蘇るM(メモリー)、解き放たれしM(マインド)
グリム童話のラプンツェルを知っているだろうか?
魔女によって塔の最上階に閉じ込められたラプンツェルというお姫様がいた。
姫は超ロン毛で、塔の下まで髪の毛が伸びている。
そして美しい姫の噂を聞きつけた王子様が、長い髪の毛をロープ代わりにして塔をのぼる。
そして二人は出会い、そのあとむちゃくちゃセックスした。
魔女の目をかいくぐり、二人は何度も密会する。
そして二人は会うたび、むちゃくちゃセックスした。
そして妊娠、魔女にバレる。
王子は目つぶしを喰らって失明。
姫は親代わりだった魔女に勘当され、塔を出てシングルマザーになる。
簡単に言うと、十代半ばで出来ちゃったヤンキー娘の話だ。
俺もラプンツェル姫の噂を聞きつけ、塔をのぼったことがある。
だが現実はグリム童話とかなり違う。
考えてみろ? 髪の毛をロープ代わりにのぼるんだぞ?
それも何年もシャンプーせずに野ざらしにしてる髪の毛だ。
スゲぇ臭いするのね… しかも脂でギトギトしててスゲぇ滑る!
それに俺ちょっと小太りだから体重が80キロあるのね。
普通に考えればわかると思うんだけど、ラプンツェル姫はその体重を支えられるってこと。
成人男性の平均体重よりちょいと重めの体重を髪の毛だけで支えることができる女…
スレンダーな美人がいるわけないんだよねー
華奢な体つきで、思わず守ってあげちゃいたくなるような娘がいるわけないんだなコレが!
そんな娘だったら俺が塔のてっぺんに着くよりも先に引きづり落とされるよ?
引きづり落とされて即、殺人事件だよ?
髪の毛クサイ時点でやめとけばよかったんだよ…
もう予想ついただろ? いたのね…
推測体重300キロのデブ女がいたの。
太りすぎてベットから起き上がれずにいる、寝たきりのスーパーおデブちゃんがいたのよ…
お前が証言台で喋る前に言っとくけどさ…
お前のそれ! 妊娠じゃねぇから!
なんか法廷内に異様な臭いするし!
体臭くせぇよ! もう最悪だよ!
「フガ… フガガ、フガ」
「え? なになに? 被告人に乱暴されたと?」
「フガ… フゴッ、フガゴッ」
「それで妊娠したと! ヒドイ話だ! まったく!」
太りすぎてフガフガしか言わないラプンツェルと
フガフガ語を通訳する検察官。
そして周りの人間は俺に軽蔑の眼差しを向けている。
なんですかこの構図は? ラプンツェルは何を言ってるかわかんねぇし。
というかメッチャ困惑した表情を浮かべてるし。
「なんでここに連れてこられたの?」って感じ。
一番状況を理解できてない感じなんだけど。
多分、検察官が言ってるようなこと何一つ言ってないよ?
「わたしのカラムーチョとピザポテトはどこ?」とかそんなこと言ってると思うよ?
「あらレイプだなんて野蛮ねぇ」
「ほんと、物騒な世の中よねぇ」
「ねぇねぇ奥さん! それよりも私、思いついちゃったわ!」
「なになに奥さん? レイプ対策? 撃退法かしら?」
「違うわよ、もう! 回文よ か・い・ぶ・ん!」
「回文? 右から読んでも左から読んでも同じになるというやつ?
聞かせて聞かせて!」
「ゴホン! えー 『アナルレイプ、挿入れるなぁ!』」
「あ・な・る・れ・い・ぷ・い・れ・る・な・あ…
ほんとだわぁ! すごいわ奥さん! あなた天才だわぁ!」
主婦の井戸端会議風に話す7人のガチムチお兄さんたち…
つーか今、回文とか関係ねぇよ! ふざけんな野次馬共が!
人の不幸で遊んでんじゃねぇよ!
『野次、あの罪は蜜の味や』
どうだ! 回文で返してやったぞ!
「良くそんな粗末なものでヤレたものね…」
目線が痛いですよ白雪姫! わかってます…
ご褒美ですね? ああ、もっと私のことを蔑んで下さいませ白雪姫さまぁ!
「あら、お義父さん! お久しぶりです」
「息子の見苦しい姿を見せてしまって誠に申し訳ない…」
今かよ! ようやく父の存在に気がついた妻が挨拶をしている。
というか父さん服を着ろよ!
あんたの見苦しいムスコが全開で見えてしまっているんですけど!?
人の嫁の前に租チン晒しながら普通に挨拶できる神経を理解できないよ!
「あー もう詰んだわー
あとで弁護料せしめようと思って今まで頑張ってきたけど、これダメだわ。
もう無理ゲーだわ」
俺の唯一の味方だったペニパン女が戦いを放棄した。
つーか最低だな! この女、ゲス極まりないな!
弁護料ってなんだよ? お前が法廷に来たのは小遣い稼ぎかよ!?
「えー では事件の全容を話してくれるかな?」
「フガ! フゴゴフガッ」
「なになに? 白馬に乗った王子様がやって来て?
裁判長! 事件当日、被告人が乗っていた白馬をここに連れてきてもよろしいでしょうか!」
「よろしい! 許可する!」
おいおい、待て待て… 俺は白馬なんて持ってないぞ?
初耳だよ? 俺は馬にすら乗ったことないよ?
ズリズリズリ…、と床を引きずる音が聞こえてきたかと思えば、
俺の目の前に白馬が置かれた。
下半身丸出しで亀甲縛りをされた状態の俺の前に、白馬が用意された。
もう察しの良い坊やにならわかると思うが、これは馬ではない。
この馬の形を一文字で表現するとすれば、『△』である。
この『△』にルビを振るとすれば、『△』だ。
白く塗装された三角木馬が俺の前に置かれた。
そして「状況を再現する」と言う検察官の言葉とともに△に乗せられる俺…
下半身丸出しで亀甲縛りされながら△に乗せられる俺…
これ何のSMプレイですか?
ああ… これきっと何かの間違いだわ。 そうに違いない…
△って一字で表現できるワープロソフトの優秀さには感服したけど、
これきっと三角木馬じゃないわ…
見間違い? ルビのフリ間違い?
あれだよ、きっと野球のベース?
ホワイトベースってやつ?
そうだよホワイトベースなんだよ。
俺は野球をやっているに違いない。
だってほら、俺の8人目の小人は帽子かぶってるし。
野球なんだよ。
そういやホワイトベースってガンダムにも出てくるよね?
ブライト艦長が乗ってるガンダムの母艦でさ、通称『木馬』って呼ばれてるやつ…
ああ、そうだよ木馬だよ。 結局は木馬だったよ…
ああそうさ! 認めるとも! これは三角木馬だよ!
木馬によって前立腺を強制的に刺激された俺の『ボール2機を従えたガンキャノン』から白い悪魔が射出されそうだよ。
アムロ、いっきまーす状態だよ。 なんだよコレ… なんなんだよ!
「父さんにもなぶられたこと無いのに!」
「被告人は発言を許されていません! 黙らせなさい!」
俺の叫びも虚しく、裁判長命令でボールギャグを咥えさせられた俺はもはやフガフガ語しか話せなくなってしまった。
ボールギャグとは、先ほど俺が小人をボールとガンキャノンで例えたようなギャグのことではない。
SMプレイで使う、猿ぐつわのことだ。
穴の開いたボールに革製のヒモがついていて、ボールを口にくわえられて縛られる。
ボールに開いた穴から呼吸ができるが、同時にヨダレを垂らしまくる。
羞恥プレイの必需品として古来から重宝されてきたものだ。
「フガ! フガガガーゴ!」
「フゴゥ! フゴゴフゴゥッ」
ラプンツェルはフガフガ語を話すがまったく理解できない。
俺もフガフガ語を話すが周りにはまったく理解されない。
この状態で俺とラプンツェルが会話をしても、どちらが俺でラプンツェルかなんて誰にも判断できない。
それはもう小説として、やってはいけないことだ。
小説の形式を完全に破壊してしまっている!
「あれ? おかしいな… 馬が全然動かないではないか! どうなっておる!」
「裁判長! 馬はムチで叩いて走らせるものです! ただ今ムチを用意いたします!」
スパァァン!スパァァン!と、ムチがしなやかに床を叩く音が聞こえる。
俺はヨダレをダラダラと垂らしながら振り向くと、妻が馴れた手つきでムチを操っていた。
そして次の瞬間、そのムチは俺を襲った。
バチィィン! もの凄い衝撃とともに頭が真っ白になる。
ちょっと待て、お前はどちら側の人間なんだよ?
というか何で馬じゃなくて俺を叩いてんの?
どうせ叩かれるなら白雪姫に罵倒されながら叩かれたいんだけど?
変態的な願望を抱えながら、遠のいていく意識の中で俺は妻の声を聞いた。
「まだ思い出せないの!?
いい加減に思い出しなさい! この醜い豚めッ」
ああ… 溶けてしまいそうだ…
坊やにはきっとこの気持ちはわからないだろうな…
俺の痛みが快感へと変わっていく…
何かが、俺の中で何かが目覚めようとしていた。
そうだ… 忘れていたんだ。
全部思いだしたよ、本当の自分を…