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夢オチなのに生意気だ  作者: jun
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6.聖約と神聖輪

 手を握っている恭とジュネの前に、一枚の紙が置かれた。


「何ですかこれ?」


「聖約書よぉ。ココとココに、君とジュネの名前を書いてね」


「あいよっ……と。何時までも俺の手を握ってねぇで、お前も早く書けよ」


 慌てジュネの手を離して、空欄に恭と書いた。


 聖約書を交わさないと教会で生き返れないらしい。このルール危なかった……。初戦のスライムでゲームオーバーになるところだった。


 簡単な仕組みを言うと、例えばジュネさんが死んだ場合。御霊(みたま)は大教会に辿り着き、肉体は命玉 (女は赤・男は青)になるので、聖約を交わした仲間がそれを持って教会へ行き神父に御霊を降ろしてもらい、命玉を叩き割ると生き返るらしい。


 それ以外の者が割ると肉体も魂も消滅、二度と生き返れない。玉の期限は3日それを過ぎても命玉は消滅するらしい。


 ギルドのお姉さんが、鋭い目付きで聖約書に手をかざす。


「……天を統べる聖霊と神々の名において、聖約を交わしし者に聖なる守りを与えたまえ」

 声と共に聖約書が神々しい光を放って燃え上がり……消えた!?


「はいっ、聖約完了よ!ガンバってね」

 とウインクした!


 聖約書の光に照らされたお姉さんの髪は、鮮やかなピンク色だった。


「あ、ありがとうございました!」


「んじゃ、行くか! まずはお前の服を何とかしようぜ。なんだよその布切れは?」



「ジュネさんだって、布切れみたいなもんじゃないですか!」


「俺のはいいんだよ! 店で買ったれっきとした服なの! お前のゴミ袋に穴開けたのとは違うんだよ! ほら、行くぞ」


 これゴミ袋だったのか……。軽いショックを受けながら、ジュネと共にギルドをあとにした。


 ジュネの案内で防具屋へ向かっているのだが。ジュネさんは後から見ても危険だ。


「あの~……ジュネさん。お尻も半分出ちゃってますけど……」

 目のやり場に困る。と言うか、お尻と胸にしか目がいかない。


「だから、いいんだって! 気にするなって変だぞお前!」


 確かに人とすれ違っても、特別ジュネを見ている様子はない。話を変えよう。


「さっきのギルドのお姉さんの火が出たやつ。あれは魔法みたいな物ですか?」

 僕が知ってるこのゲームで魔法は使えなかった。敵は使ってきたけど……。


 火炎石とか水流石をそのつど使っていた。


「なんだお前。聖霊の祠しらねぇのか? どっから来たんだよ」


 チョット迷ったけど、嘘をついてもしょうがないので、ありのままを話した。信じる信じないはジュネ次第。


「マジかよ!! 信じらんねぇけど、お前なんかおかしいもんな。……まぁどうでもいいや。分からねぇ事あったら、聞けよな!」



 ジュネは細かい事を気にしない、もの凄くサッパリとした性格の様だ。今の恭にとっては大変ありがたい。


「じゃあ、その腕につけてるのは何ですか? 腕時計じゃないですよね?」

 ずっとジュネの左腕で光ってる物が気になっていた。


「腕時計? なんだそれ。これも知らねぇのかよ? さっきの話マジなのか? これも買った方がいいな。こいつは残りの聖神力を数値化する道具だ」


「聖神力? 数値化?」


「さっき言った聖霊の祠で契約を結ぶと、精霊の力を借りる事ができる。精霊ってのは、見えねぇけどそこらじゅうにいるわけだ! あとは想像力と聖神力だ!」



 ジュネの説明は、ざっくりし過ぎて全然分からない。


「つまり聖神力の強さに比例して、強い力を借りられるって事ですか?」


「そう単純じゃねぇんだよな~。たとえ俺の聖神力が1000あったとしても、50までの力しか出せない! 決まり事だな。聖神力が0を過ぎると死ぬから気をつけな!」


「ヘェー……!? 死ぬって聞こえましたけど? 聞き間違いですよね?」


「大丈夫だって、その為のこの腕輪なんだからさ! 0を過ぎて精霊の力は借りられない」


 簡単に言うと腕輪をつけてれば、大丈夫って事なんだろうけど……。


「分かった様な、分からない様な……」



「明日契約して使ってみれば分かるって! ほら、着いたぜ」


 ジュネの言葉に顔を正面に向けると、防具屋の前だった。話しながらもずっと胸とお尻しか見ていなかった。


 品揃えもそこそこあり。でっぷりとしたおじさんが店先に座っている。さっそく物色を始める。


「おっ、これなんかいいじゃねぇか?」

 ジュネが手に取ったのは鉄製の鎧だった……。


「ちょっと、着てみろよ!」


 恭は渋々ゴミ袋の上から着てみた……。


「ジュネさん……動けません……」

 とにかく重い。こんなの着てたらモンスターに袋叩きに合うだけだ。


「チッ、しょうがねぇな……」


「できれば僕もジュネさんみたいな……」



「ゲッ、お前ソッチ系趣味か! しょうがねぇな。俺の予備を……」

 ジュネは自分の袋を覗き。


「ほら、これならやるぞ!」

 黒い水着をワンセット取り出した。


「へっ? ち、違いますよ! ジュネさんみたいに、動きやすい服がいいなって言おうとしたんですよ!」


「なんだ。最近は結構ソッチ系のヤツも増えてるって聞いたからよ」

 水着を袋にしまった。


「あっ、それは貰っといてもいいですけど」


「これはどうだ? これくらい装備しとかないとすぐ死んじまうぜ」


 すでに聞いていない。


 次に渡されたのは鎖カタビラ。


「これもちょっと。あっ、これとか!」


 恭は茶色い厚手のパーカーみたいのを手に取った。


「戦士のローブ。ゴミ袋よりはマシか。それにしな! それからおっちゃん、神聖輪1つな!」


「はい、毎度。戦士のローブが80ディル、神聖輪が200ディルだね」


「ジュネさん、僕130ディル位しか持ってないんですけど」


「チッ、いいよ。貸しだからな、そのうち返せよ」


 恭はジュネに280ディルの借金ができた。


 買ったばかりの戦士のローブに着替え。今まで着ていたゴミ袋を、防具屋で処分してもらった。


 とりあえず僕も歩き疲れたし、ジュネと落ち着いて話をするため宿屋へに向かった。

「ジュネさん、この神聖輪て腕につけるだけでいいんですか?」

 ジュネの胸に話かけた。


「お前は誰と話してやがんだ? 胸か? ケツか!」


 バレてたのか……。


「も、もちろんジュネさんですけど……」


「まぁ見たきゃいくら見てもいいんだけどよ。話してる時はせめて目を見ろよ!」


 ごもっともである。


「……はい。それでこの腕輪は」


「腕に嵌めりゃいいだけだよ。つけてみな」


 言われた通り左の手首に嵌めてみた。


「これでいいんですか? 何もおきませんけど……」


「少し待ちな。今お前の聖神力を計測してんだ」


 暫くすると……。神聖輪が青く光り出した。青い光が消えると、水晶部分に文字が表れた。



「数値がおかしくないですか?(EEE)って出てますけど」


「(EEE)? エラーて事だな。もう一度やってみな」


 最初からもう一度やってみたが結果は同じだった。


「どうゆう事ですか?」

 ジュネは腕を組んで少し考えて……。


「お前もしかして! 聖神力ゼロなんじゃねぇか?」


「そんなぁ~。それじゃあ僕、精霊使えないんですか?」

 精霊と戯れたかったなぁ。


「はははっ、嘘だよ。生きてる以上、聖神力がないヤツなんていないって! あとで俺ので試してみな。それでダメならメルシャに見てもらおうぜ」


「メルシャ?」


「ギルドの姉ちゃんだよ。この世界でギルドの経営はあいつの家系しか出来ねぇんだ! 血が関係してるらしいけど、詳しい事は俺も知らねぇ。聖約書を燃やしただろ? あれ他のヤツがやっても、ただ燃えるだけなんだぜ」


「へぇー……。メルシャさんか。綺麗な人ですよね」

 メルシャの柔らかそうな胸と八重歯を思い出した。


「何ニヤニヤしてんだよ? 気持ち悪いヤツだなな」


「ニヤニヤなんてしてませんよ。あっ、これ宿屋ですよ!」


 恭達は話をする為、同じ部屋にて夜を過ごす事となった。

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