俺の能力は本当に使い物になるのか!?
すいません3話抜けてました。途中のかたも読んであげてください。
「…のう…」
頭が…痛い…。…遠くから声が聞こえるけど…途切れ途切れで…うまく聞き取れない…。あの時…アイツと別れて…車に乗って…。途中で寝てしまったような気が…。
「のうちゃん…?のうちゃん…!」
「…!!」
肩を激しく揺さぶられ、やっと気が付いた。
母さんの声だ…。というか…車に乗っていたはずだ…乗っていたはずなのに…。ここは…?俺が今横たわっているのはベッドのようだが…
「母さん…?何処…ここ…」
「…何言ってるの?もう…遅刻するわよ…!」
遅刻…?
「何言ってるのって…こっちが聞きたいんだけど…」
「入学初日に遅刻はいけません!いい加減に起きないと母さん怒るわよ!」
母さんは布団を勢いよくめくり、カーテンを開ける。
「…ちょ、ちょっと待って…俺…車に乗った後から今までの記憶が全くないんだけど…。」
そう俺が慌てて言うと母さんは顔を少し歪ませたように見えたがすぐに笑顔になり、緊張してるのねぇとか言い出した。
「早く下に降りてきなさいよ。今日は私の得意料理、カリカリベーコンの卵サンドなんだから!母さん張り切っちゃった!」
母さんは部屋を出るとドタバタと階段を降りていった。
「……えぇ…マジ分からん…」
「のうちゃぁーん!!枕元に制服あるからね!!」
階段から思い出したかのように大きな声が聞こえ、少し驚いてしまう。
「枕元とか…クリスマスかよ…」
…………………………………………………
自宅 玄関
「忘れ物ない?」
「無いけど…てか何この制服…。」
「うーん…確かに…ちょっと似合ってないかも…」
玄関の全身鏡に映る俺は着るのではなく制服に着られているようだった。
「…中学が学ランだったからかしら…ブレザーってこうも違和感があるのね…。」
「…もう何も言わないで。」
「あ、そうそう。学校までの道は外に出たらすぐ分かるわ。この街…凄いのよ。私びっくりしちゃった。」
そういえばここは何処なんだ…。母さんは知らばっくれるし…騙されている気がしてならない。
「…まぁいいや。外に出たら分かるんでしょ。」
そう言いながら玄関のドアを開けた瞬間だった…。歩きだそうと地面に目を向けた…いや…あるはずの地面が…無い…?
「え…えぇ…!?なんで…!?」
というかそのまま落ちると思ったのに体が浮遊している…!?そしてバランスを取ろうと奇妙な動きをしている俺の目の前へ白い体をした人形のロボットが現れた。
「コンニチワ。キョウカラ入学スル回道濃霧サンデスネ。」
「えっ…あぁ…っそうですけど…っ」
「テレポートヲ開始シマス。動カナイデ…ジットシテイテクダサイ。」
テレポート…!?
「テレポートって…そりゃ二次元の話…っ」
「…原子化成功率97パーセント。政府カラノ許可ガオリマシタ。コレヨリ転送開始。」
ロボットは濃霧に向かって光線を浴びさせると、みるみるうちに濃霧の体が小さなブロック状の原子に変わっていく。
「えぇっ…!?俺の体っ…消え…」
言い終わる頃には濃霧の姿形が消え、ロボットの体内へと吸い込まれていった。
「…転送完了。良イ学校生活ヲ。」
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「うぉおおああっ!?」
俺が叫び終わるのと同時に原子が全て融合し、体が作り終わっていた。
「…何処…!?」
空を見上げると透明な膜のようなものが貼られていて、キラキラと太陽の光に反射しているのだ。辺りを見回すが街並みは俺の住んでいた田舎町より、うんと都会で高層ビルが幾つも建ち並ぶ。そして目の前にある大きな…まるでコロシアムと博物館が合体したような建物がそびえ立っていた。
「…なに…これ…」
口元がピクピクと動き、苦笑いをするしかない状態に陥った。
「待て待て待て待てぇええっ!!」
theパニックというやつだ。慌てふためき、立派な門の…恐らく学校の名前が書いてあろう所を凝視する。
「能力…能力っ?…能力向上私立学校…!?んだそりゃ…!?」
マジ訳分からん…
そう唖然としている最中、後から声を掛けられる。振り返ると強面の巨漢な男が俺を見下ろしていた。
「お前が…。今日から入学する新入生だな。」
「そうらしいですね…っはは…」
もうこの際、誰でもいい…助けてくれ。
「なら…まだ能力のことは知らないんだな…」
その能力という言葉…この学校の名前にも付いているが…。どういう意味なんだ…?
「能力…?なんすかそれ…?」
「言葉で説明するより見せた方が早い!俺の能力を見ろ!俺の能力 牛!」
そういうと男は頭から黒い短め角が生え、手が蹄のように固まる。まるで牛を擬人化させたような姿になったのだ。
「うぇっ!?な…っ…化け物…っ」
「化け物だとぉっ!?馬鹿にするんじゃねぇ!!」
これは現実なのか…?目の前の人間が…別のものに変化した…っ?
「ここの学生は皆この能力無しでは生きていけない。」
男が手を上げると先程のロボットが物凄いスピードで俺と男の真ん中に現れる。
「ソレデハコレヨリ決闘ヲ開始イタシマス!!」
は!?決闘!?
「すみませんっあの!!本当に意味が分からないんですけどっ!!」
「俺はここのセンコーに頼まれてお前に学校紹介をしてこいと言われたんだ。そのついでにお前を利用してやろうと考えたのさ。」
「俺を利用…?」
「ここの学校は能力同士をぶつけ合う決闘が主流となっている。その決闘に勝つとポイントが報酬として与えられる。俺はそのポイントが足りなくて卒業試験に落ちちまったんだ!だからお前をぶっ倒してポイントを稼ごうってわけよ!!」
俺能力とか持ってないんだけど!?
「決闘開始!!」
「おら行くぞ!!」
「ちょっと待ったぁああ!!」
まさに猪突猛進。めちゃくちゃに俺を追いかけてくる!とりあえずどこか隠れねぇと!!
「どこかっ…どこかねぇか…!」
一目散に学校へ逃げ込むと目の前にあった階段を駆け上る。そして近くのトイレに逃げ込んだ。
「どこ行きやがった…アイツ」
騒々しい鼻息と地に響く声が俺の鼓動を早める。どうしよう…マジで…。なにか…なにか役に立つものはねぇか…!?俺はリュックをあさりこのピンチを切り抜けられそうな物は…!!
「…待てよ…牛…。アイツ…牛だよな…」
確か…俺の今日の…。
「隠れてないで出てこいネズミ!」
「おい!こっちだデカブツ!」
「…!!」
牛男の体が硬直し、目の色が変わる。
俺の手に握られていたのは…。
「これ!なーんだ!?」
「そ、それはっ…あ…」
思った通りだ…食いついたぞ!
「まぁ見ての通り…俺の下着ですよ…でもよー…この色…何色でしょうかねぇ!?」
「あっ…赤だっ…赤色だァああっ!!」
よしよしよし!いいぞ!もっと挑発して…。
「そう!赤色!あぁかぁいぃろぉのぉー!?」
「馬鹿にしやがってぇええっ!!」
男は俺に向かって狙い通り一目散に突進してきた。俺はそのまま学校の玄関に向かい、扉を解放させる。男は止まることなく外に飛び出し、外の外壁に突っ込んだ。するとロボットが俺の目の前に出現した。
「勝者!回道濃霧!」
「え、勝ったの俺…?」
「おめでとうございます。濃霧様。」
どこからともなく拍手が聞こえ、コツコツという足音が俺の方へと向かってくる。
「だ…誰ですか…?」
「初めまして…。この学校の専門面接官でございます。以後お見知りおきを…」
優雅に胸に手を添え一礼をするこの男性…。敵なのか味方のよく分からない雰囲気だ…。
「すみません。案内をさせる生徒を間違えたようですね。あまりにも遅いので少し様子を見に来ましたが…不愉快な思いをさせてしまったようで…。あの生徒の留年は確定かと。」
そう言いながら冷たく笑うこの紳士に恐怖を覚えた。
「…!」
「…?」
男性が少し微笑し、咳払いを一つする。あ…パンツね…。着るの忘れてた…。
「すんません。着てきてもいいすか…?」
「…どうぞ。」
…………………………………………………
学校 廊下
「貴方様の場合、滑り込みの入学ですので…。入学式などは既に二日前に終わっているのですよ…なんともタイミングが悪いですね。せっかくの高校デビューだというのに。」
俺は案内されるがままこの学校の長い廊下を歩いていた。それにしてもホテルみたいだな…床は大理石だしシャンデリアなんか飾っちゃってるよ。
「この学校では特別な面接を行っているのですよ。あ、ちなみに。貴方様の面接を担当するのは私ではありません。こちらの部屋の中で貴方様の事を待っていますよ…。」
「分かりました。ここまでありがとうございます。」
「いえ、貴方様のお役に立ててとても嬉しい限りです。それでは…。」
「はい。……ん?」
気が付いた時には紳士は俺の目の前から消えていた。
「えぇ…怖ぁ…っ…」
とりあえず…この部屋に入ろう…。震える手でドアをノックし、中からの返事を待つ。
「どうぞ。」
「失礼します。」
ドアを開け、あくまで冷静さを保ちながら部屋へと入った。そして椅子の真横まで行き、面接官の顔をじっと見る。
「この度、貴校に入学することになりました回道濃霧です。よろしくお願いします。」
「どうぞお座り下さい。」
「失礼します。」
面接官はさっきの紳士をそのまま女性にしたような風貌で背筋が凍りそうな美貌を持っている。
「…。貴方はこの学校の能力…というものにどのようなイメージをお持ちですか?」
そう…そこなんだ…。能力…それがどういうものなのか検討もつかない…。あの男が牛になったように…ああいうのが能力というのか…?
「…。僕は能力については無知識ですし少し恐怖も覚えました…でもちゃんと向き合えば自分にとって、とても便利なものに変わってくれると思います。」
「あら…どうしてかしら…貴方…。能力のことを知っているような口振りですわね…」
「あぁいや…ちょっと…能力、牛だったかな…?案内するとか言ってたのにいきなり襲われたんですよ…。」
「あー…なるほどね…。でも…傷一つないようだけど…」
「…運良く勝ちましたね…」
俺は鼻の下を人差し指で擦り、あるあるの照れ方をした。
「無能力で勝ったんですか!?」
「あぁまぁ…はい…。」
面接官は机から身を乗り出し、俺の頭からつま先までじっくりと舐め回すように見る。
「…ふぅーん…両親が強いわけね…」
「両親?」
「…まぁ。後々分かるわ。」
父さんと母さんがなにか裏で操作してるとかないよなぁ…?賄賂を使って特待生にするとかしてねぇよな…!?
「それじゃあ気を取り直して…。貴方様が決闘で勝利した相手はHランクの牛田豚助さんですね…。」
牛なのか豚なのかよく分からん名前だな…。
「ランクって…?」
「いわゆる成績です。3年間の決闘の中で勝利した回数、テクニックなどでポイントが加算され、それから評価される。HからAまでがそれぞれの成績となっているのです。」
「なるほど…。そして…能力はどこで目覚めるのですか…?」
「ここで…私が担当します。」
「じゃあ!いまここで…!」
「えぇ!では改めまして…貴方が今欲しい能力はなんですか…?」
(ここカット)
「え…っ?ちょっと待ってください…それはまずいですよ…。思い描いた能力が曖昧だと可笑しな能力になってしまうことがあるんです…!」
「えぇ…!?マジですか…!?」
「今調べてみます…えぇと…。」
おいおい…大丈夫なのか…?
もっとしっかりイメージするんだった…。
女性は端末を取り出すと素早い手つきで調べ始める。
「貴方様の能力は…コピー能力…のようですね…。」
「コピー能力?」
「いわゆるあの超人気ピンクボールと同じような感じですね。」
それはなんとも光栄だ。
「か…かなり…便利じゃないすか…?」
「でも…コピー能力とは言えども…能力をそのままコピーするのではなく…劣化させることで多くの能力をコピーすることが出来るようになるみたいです。」
まぁ容量を確保するためにソフトのデータサイズを少なくするようなもんだ。
「コピーした能力はいつでも使えますが、相手の能力名とその能力自体に触れなければコピーすることが出来ないみたいですね…。貴方様はまだ能力を持ってからの決闘は初戦なので…能力無の状態で戦わなければなりません。」
「はぁ…。」
「初戦敗退は…悲しいですね…。」
「縁起でもないこと言わないでくださいよ…。」
あの牛男は能力無でも運良く勝てたが…この学校の奴らと決闘するのと訳が違う…。
「貴方様は才能があるようですし。期待していますよ。それと…ここではポイントを稼ぐことが基本となります。逆に負けると、容赦なくポイント没収。それと降参の場合は普通に敗退するよりも多くのポイントが没収されてしまいますから気を付けてくださいね。」
「…でも俺は初戦だからもし負けてもポイント没収にはならないんですよね?」
「いえ、マイナスもありますよ。マイナスは卒業するのも難しくなってきます。」
厳しすぎない…?
「あぁそうそう。早速ですが、手始めの決闘をしてもらいます。入学試験だと思って気楽にやってください。」
女性が封筒を俺に渡す。
「その封筒にフィールドの場所。対戦相手がランダムで書いてあります。どうぞお開けください。」
お願いだから弱そうな能力来いぃ…。
恐る恐る封筒を開け、中の3つ折りの紙を開く。
(フィールド番号120番 対戦相手 能力 魔法)
「え、絶対強いじゃん。」
もう笑うしかなかった。
……………………………………………………
「フィールド番号12…ここだな。」
学校のパンフレットに載っていた学校内の地図を見て、どうにかフィールドへと辿り着いた。
にしても広過ぎるだろここ…。
「…お、来たな。」
「あの、決闘のルールとか…知らないんですけど…」
「なんだ新人か。至ってシンプルだぜ。殺された方が負けだ。」
「…え、これって生死が関わるんですか…?」
「安心しろ。このフィールド内は仮想空間のようなもんだ。死んでもフィールドを出れば生き返るからよ。」
死なないけど痛みは味わうってことか…。
それもそれで…。
「おっと時間だな。さ、行ってこい坊主!期待してるぞ!」
大きな鉄製のドアがぎぃいっとこれまた大きな音を立て開けられる。フィールド内は少し肌寒く、冷酷な雰囲気が漂っている。上からは決闘の様子が観覧できるようになっていてガラス張りだった。恐らくマジックミラーというやつだろう。
「…あの人かな…。」
俺が入ってきた入口と左右対称のように向こうの入口から人が入ってきた。
白髪のボブショートで顔に似合わないゴテゴテの杖を重そうに抱えていた。
「うん…普通に可愛いな…。」
相手も俺に気付いたようで、早足で近付いてきた。
「初めまして。君が能力 魔法の…?」
「は、はいっ…!」
すごく緊張してるみたいだな…。
負け確の俺が緊張してるのが馬鹿みたいじゃねぇか。
「初戦なんだし…気楽にやろうぜ?」
「そうですよね…。クヨクヨしていても…何も始まりませんし…。」
「試合開始5秒前!!」
「お…始まるようだな…!じゃあよろしく頼むぜ!」
「はいっ!」
「試合開始!!」
試合開始の合図がなったが俺は1ミリもそこから動かなかった。色々と理由はあったが一番の理由は笑ってしまうことに恐怖で動けなかっただ。
「あの…なんで動かないですか…?」
「…俺は相手の攻撃を受けないとコピーできないんだよ…残念なことに…」
「じゃあ…攻撃しなければ…。」
「それだと決闘にならなくない?」
「確かに…。じゃ、じゃあ私からっ…ファイア!」
小さな炎の塊が杖からボンっと飛び出し、俺目掛けて飛んでくる。攻撃を受けないとコピー出来ないのなら受けるしか…!
俺はもろに炎を顔面に食らった。
「待って普通に熱いっ!!」
すげぇ熱かったけど…これで俺も魔法が使えるようになったってわけか…。とりあえず回復魔法だ…確かヒールとかあったはず…。
「ヒール…!」
顔の火傷が徐々に治癒されていくのがわかった。
「もう1回!ファイアー!!」
また来るな…!でも俺もファイアを使えば…!
見様見真似だ!
「ファイア!!」
しかし、俺のファイアは相手のに比べたらまるで仏壇の線香のような弱っちい炎だ。あっという間にかき消され身体中が炎に包まれる。
「あッちぃいッ!!パワーダウンし過ぎだろこれぇ!!」
「次々行きますよ!サンダー!」
今度は電気かよ!?何でもありだな!!
「これも受けるしか…」
はい、直撃
「ぎゃあ"あっ…!!」
駄目だ…このまま受け続けるだけだと体力が削られる一方…。なにか…いい作戦は…!!
「か、勝てるかも…っ!」
相手は余裕が出てきたようだし…。
そういや…相手の服装…真っ赤なローブだけど…魔法使いを意識してるのか…な…?やべぇ意識が…っ…。
「サンダー!!」
ん…待てよ…赤…。赤といえば…。
「そうだ…赤…!!能力 牛!!」
「え…っ!?」
俺の体は朝のような化物じみたようにはならなかったが前より巨漢な肉体になった。
「力が湧いてくる…っ!これなら行ける!!」
「牛っ!?なぜ…っ!?初戦なはずなのにっなぜ他の能力が使えるんですか!?」
「能力が目覚める前だが…一応あれもカウントされていたようだな…。ラッキー…!」
俺は真っ赤な少女めがけ猛突進をし始める。
「いやぁ来ないでぇえっ!!」
少女は涙目になりながらファイアをうつが牛の硬い体はビクともしない。
「んなロウソクみたいな炎効かねぇよ!!」
ごめん嘘めっちゃ熱い!!でもここは痩せ我慢しないと勝てないっ!!
「誰か助けてぇええっ!!」
「異世界も悪くねぇなああぁっ!!」
俺はここから1時間弱追いかけ回し、相手の降参によって勝利したのであった。
はじめてのかたこのまま読んでくださると嬉しいです
リピーターのかた、申し訳ありませんでした。これからもよろしくお願いいたします。