第14話 百鬼夜行
バーン!
今回は次回の戦闘への前置きみたいなものです。なので戦闘シーンは少なく、ほとんどが説明回なのです、今回でハーレム要員――ヒロインが登場します。
では、本編どうぞ!
「は?」
「だーかーらーこの女か町どっち選ぶかって訊いてんだよ」
浅見は腕を組み、指を小刻みに動かしている。
どちらを選ぶかか・・・・
「・・・嫁だな」
そう言うと同時にテレポートを発動させ、浅見の真横に転移し顕現させたトリニティアを振る。が浅見は俺の後方に移動しており赤い剣を掲げていた。
「雑魚が」
一言呟くと赤い剣を振り下ろす。俺は振り向き、トリニティアを斜めに傾け刃の上を滑らし、直撃を避ける。刃と刃が当たる瞬間剣が消える。それに驚き浅見を見ると、左から迫る剣が見えた。俺は空歩を使い上昇する。すると左から迫っていた剣が煙の様に消え、俺の左肩に氷の様に冷たい物が当てられ左腕の感覚が無くなる。その直後左肩に激痛が走る。その痛みに左肩を見ると、本来左腕があった所には何も無かった。そして再び激痛が走ると、左肩を包む様に緑の光が現れる。その光の正体はフウマとの戦闘時に掛けた『オートヒーリング』だった。光は左肩を直すと消えてゆき、左肩には最早痛みなど微塵も残っていなかった。
腕が無いって感覚はレアだな~。
そんな事を思っていると浅見が驚いたではなく、呆れた声を上げる。
「お前本当に人間か?」
ほんと同意見。
「一応人間じゃね?」
俺も正直分からんわ。
「何で疑問形?」
苦笑いしながら訊いてくる。
「ま、良いか」
指を鳴らす。すると、ユキノを縛っている魔法陣が輝きユキノを取り込み始める。
「なっ!?」
その光景に俺は声を上げる。
「で、どうだい?君の嫁が取られるのは、これも一種のNTRって言うのかな?」
そんな事を笑顔で言う。
「このゲス野郎・・!」
今の怒りを乗せられるだけ怒りを乗せて言葉を発する。
「じゃ、スキル発動『所有者権限移行』対象魔剣グリムガルド」
おそらく固有スキルだろう、スキルを発動した、そして対象はユキノだ。しかもそのスキルの名は――
「所有者権限移行・・・!?」
と言う事は俺の所有権が・・
[マスター、魔剣グリムガルドの所有権が強制的に奪われました]
アーカイブの声が頭に響く。
やはりか!
「ははは!やったぞ!神からの魔剣を遂にゲットしたぞ!」
両腕を広げ、デカい声で喜ぶ。
俺の指から黒いスパークが走る。
「殺すか」
自然に冷徹な声が出た。
「よし、前の主人で切れ味を試してやろう」
そう言い、ユキノを顕現させる。
奴の左手に漆黒の剣が現れる。
「さあ!始めよう!」
右手の赤い剣が魔力を帯びる。そしてその剣を真横に構え、横に一閃し、魔力刃を生み出し飛ばしてくる。俺はトリニティアを仕舞い、ミストルティンを顕現させ、魔力刃を突く。
「ほう、それくらいなら出来るのか」
耳元で囁かれ、反射的にミストルティンを振と半径一メートルの地面に金色の円ができる。
「凄まじい槍だな」
余裕たっぷりな顔で上空から見物する浅見の声だ。
俺の周りに神獣をはじめとした魔獣共が集まってくる。
「食い殺せ」
浅見が命じた命令を執行する為俺に飛び掛かろうとする魔獣。その瞬間、二人の男女の声が俺の頭に響く。
「よう、楓真」
「こんにちは私達の来世」
その声がする方向を向くと夫婦の様に寄り添っている二人の美形男女が居た。
「誰だあんたら」
そう話し掛けると、二人共同じ答えを返してくる。
「「前世だ」(です)」
見事ハモル二人。
なんだろうこの気持ち。
と考えると、何かの記憶が流れ込んできた。
・・・・・
「この女たらしがあああああ!!」
俺はテレポートで男の背後に周るとぶん殴る。
男は吹っ飛び地面に刺さる。
そう、流れ込んできた記憶は妻が居るにも関わらず、女を口説いている男の姿なのだ。
「あらあらウフフ」
口に手を当て笑う女性。
何故笑っていられるのか分からない。
「ってぇ~」
などと言いながら突き刺さった頭を抜く浮気男。
「お前らの名は?」
先程は気付かなかったが今は分かる。こいつらの異常な魔力量に。
「俺は元剣聖ラインハルトだ」
「私は元冥帝ラフォリアよ」
冥帝?剣聖?なんだそれ?
「あら、知らないの?」
ラフォリアさんは一言だけ零すと、泣き出した。
「うぅ・・・最近の子私達を知らない・・・うぅ・・」
浮気男の胸に飛び込むラフォリアさん。
イケメン浮気男、許すまじ、慈悲は無い。
「まあまあ、しょうがないよ、かなり昔の人物なんだし」
と言いながらラフォリアさんを撫でる浮気男。
俺が殺意を覚えていると、浮気男は俺を「羨ましかろ?」とでも言いたげな視線で見る。
「はぁ、良いねぇ浮気男さんも、そんな美人な人と夫婦に成れて」
ため息交じりに呟くとラフォリアさんがピクリと反応する。
「そうだろうそうだろう、俺の自慢の妻だ」
と胸を張るラインハルト。とそこへラフォリアさんが俺を押し倒す。
「「ん!?」」
混乱する俺とラインハルトをお構いなしに押し倒された俺に馬乗りになるラフォリアさん。
「ねぇ、楓真くんのハーレムってまだ空きあるかしら?」
耳元で囁くラフォリアさん。
耳にラフォリアさんの吐息が当たる度にドキンと心臓の音が大きく聞こえる。
その問いに戸惑っているとラフォリアさんが俺の上から退く。
「だんまりって事は肯定って事ね」
そう言うとウィンクする。
「最後に二つだけ」
「は、はいなんでしょう?」
畏まりながら訊くと驚きの内容だった。
「一つ、私もそちらの世界に行くので結婚してください
二つ、今から私達の力を複製してお渡ししますので、本気で百鬼夜行を蹴散らしてください、以上です」
何も言えなかった。
「では行ってらしゃい」
手を振るラフォリアさんとラフォリアさんに言い寄るラインハルトが見えるが、音が聞こえない。
だが、これだけは分かる。ラインハルトをガン無視していることだ。そして音が戻った。
☆ ☆ ☆
気付くと俺の全身から黒い魔力が放出されていた。そして俺の右目に吸い込まれているのが分かる。その光景を見て俺はさっきの出来事を思い出す。すると俺の頭に魔法名が浮かぶ。
「『アンロック』」
魔法名を呟くと更に体内の魔力が溢れ出す。その溢れ出した魔力の余波に耐えられず、吹き飛んでゆく魔獣。その光景に驚いていると頭の中に少女の声が響く。
[マスター!大丈夫ですか!?]
(ああ、平気だ、魔法更新始めてくれ)
[了解しました。 魔法更新開始――禁呪を習得。『桜吹雪』魔法威力SSS。使用魔力一万。です――魔法更新終了。]
うん?一つだけ?おかしいな、冥帝なのに・・・。
そう思っていると、ゼロトリニティの魔力取り込みが終了した。俺は瞑っていた両目を開ける。と一言。
「さあ、蹂躙の時間だ」
俺は詠唱を始める。
「『我が魔法は全てを凍てつかせる魔法なり。
世界のあらゆる法を塗り替え、時間すら凍結させる魔法なり。
我、全ての存在を否定する者。
我、神をも凍てつかせし魔法を発動する。ニブルヘイム』」
魔法を唱え終え、指を鳴らす。その瞬間、脱力感が俺を襲う。だがそれは直ぐに消え、襲いかかった魔獣達に留まらず、百鬼夜行を作った魔獣、神獣までもが一斉に凍り付き、オブジェクトと化す。
「なっ!?」
今起きた光景に邪神は驚きの声を上げ、冒険者は皆息を呑んだ。そして静寂に包まれた。その静寂を破ったのはこの状況を引き起こした張本人の夏井楓真だった。
「さぁ邪神、かかって来い」
そう言ったのだった。
作者「はい、人妻という非常にマニアックな属性を備えたヒロインが登場しました。前から出してみたかったのです。」
ユーリディア「はい、という作者の妄想は置いといて、まだ私はヒロインにならないのですかあああ!」
作者「ユーリディアさん落ち着いて!〆のコーナーだよ!」
ユーリディア「〆のコーナーと言ったって、見る人居ないじゃないですか」
作者「いや居るよ!?・・居るよ?居るよね?」
ユーリディア「さ、作者は置いといて、取られてしまった魔剣グリムガルド――ユキノちゃんを取り戻す為動き始める楓真!邪神を倒す為、ユキノちゃんを取り戻す為邪神に剣を向ける。その先は平和か、絶望か、待つのは・・・次回、第15話『暴食剣』お楽しみに!」
作者「ユーリディアさん!?なんで勝手に終えちゃうの!?」
ユーリディア「あ、ブックマーク、評価、お願いします」
作者「ちょっとーー!?」