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コピーダウン 俺の能力は本当に使い物になるのか!?  作者: 砂糖漬けビターチョコレート
俺の能力は本当に使い物になるのか!?
6/24

ゲームは、けして甘くない

皆さまにカオスで楽しい毎日をお届けする(大嘘)砂糖漬ビターチョコレートです。作品は楽しんでいただけてますでしょうか?苦痛でしたらそのまま読んでくださると嬉しいです。

次の日俺らは4人で街に出かけることになった。馴れ合いの目的も合ったし、俺が暇だったっていう理由も。俺のモットーは待ち合わせの時間より30分程度早く着くことだ。春の陽気が感じられる風に髪をなびかせ、待ち合わせの場所へと急ぐ。しかし既に時計台の下付近のベンチには正義が座っていた。

 

「あれ正義…!早ぇなー。一番乗りだと思ったのに…。」

 

「あぁ…1時間前行動が僕の基本なんですよ。それに今日は楽しみで…」

 

一時間前行動とは…早いに越したことはないがコイツの硬派な感じ…。自覚しているんだろうか…。

 

「アイツら遅ぇな…。寝坊か?」

 

「でも後5分ありますし。僕らが早かったんですよきっと。」

 

「これは相手に俺も今来た所だと無理矢理でも言わせる戦法だぞ…。アイツらヤラシイな…。」

 

正義と話ふけっている最中、クロエの高い声が遠くの方から聞こえてきた。


「やっと来やがったぞあの小ト○ロ。」

 

「…確かに髪の毛の色は似てますね…。」

 

「すいませんっ…!遅れましたぁー…!」

 

あの魔法の言葉を言う瞬間が来たぞ。俺の優しさに感謝するんだな…クロエ…。

 

「佐奇さんと買いものしてたら、遅れてしまいました…はぁ…走ってきたから疲れました…。」

 

「大遅刻だ。一体俺達がどれだけ待ったと思ってる。お前の行動自体が怠惰の極みだぞ。」

 

「(えぇ!?違うでしょ濃霧さん!?)」

 

正義、そんな顔するな。口が勝手に動いたんだ。残念ながら俺の優しさはもう死んでいる。

 

「そんな言い方無くないですか!?まぁ…濃霧さんには乙女心って物が分からないんですよねぇ?ねぇ佐寄さん?」

 

クロエが佐寄の顔を覗き込み、悪戯な笑を浮かべる。

 

「(こいつは後で捨てて帰ろう。)」

 

「最初は、何処にいきますか?私は皆さんの行きたい所ならに何処でも」

佐奇は何処に行きたいとか決めてないのかな…。

 

「佐奇は行きたい所無いのか?お前なら洒落た店とか沢山知ってそうだし…」

 

「先程クロエさんに色々な所を連れていってもらったので…」

 

佐奇は切れ長の目でひとつ瞬きをし自分より背の高い皆を見上げた。

 

「あぁそうだ。歳上なんだから、敬語なんか使わなくていいよ。逆に俺達が使わなければいけない立場なんだけどな…。まぁパーティーメンバーだし…馴れ合いって意味で。」

 

濃霧はニカッと笑うと正義の肩に腕を回す。

 

「なら…了解した。馴染みを大切にするんだな…」

 

「まぁな、仲良い方が気が楽というか…まぁそんな感じ。そんで…何処がいいかね…」

 

「あの…いいかな?僕は体を動かしたいと思って。決闘以外でスポーツはやらないし…」

 

決闘ってスポーツなのか!?スポーツねぇ…俺はいいけど…小ト○ロとカリスマレディがどういう反応をするか…。

 

「いいですね!日頃の恨みをぶつけたい気分だったんですよ!!」 

 

日頃の恨みって…絶対俺だろ!?だって俺のことチラチラ見ながら息を荒くしてるもの!絶対俺のこと殺しにかかってるやつだ!

 

「私も決闘以外でスポーツはやったことが無いな…。いい機会だ。」

 

確かに決闘の時は狂暴だが普段はクールだもんな…スポーツとか縁がなさそうだ。

スマホで場所を検索すると近くのスポーツセンターが検索結果に出た。

 

「ラウンドワ○ですね。」

 

「○をつける場所を考えようかクロエ。」

 

「○○ン○○ンですね。」

 

「よく読めますね…。」

 

徒歩2分ほどで着き、その建物に入る。 

「人が多いなぁ…。あ、ここであのセリフだな。見ろ!人がゴミのようだ!!」

 

「黙ってください濃霧さん。」

 

「クロエは容赦ないですね…。」

 

「バ○スと言ったら皆吹っ飛んでいくんじゃないか?」

 

「ほら、見習えよクロエ。ちゃんと佐奇さんは○を付けてるぞ。」

 

「学生4名です。」

 

アイツ…。ほんっと覚えてろよ…。

クロエは濃霧の話をガン無視し受付へ料金を支払いに行っていた。もちろん、俺の財布を持って。いつの間に俺のポケットから取り出したんだ…手癖悪過ぎだろ…。

そういや…決闘以外でのスポーツは俺も久しぶりだな…。 しかし濃霧はスポーツというものにトラウマを抱えていた。それは中学の頃の話。丁度、新作ゲームの発売で気持ち的に盛り上がっていた時だった。

 

「(帰りてぇーー…頭の中であったかハ○ムがリフレインしてるよ畜生…。」

 

俺は当時呪われていたんじゃないかと思われるぐらいゲーム病というものに掛かっていた。そして、六時間目の体育の時、事件が起きた。当時の授業は柔道で俺も人並みには出来るくらいだった。

 

「じゃあ、二人一組で投げ技の練習をしましょうか。」

 

そう言われた瞬間、俺の肩に太い腕が回される。能筋アホ代表、山崎譲治だ。名前を言うのは初めてだな…。山崎は俺を何故か気に入っていて何かと絡んでくる。山崎とは誰もやりたがらない。奴は手加減の仕方も知らない、手加減の意味も分からない、そもそも柔道を分かっていない、そんな最低最悪の化身とやるハメになった…。

 

「やろうぜ濃霧。」

 

「手加減しろよ…」

 

開始の笛がなる。

 

「おらぁ!!いくぞ!!」

 

開始と同時に俺はバッグドロップをくらった。

 

「うげぇっ!?」

 

俺の体は柔道室の端まで飛ばされ、周りの生徒が慌てて近付いてくる。後から何事も無かったかのように山崎が笑いながら寄ってきた。

 

「本気出し過ぎたなぁー…っはは…大丈夫か?」

 

「バックドロップは…柔道じゃ…ない…っ」

 

全治3ヵ月の怪我を負い入院、ゲームの初回限定版も逃し、その後品薄でそのゲーム自体も手に入れることが出来なかった。最後の切り札で母に頼んだが…何を思ったのか動物達と楽しいライフを送るぼのぼのゲームを買ってきた。まさにマンマ・ミーアというやつだ…。

 

「どうかしましたか濃霧さん。顔色が悪いですよ?」

 

「いや…嫌な思い出が蘇ってきて…」

「…?」

 

本当にアイツは…今思えば懐かしく感じるがな…。

 

「あっ!!パンチングマシンがありますよ!皆でやりませんか?」

 

出た。最終的に私ぃ…力ないんですよぉとか言ってかわい子ちゃんアピールする奴。お前の作戦は全て悟ってるぞクロエ。

 

「えぇと、男性平均は120…女性平均が100か。じゃ、手始めに正義にやってもらおうか。」

 

正義が慣れた立ち振る舞いでスッとパンチングマシンの前に立つ。

 

「…せいッ!」

ピピピと上のモニターが数字を叩き出す。

機械音声(156デス!ボレボレスルヨウナカラダノ モチヌシ!!)

 

「おおやるな正義!!」

 

「まぁ鍛えてますからね…これくらいは普通ですよきっと。」

 

さすが正義。この言動自体が正義だもんな。俺なら微塵たりとも口からそんなセリフ出てこないぜ。

 

「じゃあ次は私が。」

 

「お、次は佐奇が行くか。」

 

マシンを女性コマンドに切り替える。スラッと佐奇が立ち、優雅な中にも力ある拳を叩きつける。

機械音声(128デス!シビレル コブシ二 ダレモガ ミリョウサレマス!)

 

「おお佐奇!男性平均こえたぞ!!」

 

「嬉しいような悲しいような…複雑だな…」

 

佐奇が苦笑いを浮かべ後に下がる。

 

「んじゃあ次私ですね!」

 

クロエがひょいと軽やかにパンチングマシンの前に立つ。

 

「私だって筋トレくらいはしてますからね!!たぁ!!」

 

the女の子というに相応しい拳がペちっと叩きつけられる。

機械音声「98デス!オシイ!モウスコシデス!ツギハガンバッテ!」

 

「えぇ!?あとちょっとなのにー!」

 

「あららーん惜しかったわねぇ?クロエちゃん。」

 

「むーー!」

 

クロエは頬を膨らませて俺を睨む。ひまわりの種をパンパンに頬張ったハムスターみたいだ。まぁ見てろ。これから俺が力の差を見せつけてやる。

濃霧が余裕をこきながらパンチングマシンの前に立つ。

 

「お前ら見てろ!!おらぁ!!」

 

95!

あれ…?おかしいぞ…もう1回やってみよう…!

 

「どりぁ!!」

 

83!

 

「えぇい!!」

 

78!

 

「うへぇっ!!」

機械音声「69デス!イチドビョウインニイッテミテハ…?」

俺は鼻で笑い、くるっと三人の方を振り返り言い放つ。

 

「誰だこんなつまらんゲームやろうって言った奴!!」

 

「「「餓鬼か!!」」」

 

ちきしょう…クロエにも勝てないなんて…俺の元々の力もダウンしているのか…?あぁ泣きそう…。

 

「さっきあんなに自信満々に見てろと言い放っておいてこの結果!自慢するどころかこのパーティーの中でワースト1位ですよ!?私のことバカにするからですよー。」

 

ぐうの音も出ない…。クロエめ…馬鹿にしやがってぇえ…!

 

「もしかして疲れているのでは…?」

 

正義ぃ…お前だけは永遠に俺の味方だぜ…。

こうなったら最終手段だ…。

 

「能力魔法…パワーアップ…」

 

俺は小声で能力の名前を口にする。

 

「おらぁ!!」

 

機械音声「125デス!チカラヅヨイコブシデスネ!!」

 

「ほら見ろクロエ。この機械の調子が悪いんだよ。」

 

「えぇ?本当ですかぁ?なーんか…嘘の匂いがしますね…。」

 

「それに…濃霧さん。魔法を使うならもう少し声を抑えないと駄目ですね。」

 

正義が苦笑しながらマシンの電源を切った。俺は昔から小声で話すのが苦手なんだよ…。バレてた上に正義にさえも呆れられた…。

 

「うわぁカッコわりぃ…」


パンチングマシンの後、話し合った結果ビリヤードをやることになった。

 

「どうやってやる?俺ルールとかよく分からんぞ…。」

 

「では、チームでやるのはどうでしょう。ルールは玉を多く落とした方が勝ちってことで。」

 

さすが正義だ。こういう決め事の所では本当に頼りになる。

 

「私もルールよく知りませんし…そっちの方が楽でいいですね!」

 

「グッとパーであった人でいいか?」 

 

「それでいこうぜ。」

 

お願いします。どうか正義様と一緒になりますように!

 

「グッとパーであった人!!」

 

俺はパーを出す。綺麗に1発で決まったがもう1人のパーはクロエだった。これは波乱の予感だ…。

 

「若干不安ですね…」

 

予想通りのマイナスコメント…。俺のことが嫌いならはっきり言えこの小ト○ロが。ビリヤード台の前に立ち、突き棒を構える。

 

「先行どうぞ。」

 

「お、ありがとな正義。」

 

「1つくらいは落としてくださいよ。」

 

「分かってるって…!任せろ!ここら辺か?おらぁ!!」

 

自身の白いボールは三角形に固まったカラフルなボール達に当たること無く、気持ちが良いぐらいに穴へ吸い込まれていった。

 

「…ごめんなさいクロエ様。」

 

「最初から期待なんてしてないので。それにあんなに沢山のボールがあるのに自分のボールしか入らないなんて逆に素晴らしいですよ!!」

 

「フォローになってねぇよ。」

 

「じゃあ次は僕の番ですね。」

 

正義…空気を読めよ…。俺の顔に泥を塗るなよ…絶対に入れるんじゃないぞ…!

 

「っせい!」

 

突かれたボールは、赤いボールへぶつかり穴へと向かう。そして綺麗に穴へと入っていった。

 

「空気を読め正義!!」

 

「それでは勝負のへったくれもないですよ濃霧さん…。」 

 

「これで1ポイント獲得だな」

 

「濃霧さんの汚名返上しますよ…見ててください!」

 

「頼んます…。」

 

「たぁ!!」

 

穴に最も近いボールを目掛け突く。少し危なっかしかったが狙い通り入っていった。

 

「やったーあ!」

 

その後の激闘の末、マッチポイントとなり俺のターンで勝負が決まるという展開になってしまった。

 

「私に変わってもいいのですよ。」

 

クロエが口元を歪ませ俺に囁く。俺が決めないでどうする。こういう時こそ男を見せる時だ…!!

 

「お前は大舟に乗ったつもりでいろ…。決めてやる…!」

 

「…!頑張ってください…!!」

 

額に汗が少し滲む。入れてやるさ…絶対に…!!

 

「…さて…決めれるんでしょうかね…。」

 

正義が俺の顔を吟味するように見つめる。

 

「いけ!!」

 

打ったボールは最後のボールに当たり弾き転がる。

 

「(入ってくれ…!!)」

 

ボールは穴の寸前まで行ったがそこで転がる動きを止めてしまった。

 

「うわぁぁ!惜しい!」

 

正義が計画通りという顔をしている…。まずい…このままだと確実に負ける!! 

 

「僕の作戦勝ちってとこですかね。」

 

「正義、油断はするな。しっかり確実に狙うんだ。」

 

「大丈夫です…僕はいれるさ…。はっ!!」

 

打ったボールは最後のボールへと一直線に向かってくる…。やばい…!もう奥の手だ!!

 

「シールド!!」

 

「ちょっと!?濃霧さん反則ですよ!?」

 

「勝つ為には手段を選ばねぇのが俺だ!!クロエ!!手伝え!!」

 

「面白くなってきました!シールド!」

 

二重シールドの力を見ろ正義!

 

「そっちがその気なら!正義剣グングニル!」

 

ボールからグングニルが出現しシールドへバキバキと音を立てながらめり込んでくる。このままだとシールドが限界を超えるぞ…!

しかしバキィッ!!と音をたてて割れたのはボールの方だった。破片が濃霧の横スレスレを飛んでいく。

 

「うわ…っ!?」

 

「これは…引き分けですか…?」

 

「そうみたいですね…割れてしまってはしょうがないです。」

 

クロエがタイムバックという時を戻す魔法を使う。するとボールの原子が何処からか集まってきてそ元の形へ戻った。

 

「やっぱ魔法って便利だな…。コピーすれば俺もその魔法使えるようになるのか?」

 

「もちろん使えないことは無いと思いますが…パワーダウンですし…なにかしら欠ける部分が出てくると思います。」

 

今度使ってみるか…。彩禰とかすぐ暴れるからな…。

 

「魔法使ったせいか疲れたな…。」

 

「そういえばここカフェあるみたいですよ。ここの12階にあるみたいですね。」

 

「良いですね!行ってみましょう!」

 

エレベーターに乗り、12階へと向かう。エレベーターを降りるとカフェがすぐ目の前にあり、昼時のためか大勢の人が利用していた。

 

「コーヒーの良い匂いがしますね!」

 

「あぁそうだな。」

 

クロエは目を輝かせながら子供のようにはしゃぐ。

 

「結構混んでるな。」

 

「ここはパフェが人気のカフェらしいですよ。ここのパンフレットにもそう書いてあります。」

 

パフェだと!?俺の大好きなパフェという名の甘い塔があるのか!?しかしここでパフェを頼むのも…。パフェ=女の子って感じだし…クロエにこれ以上馬鹿にされたくないからな…。

 

「混んでますから先に席を取っておいてください。僕が注文とってきます。」

 

「私は苺パフェ!佐奇さんも一緒にパフェ食べましょう!」

 

「じゃあ、私はガトーショコラパフェにしようかな。」

 

クロエお願い!俺も誘って!そしたら「しょうがないな」と言って頼めるからぁ!

 

「濃霧さんはどうしますか?」

 

「パ…んん"っ…正義は?」

 

「ここのコーヒー豆が有名なブランド品を使っているらしいので、ブラックにしようかなと。」

 

正義が爽やかな笑顔で俺に笑いかける。そんな笑みは求めてねぇんだよ正義!俺が欲しいのは違うんだよ!!流れ的に俺もブラックと言わなきゃいけない状況じゃねぇか!

 

「じゃあ俺も…ブラックで…」

 

「へぇ濃霧さんブラック飲めるんですね。大人ですねぇー。」

 

畜生が…正直に言えばよかったぜ…。正義もパフェを頼むことに期待した俺が馬鹿だった…。

 

「じゃあ正義あとは頼んだぞ…。」

 

「えぇ。」

 

正義を列に残し俺たちは丁度いい席を探す。

 

「あの窓側の席空いてますよ。」

 

クロエは窓から良い景色が見える席を指さす。

 

「おー、結構高いな…」

 

「ここは12階ですからね…当然です。」

 

それにしても景色は何処も彼処も何も無い原っぱが続いているばかりで街などが一切見えない。

 

「なぁ…あっちの方森や原っぱが続いてるけど道路とかないのか?他の街に行くための。」

 

「ええ!?これ常識ですよ!?まさか…濃霧さんって世間知らずってやつですか…?」

 

「え…常識なん?これ…。」

 

「あの向こう側は魔王群のテリトリーなんだ。この街だけは結界という能力のおかげで守られているんだが…それもいつまで続くか…。」

 

「魔王群のテリトリー…」

 

最初から気付いたがやはりここは異世界らしいな…街があまりにも日本と変わらない外見だしどこか信じられなかった。

 

「というか…こんな馬鹿でかい街一帯に結界を張ってるんだろ?相当パワーが必要なんじゃ…。」

 

「この街の大きさが無意識に張ってられる面積の限界らしいな。」

 

無意識に張ってられる!?その人強すぎだろ!! 

 

「その人は何処に…?」

 

「ゲートですよ、魔王群討伐に行く街を出る人達の為に結界を一部だけ開く仕事をしています。」

 

「ずっとそこにいるのか!?」

 

「はい。まぁRPGゲームでよくある門番ってやつですよ。それに門番さん自体もずっとゲームしてますから暇ではないでしょうね。」

 

ご苦労様ですとしか言いようがない…。

 

「ところでその門番さんは今おいくつなの…?」

 

「不老という能力を持った人に力を借りて不老になったらしいな。」

 

もはや何でもありだなこの世界…。

 

「その人を護衛するボディガードも凄いですよ。やはり魔王群から狙われるみたいですし…不死ではないですから絶対に殺されないように10人体制で護ってるらしいです。能力は完全に被ることが出来ないので貴重な人材らしいですよ。」

 

結界を張ってくれているとはいえゲームをしている最中も護ってくれるとは…羨ましいの言葉しか出てこない…。

 

「すみません。遅くなりました。」

 

うわぁ来やがったよ悪魔ブラックコーヒーが…。だからその笑顔やめろって…。悪気がないのが余計腹立つぜ…。

 

「いやぁー混んでますね…。」

 

並んでくれたのは感謝する…だがウインクで合図をしたのに何一つとも察してくれなかったな正義…。俺が甘党かつスイーツ男子なのを知っているだろ!?

 

「そういえば…珍しいですよね濃霧さん。甘いの好きなのにブラック頼むだなんて。」

 

あぁそうか…ウインクなんて無かったんだな…。

 

「まってましたぁー!佐奇さんどうぞ!」

 

お盆からパフェを持ち、佐奇にチョコレートソースがたっぷりかかったパフェを渡す。

 

「ありがとう。」

 

「いただきまーす!はぁむ…んぅーおいしーいっ!」

 

「あぁ確かに美味しい!」

 

この野郎…。俺にとっちゃ立派な飯テロだぜ…。クロエと佐奇が美味しそうにパフェを食べている。

 

「いい匂いだ…。」

 

正義がカップを左右に揺らし香りを立てる。そしてゆっくりと口に運んだ。

 

「味も深くて濃厚だ…濃霧さん!美味しいですよ!」

 

「すまん…ちょっとトイレ行くわ…」

 

「…?…どうぞ。」

 

もちろんトイレに用がある訳じゃない。

 

「よし…誰もいないな…。魔法防音!そしてショックボルト…!」

 

俺は下に向かって指先からショックボルトを放つ。あぁ分かっているさ…俺はただの馬鹿だ。

 

「がぁっ痛ッてぇぇえ…」

 

これで舌が麻痺し味を感じなくなったいう訳だ。ものすんごく痛いが我慢しよう…。俺はトイレをそそくさと出て皆の元に向かった。しかしそこでは従業員さんが俺らのテーブルを布巾でゴシゴシと拭いていた。

 

「すみません濃霧さん…。うっかり私の手が濃霧さんのコーヒーに当たってしまって…」

 

クロエが申し訳なさそうに頭を下げた。どうやらクロエが俺のコーヒーをこぼしてしまったようだ。

 

「あぁ…そうなのね。」

 

舌痺れさせた意味よ…。

 

「お詫びに私のおごりで出しますから…」

 

「あぁ良いって…気にすんな。こんなことで怒るわけじゃないしさ。そんな顔すんなよ。」

 

よっし超ラッキぃ!クロエナイスプレーだぜ!

 

「濃霧さん…。」

 

舌はよろしくないが男としての優しさは全面に出せたな。そこだけは感謝しておこうブラック。一休みした後、次はバッティングが出来るフロアに行った。

 

「えいっ!!」

 

「そんなに力任せに振り回してるだけだと当たりませんよ。」

 

バットをブンブンと振り回すクロエに正義が近寄り、手取り足取り教える。

 

「佐奇はバッティングしたことあるか?」

 

「これまで1回も無いな。でもこのくらいの速さならいけるかもしれないな。」

 

佐奇が打つ位置に立ち、バットを構える。俺は球の速さを調節する機械を弄り、90まで上げた。佐奇は身長が低いしここら辺だろう…。びゅんっと球が放たれ佐奇のバットに向かい…

 

「せいっ!!」

 

球は勢いよく天井近くまで飛び、気持ちいい程のホームランと言ったところ。

 

「おぉすげぇ!!」

 

「結構気持ちいいな…!」

 

よし、次は俺が。

 

「全部打ってやる!」

 

一方の3人は調節マシンの側でコソコソと何か話している。 

 

「超速い玉にしましょう…!」

 

「何kmぐらいにしようか…」

 

「じゃあ130ぐらいでいいんじゃないかな?素人だと…これを打てるだけでもかなり凄いですよ…」

 

「いきますよぉ!濃霧さん!」

 

「来やがれ!!」

 

悪質な悪戯をされているとは知らず俺はバットを握り締め、構えた。

 

「おらぁッ!あれ?」

 

バットは球にかすりもせずに空振りをした。

 

「ちょっと待った…今の何km…?」

 

「100です!」

 

「サラッと嘘をつくな正義。お前はそれでも正義を名乗るのか。」

 

「濃霧さんがどれだけのスピードまで打てるのかもみたいのでそれもかねてです」

 

「どうです今のは?」

 

「100ねぇ…もっと速いと思ったんだけどな。」

 

その時後ろの三人はこう思った。こいつに見た目で判断出来るほどの力があったんだと。

 

「濃霧さんー!もう少し速くしていいですか?たぶん今のは遅すぎて打てなかったんだと思いますよ。」

 

「んじゃ上げてくれ。」

 

何も知らずに濃霧はクロエ達の操り人形となってしまった。

 

「次はどのくらいにします?」

 

「速さは何処まで上がるんでしょうかね…。」

 

「よし、最大でいこう。」

 

「佐奇さんそれ正気ですか!?」

 

「大丈夫だ…あれほど決闘で死闘を繰り広げているんだ。死なないさ…あの男は。」

 

「あぁー…確かにそうですね。」

 

「というか死ぬ前提なのか…?」

 

正義は最初、ノリに乗っていたが少し気が引けてきたらしく苦笑いを浮かべた。

 

「最大で560kmだな。」

 

「もう人間の速さじゃ出せないですね…」

 

「おーいまだか?」

 

「すみません、いきまーす!」

 

ボン!!と放たれた球はソニックブームのようなものを纏い俺に向かってきた。

 

「おりゃあっ!」

 

手応えありだ…!だが球は前方のどこにも見当たらない。後ろを振り向くとそこにはコンクリートの壁にめりこんだ球。そしてバットに開いたおぞましい穴。

 

「…おいお前ら…今のは…?」

 

「「「500km。」」」

 

笑顔で3人が言った。

 

「このアホ共が。」

 

その後バッティングを数時間やった後、休憩フロアに行った。

 

「結構運動しましたね…」

 

「普段使わない筋肉を使うと筋肉痛になりそうだ…」

 

体のあちこちが悲鳴をあげている。休憩フロアにはいくつかの自動販売機と食堂。ゲームコーナーなどがあった。

 

「…そういえばクロエは何処に行ったんだ?」

 

「クロエさんならあちらのゲームコーナーにいきましたよ。」

 

「ふぅん…。暇だし行こうかな…」

 

ゲームコーナーはあまり広くはなく、おまけのようにこの施設に入っているようだった。

 

「お…いたいた。」

 

クロエは熱心にUFOキャッチャーをやっていた。

 

「どうだ?取れたのか?」

 

「うぅーん…難しいんですよこれ…。この棒状の先端を下にある穴に入れれば取れるらしいんですが…。」

 

「ちょっとやっていいか?」

 

「えぇ。」

 

俺はクロエが欲しいらしい何とも奇妙なぬいぐるみを取る為、100円を投入口に入れる。そういえば…通貨は日本と一緒なんだな…。

 

「このくらいか?よし。」

 

穴の少し前に棒が突かれる、

 

「あー惜しいな…もう一回。」

 

(…濃霧さんっていつもああいう感じだけど…こういう所が好き…。1発でバシッと決めるのもいいけど…こうやって私の為に頑張ってくれる所が…。)

 

「お、取れたぞ。ほら。」

 

濃霧はクロエにぬいぐるみを優しく投げる。

 

「ありがとうございます!」

 

クロエはぬいぐるみを抱き締め、満面の笑みを浮かべた。

 

「あ、ここに居た。濃霧さん、クロエさん!」

 

「ん?どうした?」

 

「ここ後2時間で閉店時間らしいですよ。」

 

「もうそんな時間か…。今日はもう解散しようぜ。皆、疲れただろ?」

 

「では帰りましょうか。」

 

「そうだな…今日は楽しかったよ誘ってくれてありがとう皆。」

 

「私も佐奇さんと遊べてとても楽しかったです!」

 

外はもう夕焼けの空が広がっていて、冷たい風が吹き始めている。一人一人の帰る道は違っていても絆が深まっていくのを俺はより一層感じるのであった。

今後もよろしくお願いいたします。あなたの貴重なお時間をさいてたいへん申し訳ありませんでした。

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