7.器と扉
恭とジュネは、宿屋の一室で話をしていた。
ベッドがニつに丸テーブルと椅子ニつ。シンプルだけど、リーフ村の宿屋に比べれば清潔感がある。あと水だけどシャワーがついていた。
短髪だと思っていたジュネさんが、あの厳つい兜を脱いだら、束ねた髪がほどけ綺麗な赤い長髪ストレートだったのには驚いた。
「結局、俺の神聖輪でもだめだったな」
「やっぱり僕が違う世界の人間だからって事なんでしょうか……」
「明日メルシャに見てもらおうぜ! んで、そのお前の知ってるゲーム? てのは、最終的にどうなんだよ?」
ベッドに腰掛けながらジュネが聞いてきた。
「僕が知ってるゲームだと、ラスボスは臥竜王って巨大な龍でしたね」
「ラスボスってなんだよ?」
「えっと、一番強いヤツってゆうか最終目標みたいな」
テレビゲームを知らない人に説明するのは難しい。
「それ倒すとどうなるんだ?」
「え? だからモンスターがいなくなって平和になるんじゃ……」
「ふぅ~ん。モンスターがいない世界か。つまんなそうだな。んで、その後どうなるんだ?」
「そのあとって……。それで終わりですけど?」
「終わりって。その龍を倒して平和になって終わり? ……ちょっと待てよ。どっかでその臥竜王ての見た気がするんだけど……ダメだ! 思い出せねぇ! 水浴びてくる」
ジュネはサッと立ち上がり行ってしまった。
「……ゲームと違う点は。精霊。町や城。モンスターも知らないヤツ結構がいるなぁ……」
ベッドに横になりながら考えてるうちに寝てしまった。
バ~ンッ!!
「おい! 思い出したぞ! 恭、起きろって!」
ジュネの大きな声で。目をこすりながら、体を起こした。
「どうしたんですか…………って裸!! ボタン!!」
目の前でおっぱいが揺れている。突然の不意討ちに目をそらしてしまった!
「ボタン? 裸って下履いてんじゃねぇか! それより思い出したんだよ! 臥竜王!!」
そのまま話を続けようとするジュネ。
「そ、その前に……。む、胸をしまって下さい」
もっと見ていたいと思いながらも、話が全然入ってこないから仕方がない。
「うるせぇヤツだな! ちょっと待ってろ」
ジュネはシャワー室に向かった。
はぁ~……いいもん見た。そういえば生おっぱい見たの初めてだ。触っとけば良かったなぁ。
すぐに赤い胸当てをしてジュネが戻って来た。
「んでよ、思い出したんだよ! 確かこの城の地下室の壁に掘ってあったんだよ! なんせ俺も4日前にここに来たばっかでよ。城で迷ったら地下に出て、確かそこに臥竜王とかってあったぜ」
「本当ですか! 見てみたいな! 臥竜王がいるなら、それを倒せば夢から覚めるかも! でも……」
「明日の予定はメルシャ→城→火の聖霊の祠で決まりだな! 俺は寝るぜ」
ジュネは布団を被ってゴソゴソしている。布団から手を出して袋に何か入れた。
「俺、上取らなきゃ寝れねんだよ! 寝相はいいから布団から出る事はねぇと思うけど。触んじゃねぇぞ!」
「…………」
おっぱい。……揺れてたなぁ。
頭と下半身を冷やしにシャワーを浴びる事にした。
翌朝ジュネに起こされた。ジュネは着替えを終えていて。
「早くしろよ。朝飯食いに行こうぜ!」
上半身をお越してジュネから顔を背けたまま。
「……おふぁようございます」
と言った。
「……おい。こっち向いてみな。顔腫れてんじゃねぇか!お前くだらねぇ事したろ! 触んなっつっただろうが……」
「しゃわってませんよ!…ひょ、ひょっとふほんがじゅれてたひゃら」
自分でも何て言ってるか分からない。
「そっか。俺が寝てる時は近寄らねぇ方がいいぞ」
ジュネは、胸を上下に動かした。
実際は布団の上から暫く眺めていて、触れるか触れないかって所で……。ぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられた。起きてるのかと思ったが、僕を殴った後も静かな寝息を立てていた。
「さっさと行こうぜ!」
ジュネは、扉から出て行ってしまった。
恭も頬っぺたを押さえながら、あとに続いた。
メルシャのギルドに着くと、パンとミルクにドードーの照り焼きをそれぞれ頼んだ。
「そんでよぉ。飯食い終わったら、こいつの聖神力の器を見てやってくれよ」
ジュネは、ドードーを頬張りながら言った。
「それはいいけど、食べながら喋るのやめなさい。汚いから」
恭は頬が痛くてパン小さく切って、ミルクでゆっくり流しこむ。
それを見ていたジュネ。
「悪かったって! 後で薬草でも買ってやるよ。でも、ほんとは触ったろ?」
「まだ! 触ってませんよ!」
あっ……。
「まだって何だ? やっぱり自分で買え!」
そんなこんなで食事を終えてメルシャさんに見てもらう事した。
メルシャさんは、恭の頭に手を乗せるとあの鋭い目付きになった。
「空と大地を統べる聖霊よ我が血を糧に、この者の器を見せよ!」
「どうだ? 見えたか?」
「………結果から言うとダメね」
メルシャは顔を左右に振った。
「ダメってどうゆう事だよ? まさか、ほんとに聖神力0なのか?」
「そうじゃないの。……底が、底が無いのよ。こんなの初めてだわ。たぶん神聖輪の(EEE)は、エラーってより、多すぎて表示できないんじゃないかしら? 信じられないけど……」
メルシャは、こめかみを指でトントンしながら考え込んでいる。
「そんな事あるのかよ? 聞いた事ねぇぞ」
「ん~……ちょっといいかしら」
メルシャは恭のローブを脱がせ始めた。
「ちょ、ちょっと!? メルシャさん何を…」
褌一枚の恭の体を隈無く調べていくメルシャ。その動きが腕を見て止まった。
「ちょっと!! 十八って何の冗談よ!」
「へっ? 十八個って……。このBCGの痕が何か?」
皆あるでしょ?
「マジかお前! 十八個って」
「これはね。産まれた時に聖霊の祝福を受けた証なの。精霊とどれだけ心を通わせる事が出来るかって印なのよ。あたしは、ここに十個」
後ろ髪をかき上げ、うなじを見せた。
色っぽい。じゃなくて確かに十個ある。
「俺は、ケツにニ個だ! 見せねぇけどな」
「でも僕のは只の予防接種みたいな物で、特別な物じゃ無いと思いますけど」
何となく分かったのは。BCGの痕がこの世界では、ありえないとゆう事だけだった。
ギルドを出てコーラル城へ向かう途中、道具屋に立ち寄った。
「ジュネさん、火炎石とか緑虫石は道具屋で売ってないんですか?」
「火炎石? そんなのとっくに取り尽くして無いぜ! 正確には、これから行く聖霊の祠に一個あんけどよ。見たら驚くぜ。さっさと薬草買って行こうぜ!」
恭は、薬草を念の為2個買って一つ食べた。
痛みと腫れがスーッ引いていく。
「便利だなぁ」
バファ〇リンみたいなもんかな? 半分くらい優しさが成分かも。等とくだらない事を考えながら。すれ違う人や町並みを満喫しながら歩いていると、あっという間にコーラル城の前まで来た。
「近くで見たらやっぱり大きいですね!」
大きな石のアーチ。両脇に門番が立っている。
恭は小声で。
「ジュネさん。コーラル城の兵士って、スキンヘッドに眉無しって決まりなんですか?」
「そうゆう訳じゃねぇけど。噂じゃ大臣が禿げだかららしいぜ」
ジュネも小声て答えた。
恭は、門番に軽く頭を下げてアーチをくぐった。
豪華な噴水があり。両脇に花壇があって、色とりどりの花が咲乱れ。蝶がヒラヒラと優雅に舞っている。
その先にある階段を上がると、中央に更に上へ行く階段があり。その両脇に奥へ行く通路が続いていた。
ジュネは、左の通路を進んでいく。
「確かこっちに行って。書庫に行こうと思ったら、下りの階段だったんだよなぁ」
恭は、ジュネのあとについていく。
「この辺だった気が……。お、確かこいつだ」
ジュネが壁を指差した。
見ると、石壁のブロックの一つに星? いや、六芒星のマークが彫られている。
「何か書いてあんなぁ~って触ったらよぉ……」
その時の事を再現するように、ジュネが六芒星に触れた。
六芒星優しい光を放ち。その光は徐々に広がっていく。壁に人が通れる程の穴があいて、下りの階段が現れた。
「これ隠し扉じゃないですか? まずいですよ……」
「だから見つかる前にさっさと行くんだよ!」
辺りをうかがう恭を無視して、ジュネはさっさと階段を降り始めた。
「早く来ないと閉まっちまうぞ!」
慌て階段を下りると、音もなく穴が塞がっていった。