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最後の戦いⅠ

 

 王国歴3017年、世界の中心と謳われる千年王都『ヴェスティーア』はその繁栄を失いつつあった。

突如として顕現した「骸の魔王」と名乗る存在は世界に対し宣戦布告。人類と魔族との大戦が幕を開けたのである。


 しかし、人は、余りに無力で脆弱であった。


古くは神代から存在するとされる魔族。彼らは根本的な身体能力は元より、魔力は人間のそれを遥かに上回る。

蝗の群れが飛来した畑の様に、一つ、また一つと村が消えていく。ヴェスティーアの国土は容赦なく蝕まれていった。

為す術無く、人はただ滅びの前に膝をつくばかりであった。


 僅かな、けれど確かな希望が召喚さあらわれるまでは・・・・・・




少年は、その日も重たい剣を振るっていた。


いつも通りにやれば何とかなる、そう思って倦怠感溢れる体を動かしていた。しかし、彼のおぼろげな期待は今まさに打ち砕かれようとしていたのである。


 石造りの暗い広間、規則正しく並ぶ窓の夕日が傷ついた少年を赤く照らしていた。

 少年は勇気を振り絞り、瞬発的な助走をつけて剣を肩から振り下ろす。

夕闇の中で小さな光が瞬いた刹那、激しく金属が摩擦する音と共に無数の火花が散らされる。少年の手に響くような重圧がのしかかり、強烈な慣性が腕を蝕む。

彼がその細い腕に徐々に帯びていく熱を感じていたとき、目の前の影から誰かがささやいた。


「ほう? まだやるかえ?」


明らかな嘲笑が大理石に染みこむ間も無く、少年は見えない攻撃によって後方へ殴り飛ばされていた。数分前には明確な戦意を持ってくぐった鋼の扉に叩きつけられ、彼の視界は意識と共に薄れていく。


「妾を相手に半刻耐えたのは誉めようぞ。良き余興であった」


暗闇から浮き出る様に竜の牙を模した黒剣が現れ、差し込む陽の下へとその帯刀者が歩み出た。

漆黒と艶やかな赤が交錯するドレスを身に這わせ、湾曲した角と射殺すような視線を携えた―――――――――――――――――しかして、それは可憐な少女であった。


文字通り目も覚める容姿が少年の精神を引き留めた。金色の剣を床に突き立てて、彼は再び立ち上がる。血と泥が染みこみ固まった唇を震わせて、少年はどうにか言葉を成そうとする。


「・・・・・・けて・・・たまる、か・・・」


少女は片眉を僅かに上げ、冷ややかに嗤う。


「―――ハ。貴様、名は何と申す?」


それは、まさしく虫を潰して喜ぶ、子供の眼であった。

少年は一瞬の戸惑いを見せた後、死地に居るとは思えぬような笑顔を見せた。


「シンヤ・・・。神薙真哉カンナギシンヤだ、覚えとけ」


少女を見返す眼は虹彩の奥を赤く燃やす、勇者のそれに違いなかった。

それでも、彼に向けられた嘲りと殺気が晴れることはない。


「シンヤ・・・。ふむ、記憶には留めておいてやろう。あのが沈むまでは、な?」


 向かい合う少年と少女――――――2人の姿は消え、あらゆる過程が奪われたかの如く剣がぶつかり合った。張り詰めたその空気を引き裂いて、花弁にも似た衝撃が散る様を、2人はしばし見つめていた。



 彼等こそが勇者と魔王であり、これこそが「最後の戦い」であった。

 

 

初投稿から随分遅れてしまいました・・・・・・。スミマセン。

ちなみに! シンヤ君(主人公)の名前ですが、「神敵をもぐ真なる者かな」という中二病感たっぷりの意味が込められているのです。作品名から連想し続けた結果がコレ・・・・・・。ホント名前って迷います。


◇次回予告◇

激突する勇者と魔王。異世界の命運を賭けた戦いは予期せぬ結末を迎える――――――

・・・・・・っていうかこれ最終回じゃね? 


次回もお楽しみに!! 

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