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魔剣使いの最凶冥王―ワールドアブソリュート―  作者: 神薙リンシア
第4章 学園対抗競技祭〈フェネクス〉編
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第34話 衝撃の事実

えー、はい。毎度毎度遅れて申し訳ございません。



「あー・・まだ肩とか痛むわぁ」

ベッドの上で肩を回し、ため息を吐くように零す。


「当たり前ですよお兄様」

優しく叱るような口調でベッドに横になっている俺を責める妹。その少女には引き千切られた筈の右腕がしっかりと残っていた。それは楓真が『時間支配(タイムドミネーション)』を使った際に少女に掛けた回復最上位魔法『グレイフルヒール』の効果によって欠損も治してしまったのだ。


「いやなぁ・・妹の右腕が引き千切られてたんだぜ?そりゃムチャもするって」

何気なく言ったこの言葉に何かを感じたのか涙を眼尻に溜め、涙を必死に堪えているのが目に見えて分かった。


「んで、聞きたいことはよ、あの生徒たちは平気なのか?」

その問いにびくりと体を震わすと俺にジト目を向け、何やら咎めるように見つめられた。


「な、なんだよ・・」

「いえ別に。なんでもありませんよ」

そう返されるもジト目はそのままに俺を見つめる。


(いや、そんな目をしてるんだから何かあるだろうに・・)

そんなことを思っていると保健室のような部屋にいた白衣の女が扉を開け、病室に入ってきた。


「あ!君はあの時私にカガクシャって言った子じゃないか!」

俺に近付き、俺の肩をガクガクと揺らした。ってか痛い痛い!


「ちょっ、痛い痛い!痛いって!!」

思わずそんな声を上げてしまった。その声に科学者のような女はハッと気が付くと俺の肩から手を離した。


「あ、ごめんよ。興奮して力の制御を誤ってしまったんだ」

「いえ、もう大丈夫です。その代わりといってはなんですが、貴女の名前を教えてください」

「あ、ボクの名前は『メルシス』だよ、フウマくん」


(メルシス・・メルシスねぇ・・・どっかで聞いたような名前だな)

不意に何かに包まれるような感覚が俺を襲った。思考を断ち切り、振り向いた。そこにいたのは、


「お久しぶりでございます。ゼロ・トリニティア様」

戦神シリウスだった。シリウスは優雅にお辞儀をすると指をパチン、と鳴らす。すると以前見たホロウウィンドウが目の前に現れた。


「『メモリアル・ライブラリ』か・・」

「記憶に留めていてくださって光栄でございます。どの様な記憶をご所望でございますか?」

「その前に一つだけいいか?」

「はい。何なりと」

俺は学園の襲撃を思い出しながら問うた。


「あの襲撃の時に俺はお前。戦神を殺した筈だ。何故生きている?」

その問いにシリウスは目を細め、答えた。


()()は三代目戦神でございます」

思ってもみない回答が返ってきた。


「三代目・・二代目は?」

()()に殺されました」

「俺の神界はどうなっている?」

「既に三代目や、四代目が居座り、自ら『創生神』を名乗る(やから)が現れました」

それと、とシリウスは続けて、衝撃的な事を俺に伝えた。


「邪神が今の神界の男性神を束ねています」

俺は『メモリアル・ライブラリ』のアクセスを切断し、精神世界から現実世界に戻った。俺の視界に真っ先に映ったのはメルシスの心配をしたような顔だった。痛みが残る体に『グレイフルヒール』を掛けると、ベッドから降りた。ストレージから黒いロングコートを引っ張り出すと、それを羽織り、「ちょっと!何処行くんだい!?」というメルシスさんの焦るような声を聞き流しながら部屋を飛び出した。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


俺は病院のようなところを飛び出すとスキルを駆使して神殿に走った。勿論神剣が祭られてる神殿だ、まぁ間違いなく入れてもらえるだろう。


(それに・・あそこからなら神界に行ける筈だからな)

そんな確信をもって目前の神殿に走った。刹那。視界が見覚えのない白い巨大な扉を映し出した。俺は突然の出来事に()()()()()()()()取り出した脇差と赤いナイフを抜刀し、逆手に持ち変える。所謂双剣と呼ばれる持ち方だ。


「やぁやぁ、楓真クン。初めましテ」

刹那、何者かに背後からそう耳元で囁かれた。俺の全身の毛が逆立ち、咄嗟に脇差を逆手から持ち変えると、背後にいるであろう人物の首を狩る為身体を捻らせ、鋭く早い斬撃を放った。だがナイフから伝わる感触が一切伝わってこなかった。


「ハッハッハ。まさカほぼノータイムで斬ってくるとは予想できなかったヨ」

目の前にはシルクハットを被り、シルクハットと同色のスーツを着た胡散臭そうな男性が立っていた。


「それにしてもそのロングコートにナイフを仕込む何て、どんな発想をしてるんだい?」

俺はその問いかけに答えず、俺はロングコートから仕込んだ煙幕玉数個をロングコートを翻して落とし、煙幕を展開する。


「ハッハッハ。威勢がいいネェ」

その煙幕に乗じて男の首を狙い、脇差を振るった。


「殺気を出しすぎだヨ」

視界に捉えていた男が一瞬にして背後に立ち、手刀を俺の首に添えていた。


(今の動き・・・俺が捉えられなかった・・!?)

俺は動きを完全に止めた。否、止められた。


「ハッハッハ。ナイフと脇差を下ろセ」

俺は言われた通りにナイフと脇差を手放した。男は油断したのか手刀を下ろした。俺は男が手刀を下した瞬間、地面に落ちる直前の手放したナイフと脇差を神速でキャッチし、男を斬りつけた。


(完璧入った・・!!)

そう確信した。その確信が隙を生んだのか、男の首の皮一枚のみを斬り裂くだけに留まった。俺はバックステップで距離を取ると、深呼吸をし、乱れた呼吸を半ば強引に正す。


「ほほゥ。私のタクティカルボディをも貫通してくるのカ」

男は斬り裂かれた首を摩った。何回か摩ると男は朱色に光る眼を俺に向けた。その瞬間俺の体が金縛りにあったように指一本すら動かせなくなった。


「ハッハッハ。やっと効いてきたようだネ」

ニヤリと笑みを浮かべる。


(っち。やられた・・・)

俺は無意識に舌打ちをしようとするが、その舌打ちする為の舌すら動かない。


「さて、貴方を始末しろとの命令だったガやっぱり破棄することにしよウ」

男は俺との間に空いた二十(メートル)程の距離を一歩一歩歩み、俺との距離を縮める。


(何か・・何かないか・・!!)

俺は普段使わない脳をフル回転させた。


残り十七(メートル)


俺は更に『思考加速』というスキルを使い、感覚を150倍に引き延ばす。すると周りの時間の流れが遅くなる。


(色はいらない、消去。音・・もいらない、消去。)

色、そして音。その両方が順番に消える。


(その余ったリソースを全て思考加速に回せ)

更に周りの時間が遅くなり、さらなる深層意識まで潜ってゆく。その先にあったのは白と黒の扉であった。俺は容赦なく扉を蹴破る。


ドッ・・・ガッ―――――ン!!!!


巨大な空間を爆発音のような轟音が支配する。そこはある意味では見覚えのある場所であった。


「・・・・やっぱり。ここがあのスキル。『メモリアル・ライブラリ』の本質だったわけだ」

巨大な本棚が何列もあり、その棚には過去に読んだ有名なラノベ達が所狭しに並んでいる。そしてその中心に奴はいた。


「お気づきになられたのですね。ゼロ様」

奴――シリウスはそう声をかけてきた。


「ああ、ようやく気付いたよ、この『メモリアル・ライブラリ』の本当の使い方が」

俺は目を閉じ記憶の中からあれの対処法に関係する知識を求めた。刹那、全ての本棚がガシャリ、ガシャリと動き、とある一つの本棚が俺の前に移動してきた。いつだったか同じような経験をしている気がする。が、そんな考えを捨て去り、目の前の本棚にある一つの本に手を伸ばした。指が表紙に触れたその瞬間。本から激しくも気品を感じさせる光が溢れ出し――


――俺の視界を真っ白に染めた。


刹那大海原の中に揺蕩うような感覚に襲われ、意識を引っ張り上げられた。目を開けると深層意識に潜る寸前の景色だ。唯一変わっているとしたら色も音も戻っていることだ。気になる男は二十(メートル)地点を通過した瞬間だった。俺は顔と右腕に『解呪(ディスペル)』を掛け、男が()()()()に入るまで目を男から離さない。


そして男は十(メートル)地点を通過した。そこでふと昔某SNSで技名と動きで全く違う話題のツイートを見た時の記憶が脳裏に過る。丁度右腕が額の近くにあり、その技を放てる状態である。俺はその技を完全に再現するために、中指と人差し指に唸り声をあげながら魔力を溜める。それに気付いた男は歩みを止める。


「お前・・何をするつもりだ・?」

まるで可笑しな物を見るような目で俺を射抜く。


「JKよ・・これが本当の――」

と言葉を区切り、二本の指を男に向ける。


「――魔貫光〇法だァァァァァァッ!!!!!!」

叫び、指の魔力に方向性を持たせ、解放した。魔力は螺旋を纏った光線となり、男に飛んでいく。男は俺が光線を放ってくるとは思っていなかったようで驚きに目を見開いていた。そして螺旋を纏った光線は男の胸を貫き――彼方へと飛んで行った。俺は安堵と魔力酔いで仰向けに倒れた。


――魔力酔いとはその名の通り、魔力に酔うという症状。原因は魔力を使い切ってしまう事や膨大な魔力をその身に浴びてしまうことで発症する――


「あーあ・・超疲れた」

目を閉じ、そのまま意識を手放した――。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


日の光が俺の瞼を通り、俺の意識が少しずつ覚醒してゆく。「眩しい」そう呟き俺は腕で光を遮るようにして眼球を守る。と、そこへ誰かが俺の腹へとダイブしてきた。


「ぐえっ」

思わず変な声が出てしまった。俺は腕の隙間から腹の上にいる物の正体を見る。そして正体を知ると「はぁ」とため息を漏らした。


「妹よ、そこからどいてくれると嬉しいんだが?」

そう腹の上に居座っている妹に一声かける。


「えー、だってお兄ちゃん私がここ降りたらまた寝るつもりなんでしょ?」

「うん」

即答した事に腹を立てたのかポカポカと俺の胸を叩く。


(可愛いなぁ・・)

ナデナデと妹の頭を撫でると妹は気持ちよさそうに目を細める。俺が頭を撫でたことに気をよくしたのか、俺の上から降りてくれた。俺は妹が降りるのを見届けると体を起こした。そこで俺はふと動きを止めた。


(あれ?俺いつ部屋に戻ったっけ?んー、俺って本当にこの世界にいるのか・・?いや、何言ってんだ俺)

俺は頭を振って浮かんだ違和感を振り払った。そして妹の手渡してくる服を受け取った。



神界を探るために向かった神殿で謎の男を倒し、目を閉じた。そして目を開くと自宅の自室にいて・・?彼の運命を変えたあの日が再度やってくる・・!?

次回!「運命のあの日」

お楽しみに!

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