれまたエロい魔物だ。

 この二体なら、必ず全男子が待ち焦がれた期待の『アハァーン♪』な展開に持ち込めるはず! 頼むぜ、僕の召喚獣!!


「……あらぁ? 貴方の魔物、こんなものなのかしら?」

「って、アッーーーー!! 一瞬で斬り殺されてるぅぅぅぅ!!!!」


 僕は、あんまりな出来事に涙を流しそうになる。全男子が待ち焦がれたエロ展開。その状況に持ち込めなかった自分の力量不足に情けなさすら感じてしまったのだ。

 えっ、死んだ魔物達? まあ、供養くらいはしてあげるさ。


「ははーんっ! さては、お姉さん。美人さんだけど実は結構強んだなぁ〜?」

「《鎌鼬のレナ》。それが私の通り名よ、ボウヤ。それにしても、その歳で召喚師だなんて……貴方こそ見た目に違う優秀な魔法使いなのねぇ。殺すには惜しいけど、あいにく反逆者は始末しろというのが依頼人の命令なのよ……ねっ!!」


 そう言い終わるや否や、お姉さん。鎌鼬のレナの攻撃が始まる。手慣れた身のこなしで僕との距離を縮め、手にしたナイフで僕の胴体を斬り裂こうとしてくる。

 その攻撃を、僕はマジックシールドで防ぐ。マジックシールドは、魔法使いが使える初級魔法のことである。魔法使いの練度によって、このシールドの強度は変わるのだが、僕のシールドはレナさんのナイフを受けた途端、ビキっとヒビが入ったのだ。


「えええええっ、一撃で傷物になった!? 僕のシールド弱過ぎ!!」

「……へぇ。魔力を纏った私のナイフを耐え抜くなんて。凄いのね、ボウヤ♪」


 お姉さんが褒めてくれた。嬉しい。

 いやいやいや! 思ったより不味いぞこの状況! このままじゃガチで殺されてしまう!!


「んんん〜っ!! 《SAMONN‼︎》 ローパー‼︎ ローパー‼︎ 続けてローパー‼︎」


 僕は、戦法を変更し、力任せの脳筋プレイに移行した。

 簡単な話だ。魔力消費コストの少ないローパーを大量に召喚し、時間を稼ぐ。そして何とか脱出手段を考えて少女と共に地下牢を出るコレだッッ!!


「あら、時間稼ぎぃ? それにしても、魔導具を使わずにこれ程の魔法を発動出来るなんて……。ボウヤ、もしかして勇者の生まれ変わりか何かかしらぁ?」

「あいにく、僕の両親は冴えない牧場主でした!よく憶えていませんけどね!」

「ふふふぅ♪ ……面白い、面白いわぁ! こんなに面白いのは、久しぶりよぉ〜!!」


 レナさんが笑い出し、突如彼女の体から強い魔力が放たれたた。

 肌を撫でる涼しいマナ。……風の魔力か。

 そしてレナさんは、自身に風の魔力を纏ったかと思うと、物欲しそうに舌舐めずりをしたのだ。

 その仕草はどこか妖艶な雰囲気ではあったが、それとは別に危険な……『狂気』のようなものを帯びているのを僕は確かに感じた。


「何を……?」

「可愛いボウヤに大サービス。ちょっとだけ、本気出してあげる♪」


 次の瞬間、斬り裂くような鋭い風が吹いた。

 それは、遠回しな比喩表現なのではなく、本当に風が斬り裂いているかのように、風と共に魔物がやられていく光景が映し出されたのだ。地下牢に召喚した大量のローパーは、その謎の攻撃を為すすべもなく喰らい、胴体はバラバラ。触手は食べやすい大きさに分断された。

 何が起きているのか。僕は、この状況を目を凝らして観察する。召喚師である僕は、戦士のように体を鍛えておらず、また動体視力も高いという方ではない。そんな僕でもようやく捉えられたのは、通常ではありえない速度で狭い地下牢を壁へ天井へと跳び回るレナさんの姿だった。

 僕は気づいた。この攻撃の正体は、強烈な風によるものなのではなく、レナさんが超高速の動きでなされた『斬り付け』であるという事を。

 しかし、幾ら何でもこれだけの速度で動く人間を僕は今まで見たことがなかった。普通こんな速度で動き回れば、魔法で身体強化を行ったとしても思考が肉体に付いて行けず、不時着なんて事故が起きるのがオチだろう。なのにレナさんは、この風の如き速度でも縦横無尽に移動していた。

 並みの実力者じゃない。田舎者の僕でも、その程度の判断はついた。

 そして、時間にして十秒も立っていないのではないか? あれだけ召喚した僕のローパーが、あっという間に全て斬り伏せられてしまっていた。


「……一人に、なったわね。其れとも、まだ奥に手を隠し持ってるのかしらぁ? ボウヤ♪」

「ちょ、まっ! ……ちゃ、ちゃいますや〜ん御主人様ぁ〜♪ 僕はその、しがない田舎者でして〜。何なら靴を舐めますから、命だけは助けてもらえませんかぁ〜?」


 僕は、出来るだけ仕立てに出て媚びてみた。

 しかし、レナさんは妖艶な笑みを浮かべたままナイフを構えてこっちを見ていた。完全に殺る気満々である。

 次に起こるのは、風の如き斬撃。それがわかった僕は、今出来る最善の策を講じる事にした。


「さあ、そろそろ終わりにしましょう。とても面白かったわよぉ、ボウヤ♪」


 そして巻き起こる旋風。目にも留まらぬ速さで、レナさんは真っ直ぐに僕に突っ込んできた。魔力を帯びたナイフがギラつき、胴体真っ二つの斬り付けが斜めに振り下ろされる。

 パンッッ!!


「……………………は?」


 斬り付け後、レナさんは一瞬膠着した。

 それは、僕を分断して勝利に余韻に浸っているからではない。あまりに想定外の出来事が起きて混乱しているからだ。

 僕が使った絶技。それは、誰もが一度は憧れるスーパー奥義だった。


「その名も、真剣白刃取りぃぃぃぃ!! この奥義を会得するのに軽く五年は掛かりました!!」


 僕の掌には、レンさんが振り下ろしたナイフがある。魔力を帯びた刃物というのは強力で、人間の体など簡単に両断出来る。両手を魔力で守っていなかったら、白刃取りしても指が無くなっていた事だろう。


「そんな危ないものはこうだ! 必殺、刃崩し!!」

「なっ……!?」


 テコの原理を応用すれば、頑丈なナイフだって折れる。

 レナさんのナイフも然り。彼女は、自慢の武器を失った驚きで目を見開いた。そうする事で、また一瞬隙が生まれた。


「これでトドメだ! 《SAMONN‼︎》エンペラースライム‼︎》


 呪文カットの無詠唱魔法による召喚術!! 魔法陣から現れたのは先程とは比べ物にならない上位の魔物。

 スライムという種族の中で屈指の性能を持つエンペラースライムだ! 何より、このスライムに特徴は体が大きい事! 具体的に言うと、こんな狭い地下牢に召喚したらあっという間に通路を埋めてしまうサイズなのだ!!


「う、嘘!? こんな魔物を無詠唱で召喚するなんて聞いた事が……!!」


 レナさんは、余裕な態度から一転。エンペラースライムに拘束され身動き出来ない状態となった。そうでなくても、エンペラースライムは大き過ぎる。どれだけ素早く動けようとも、地下牢全体が埋まっていては脱出も不可能だろう。

 因みに、僕はマジックシールドでスライムの拘束から逃れていた。


「さぁて、ここでレナさんのストリップでも拝みたいところではあるんだけど……。あんまり余裕も無いし、悔しながら退散させてもらいます。という訳で、行こうお嬢さん!」

「は? えっと、何が何だか……」


 少女ルカの手を取り、僕は呪文を詠唱する。それにしても彼女、さっきから全く喋れてないな。


「《Hey‼︎ SAMONN‼︎》ヘブンズ・ワイバーン‼︎」


 そして僕が召喚したのは、正真正銘の虎の子。

 嘘か真か。それは、天空に在るとされる島から訪れた神秘の生物。

 白銀の鱗を纏い、太陽を覆うといわれる巨大な翼を持つ最強種の龍。

 太陽龍ヘブンズ・ワイバーン。こんな序盤で使うとは思いもしなかったぜ。


「じゃ、僕はギャラ持って帰るので。縁があったらまた会いましょう、レナさん!」


 僕は、少女の背中を押して龍の上に乗り込み、合図を送った。龍は、翼を羽ばたかせ、地下牢を粉砕しまくりながら上へ上へと飛び上がる。最強種の龍に不可能は無い。何重にも連なる天井など御構い無しだ。

 そして僕たちは、とうとう地上への脱出を果たしたのだ!


「やったぁーーー!! シャバだぁぁぁぁぁ!!!!」


 広い空の中で、僕は声高く叫ぶ。遂に目的を達したのだ!

 この街に来てから、色んなことがあったけどようやく念願叶いました! これで物語は完結です!! 終焉!!

 ……あれ? 僕、この街で何しに来たんだっけ?


「あの、魔法使いさん。貴方は、一体何者なんですか?」


 と、僕の後ろから少女のか細い声が聞こえた。

 少女の問い掛けで、僕も自分が何をしに来たのかを思い出した。

 僕は、少女の方に振り返り、そしてこう返した。


「僕は、ナオ・ヘビーローテーション。勇者になるために旅をしている、かけだしの召喚師さ!」

ご完読ありがとうございます!!

もし、続きを書いて欲しい!という方がおられたのならコメントをお願いします! 書きますから!!

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― 新着の感想 ―
[一言]  良い意味で長いですね!    活動報告から来ました。  続きを書いてほしいと願って、5.5です!  あ、もちろん面白かったからですよ!  まだ途中までしか読めていませんが。
2018/10/25 17:21 退会済み
管理
[良い点] 終始全裸ですね [気になる点] 終始全裸に違いない [一言] やはり終始全裸(笑)
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