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世界中の坊やたちにおめでとう

 すまない、坊やには大変すまないことをしてしまった。

あたかも童話に登場するキャラクターたちが繰り広げる寸劇のように語ってきたが、実は違うんだ。

童話のキャラクターなど一人も登場していないんだ。

いわゆる、あざといミスリードというやつだよ。

俺は記憶を失っていた。

そしてここに登場する人物はみんな、俺に記憶を取り戻させるために状況の再現をしていたに過ぎない。


 詳細を語る上で、先に3つの記憶違いがあったことを言っておこう。

一つ目は先ほど言った、童話のキャラクターは登場していないということ。

二つ目は、俺は警察に連れてこられたのではなく、俺が警察だったということだ。

最後の三つ目は後で語るとして、まずはこの場所について話そう。


 ここはラスベガスにある、SMクラブ『グリム』だ。

きっと坊やには理解しがたい場所だと思うが、ここは童話のキャラクターにコスプレした女王様に調教される、というコンセプトで営業しているコスプレSMクラブなのだ。

何? SMを知らないだって?

今まで坊やには親切に色々なこと説明してきたけど、今回はダメだ。

坊やにはまだ早い。

これは大人の世界の話なんだよ。

坊やが大人になったら、この世界を覗いてみるといい。

きっと鮮やかなバラ色の世界が花開くだろう。

では話の続きをしよう。


 俺はSMクラブ『グリム』にやってきた。

ただし、俺は警察に連れてこられた訳ではない。

それは記憶違いだった。

本当は俺が警察であり、自らの足でここへ来たんだ。

普通、職務中であれば他の警察官も同行して行くのだが、俺は一人で来た。

俺は愛用のSMクラブにガサ入れがあることを伝えに一人で来たのだ。

え? ガサ入れを知らないって?

大人の世界の話だから坊やは知らなくてもいいんだよ。

ただね、この世界には風営法というものが存在していてね。

それに違反をしている風俗店はガサ入れ情報を事前に知っておくことで、当日通常営業を行い、摘発を防いでいるんだ。

ベガスの街で、通常ではやってはいけないようなプレイが出来ているのは俺のような良心的な警察官がいるおかげなんだよ。

わかったかい? でもね坊や、警察を目指すなら俺のようにはなるなよ!

では事件当日の話をしよう。


 俺はガサ入れ情報をSMクラブ『グリム』に伝えに来た。

すると店長(裁判長)に

「タダでいいからプレイしていっても良いよ」

と言われ、カウンタースタッフ(検察官)に

「今日、アンジェラは出勤してる?」

と尋ねたら残念ながら出勤日ではなかった。

お気に入りであるシンデレラ役のアンジェラに、出血するまでガラスの靴で踏まれたかったのだが諦めることにした。

でも人気No.1の美女役のアマンダ(妻)が出勤しているというので指名した。

俺は彼女のプレイは初めてだった。

ここは童話の設定のままプレイに移行するから、客は誰であっても彼女は妻になり、夫である野獣は調教される。

俺は期待に胸を躍らせながら下半身丸出しで亀甲縛りをされ、ボールギャグを咥えて三角木馬に乗った。

そりゃあもうウッキウキでホワイトベースに搭乗した。

「白い悪魔を出し尽くしたら赤い彗星を出しなさい!」

女王様にそう言われながらムチで叩かれていた。

だが彼女が手元を狂わせ、頭部にムチが直撃。

キュピーン、と近くにニュータイプがいることをお知らせする音が聞こえたと同時に俺は意識を失った。

意識を取り戻した俺は記憶を失い、どうしてこの場所にいるのかさえわからなかった。

もはやシロッコの手によって廃人化したカミーユ状態である。

俺の異変に気づいた店長は7人のボーイ(ガチムチお兄さん)を使って俺を拘束。

わけもわからないまま俺は無理やり、『ハートの女王の間』という裁判所を模した部屋に監禁された。

この時、精神的に不安定な状態だった俺は警察に捕まり、裁判所に連れてこられたという記憶違いを起こす。

そして、俺が記憶を失ったままでは困ると判断した店長が露出癖のあるオーナー(父)を呼んで事態の収拾に動き出した。

『タダで調教プレイするだけでガサ入れ情報を教えてくれる良心的な警察官』

を失うわけにはいかなかった。


 なぜか警察に捕まり、裁判所に連れてこられたという勘違いをしている俺を見て、店側はスタッフ総出で演技をはじめることにした。

俺の状態に合わせ、裁判を模したショック療法で本当(ドエム)の俺を呼び覚ますためのロールプレイング。

それも徐々に記憶を失った時の状況を再現していく、という超高難易度なハードモードでのガチプレイが始まったのだ。


 まずは精神攻撃による深層心理から記憶(ドエム)を引き出そうと、言葉攻めに長けた白雪姫を呼んだ。

白雪姫を演じるジェニファー(34才)は俺をひたすら罵倒することに努めた。

それでも効果が薄いと感じた店長(裁判長)はカウンタースタッフ(検察官)と目配せし、過去に一度だけ過ちを犯した7人のボーイ(ガチムチお兄さん)を呼んだ。

何を隠そう彼らとは穴兄弟なのだ。

それも悪いことに男同士で穴兄弟なのだ。

俺はより強い刺激を求めて7人のボーイとウロボロス環を作る、というプレイをしたことがある。

今思えばアレは最悪な体験だった。

勢いとはいえ、あんなことをするんじゃなかったと後悔している。

え? ウロボロス環を知らないって?

まったく、仕方のない坊やだね。

ウロボロス環とは、ウロボロスという名前の蛇が自分の尾を呑み込んで出来た円のことで、無限を意味するんだよ。

人間で言えばセルフ○ェラだよ。

何? どのようにして男8人でウロボロス環を作ったかって?

坊や… 時には人として聞いてはいけない場合もあるんだよ。

わかったかい? ただしこれだけは言っておく、とても汚い絵ずらだということは想像に(かた)くない。

でもだからといって想像して(かた)くしてしまってはいけないよ?

そんなことをしたら坊やは病院に連れて行かれた挙句、ご両親を呼ばれる事態になってしまう。

「男8人でウロボロス環を作る姿を想像したら勃起しました」

と病院の先生の言ってごらん?

それを聞いたら、ご両親は泣いちゃうよ?

だからわかったかい? もうこのことには触れないでおくれ。

話に戻るよ?


 ガチムチお兄さんをもってしても記憶(ドエム)は戻らなかった。

そこから先は試行錯誤しながらの状況再現だ。

記憶を失った時の状況、

「下半身丸出しで亀甲縛りされながらボールギャグを咥えて三角木馬にまたがり、ムチで打たれる」

という状況に徐々に近づけていった。

おそらくそれしか手立てがなかったのだろう。

ここまでやってしまってはもう引き下がれない。

病院に運んでも自分たちが警察に捕まってしまう。

そうならないためにも何が何でも記憶(ドエム)を呼び覚まさなければならなかったのだ。


言葉攻めの女王、白雪姫(ジェニファー・34才)

獣姦と調教の女王、美女(アマンダ・41才)

両刀使いの女王、ペニパン女(マリー・28才)…


 店の人気お嬢だけでなく、俺が最近利用していたデブ専デリヘルで人気No.1のクラリス(32才)をラプンツェルとしてデリバリーするほど店側は必死だった。

そりゃあもうオーナーが全裸になるくらい必死だった。

そうしてようやく、俺の記憶のつぼみ(真性のドエム)は開花したのである。

この小説の4章の最後でやっと記憶が戻ったのだ。

では回想は止めにして、4章の最後らへんに時間軸を戻すとしよう。


「いい加減に思い出しなさい! このブタがッ」


 そう言いながら必死でムチを振るう彼女だったが、俺の表情が赤らみ、恍惚の笑みを浮かべているのに気づいた。

彼女は俺の口を塞いでいたボールギャグを外し、ムチの柄で俺の首を持ち上げる。


「やっと思いだしたようね、このブタがッ」


そう言って俺の顔にツバを吐きかけた。

そしてそれを見守るみんなが、まるでTV版エヴァンゲリオンの最終回のように「おめでとう」と言いながら拍手をしている。

坊や、今まで話を聞いてくれてありがとう。

そしてさようなら。

世界中の坊やたち(チルドレン)におめでとう。

最後に坊やに言っておくことがある。

これが俺の3つ目の記憶違い。

俺、犬なんて飼ってなかったわ!


「答えてみな! お前みたいな変態の名前はなんて言うんだいッ」

「ハイィィ! 私の名前はマックスゥ! あなた様の犬でございますぅッ」

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