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プロローグ

原作短編「最後の戦いの後、勇者(♂)と魔王(♀)が暇すぎてなんかしゃべってます。」 (http://ncode.syosetu.com/n6447dw/ )もよろしくお願いします!続編たっぷりです!

 その日、少女は一心不乱に走り続けていた。

夜の薄暗い路地を抜け、レンガ造りの家々を抜き去っていく。

白かったスカートはすっかり汚れ、露出していた腕に数え切れないほどの生傷を携えて尚、彼女の背は恐怖に突き動かされていた。


背後から迫り来る足音は木くずを磨り潰す音に似て低く、かれこれ半刻近く逃げている彼女にとっては想像を絶する感覚だった。


 脚はよろけ、視界は歪み、少女の心身が限界に達しつつあったその時、彼女は行く先に光を見た。

今日の夜空は曇りがちだったはずだ。きっと人がいるはずだ。

気力を振り絞り、少女は入り組んだ暗闇から抜け出した。



 少女の脚が止まる。震えだす。


彼女がたどり着いた場所、この『ナクナータヴィレジ』最大の広場は明るく、そして赤かった。

石畳の上に無造作に捨てられた死体。男性は皆首を折られ、女性は下腹部から血を広げている。広場を囲う民家は炎上し、誰の叫びも聞こえない。


 受け入れきれない現実に少女は立ち尽くしてしまった。背後の足音がもう止まっているにも関わらず。


「ミツケタ、オンナ、ミツケタ」


 不気味な声が少女を振り向かせる。

彼女の目の前にいたそれは、醜悪な怪物だった。豚に似た頭部を持つ種族、ナクナータを一夜にして壊滅させたのは〈オーク〉の軍勢であった。


「あ・・・・・・あぁ・・・・・・」


 このままでは自分もあの死体やまにくべられてしまう!

頭では分かっていても、彼女の脚は小枝の様に震えるばかりだった。


「ミツケタ?ミツケタ?」


「ヨコセ、クウ」


「イヤ、コロセ」


 あろうことか広場はオーク達の集合場所になっていた。無数の巨体が少女の希望を奪っていく。


「や・・・・・・いや!来ないで!ねえったら!」


 血管が浮き出た腕が石の棍棒をゆっくりと持ち上げていく。

少女は死期を悟り、そっと瞼を閉じた。












 やけに、静かだ・・・・・・。





静けさが逆に怖くなり少女は眼を開けた。

相も変わらず目前にはオークの肉壁が立ちはだかっている。しかし、怪物は牙の隙間から血を滴らせ硬直していた。

その巨体が崩れ落ちると同時、辺りに起きた異変を少女は理解しつつあった。

数知れぬ程いたオークが皆石畳に突っ伏し、彼女の視界を遮らなかった為である。


「これは・・・・・・」


 恐れながらも少女は辺りを見渡す。家々の火はその勢いを増し、昼間と変わらない明るさが残された彼女を照らしている。

そして、もう一人、小さな人影が広場の中央で揺れていた。





 少年は、改めて自らが握った剣の重みを痛感していた。


今だってそうだ。少女を一人救う為にオーク達を20人余り切り捨てたのだから。

それでも、自分が一足ばかり遅かっただけで、この村は日常を失ってしまった。


 彼もまた日常を失い、この一年間を葛藤と共に生きてきたのだった。しかし、その答えは直に出ようとしている。


 少年は決意を胸に夜空の彼方を見据えていた。



―――――王国歴3017年、冬。戦いの終わりは近い。



感想希望です!次回もお楽しみに!!

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