5.ニ度目の旅立ち
じいちゃんによると、袋に入れている食べ物は腐らないらしい。
一つの袋に20個までアイテムが入るが、入れたアイテムの重さは変わらない。つまり10キロの盾を入れたら、袋の重さも10キロとゆう事だ。
恭はまずフリント村を目指す事にした。
見渡す限り芝生の様な草原。特殊な工夫でもされているのか、草の生えていない土の道が遥か先まで続いている。
モンスターにも会わずに別れ道まで来れてしまった。
「正直歩きってのはキツイいよな……。ゲーム中盤なら馬車が手に入るんだけど」
フリント村は、三つの小さな岩山に囲まれた場所にあり。三方を削り崖にする事で、敵の侵入を妨げる工夫がしてある。
暫く行くと村の入口だったであろう、朽ち果てた木の門が右前方に見えてきた。
「……あそこかな」
近づいて行くと、村の入口からモンスターが数体、出入りしているのが見えた。
「モンスターの住処になってるのか……」
じいちゃんの言う事を疑ってた訳じゃないけど、ほんとに廃墟になっていたのか。
スライム二匹とドードーにバビルサが一匹ずつ。
今の僕なら、たぶんイケる!
恭は袋から剣を取り出し……一気に駆け寄る!
「うりゃ~~ッ!」
モンスターが気づいて、振り向いた瞬間…!
まず仲良く並んでいるアメーバ二匹を横に真っ二つ!
その勢いのままドードーの首を切り飛ばした!
バビルサが突進してきた!
恭はヒラリと飛び込み前転でかわして、方向転換に手間取っているバビルサに剣を突き刺した!
「ふぅ~、やっぱり大分強くなってる!」
パリーン!
モンスターが結晶化して砕け散った。
戦闘に関して一つ助かったのは、モンスターから血が出ない事。死ぬと結晶化して砕け散るとゆう事だ。はっきり言って血がブシュブシュ出て、皮を剥いで肉を解体して……とかだったら僕には絶対に出来ない。
この辺はゲーム的で助かった。
砕け散ったモンスターが、運が良ければディルとアイテムを落とす。これこの世界の常識! らしい。
「5ディルとバビルサの牙かラッキー! これは、きっと売れる」
恭は拾って袋に入れた。
モンスターを倒した時にアイテムを落とす確率は、2~3割もっと出にくいレア物もあるみたいだ。
「きっと町の中にもモンスターいるよな。……まあ、この調子なら大丈夫か!」
恭はフリント村廃墟に足を踏み入れた。
村をざっと見回したが、恭の記憶にある村はそこには無かった。
村の奥に防空壕みたいな穴がある。
「こんなのゲームに無かったぞ。何かちょっとずつ違うんだよな」
洞穴の中を覗いてみたけど、結構深いかもしれない。耳をすましてみたが何も聞こえない。
「魔物の巣かと思ったけど。モンスターの気配はしないな。……暗いな」
…………。
「や~めた。真っ暗じゃどうせ何があるか分からないし入っても無駄だし」
決して暗いのが怖い訳じゃない!
恭はあっさりフリント村をあとにした。
来た道を戻り、もう一つの道を進む。
ただ進む……。
ひたすら進む……。
「……遠い。まだ着かないのか」
こんな距離をゲームとはいえ、勇者に行ったり来たりさせてたのかと思うと、少し悪かったなと感じる。
芝生の様な毛足の短い平原。遠くに連なる山々。最初こそ感動したが、変わばえしない景色に飽き飽きしてきた。
二時間程(時計は無いので気持ち)歩くと、左手に小川が見え。ようやく前方にこじんまりとした城が姿を現した。
「あれがコーラル城か!」
恭は急に元気になり、走って城に向かう。
近づいて行くと、高い石壁の周りを三メートル程のお堀りに囲まれて、コイ的な魚が泳いでいた。水は川から直接お堀に流れ込む仕組みのようだ。
正面に吊り橋がかかっていて、巨大な鎖が壁から繋がっている。
その横に鎧を着て槍を持った男が1人立っている。門番だろう。
「近くで見るとデッカイな! 人もリーフ村よりは居るみたいだし」
吊り橋を渡ると門番が。
「おぉ、冒険者など久しぶりだ! ようこそ、コーラル城へ」
と話かけてきた。
「あっ、どうも……こんにちは」
眉毛が無いだけで凄い威圧感。やっぱりモンスターを威嚇するには、この位しなきゃダメなのか?
「すいません。ギルドは何処に……」
「ギルドなら入ってすぐのそこだ! 看板がかかってるだろ? 連れて行ってやろうか?」
見た目より優しい人の様だ。
「だ、大丈夫です! 一人で行けます。ありがとうございます。お邪魔しました」
反射的に何度も頭を下げてしまった。
恭はコーラル城下に足を踏み入れる。正面にコーラル城があり、規則正しく並べられた石畳が、真っ直ぐ城まで伸びている。
石畳の両側には何かしらの店だろうか、何軒か建ち並び。まばらではあるが品物を手に取る人や、立ち話している姿もある。リーフ村の数倍は人口がありそうだ。
店はあとでゆっくり見るとして、ギルドを探す事にする。
探す事もなく。左側に他の建物より少し大きめの建物にギルドと書かれた看板を見つけた。
窓も無くブロックを積み重ねた建物。重厚な木の扉に付いている鉄のワッカを扉を叩く。
コンコン。コンコン。
「はぁ~い、どうぞぉ~」
と声が返ってきた。
こ、この声は!
「この声は、絶対に綺麗なお姉さんだ! 間違いない!」
扉を勢いよく開けた。
「いらっしゃ~い! 何かご用意かしら~?」
中は薄暗くランプの炎が揺れて怪しい雰囲気。十畳程だろうかテーブルと椅子が3セット。よく見えないが、一席には誰か座ってる様だ。
正面に長いカウンター。近づいて行くと、長い髪の綺麗なお姉さんがいた。
「あ、あの……パンティーを! 違うちがう! ぱ、パーティーを組む仲間を探してるんですけど!」
緊張する。
「いゃん、パンティー欲しいのぉ~?」
ニコッと笑ったお姉さんの口元は、片八重歯で可愛い。無条件でタイプ。
「えっ、いや!違がくないんだけど!違くて!欲しいけど!そうじゃなくて!パーティーを…」
お姉さんは大きな胸を揺らして少し笑うと。
「フフッ、分かってるわよぉ。可愛いから、からかったのよぉ。パーティーね」
や、ヤバい。何なんだこの異常な色気は……。最早このお姉さんとやりたい! じゃなくて、パーティーを組みたい!
「は、はい。出来れば強い方を……」
お姉さんはカウンターの下から、ノートを取り出しパラパラめくる。風に乗ってフルーティーな甘い香りが鼻をくすぐる。
「強い人ねぇ。て言っても、今2人しか登録してないからなぁ……。一人はおじさんで、もう一人がそこにいる人よぉ」
お姉さんが指差す方を見ると、さっき人がいたテーブル。
その影がスッと立ち上がりこちらに歩いてくる。徐々に姿がハッキリしてくる。
――こ、これは!! お姉さん以上にヤバいかも!
牛の様な角の生えた兜を被り、赤い胸当てにパンツ。
危険なのは……お、おっぱいが半分以上出ている!! 鼻血が出そうだ。お姉さんとは違う甘い香り。
「坊や! あたしとパーティー組むかい?」
喋るとかなり男っぽいが、ボン・キュ・ボンに切れ長の目。身長は恭よりも高そうなので170センチって所。こちらも美人で、しかも巨乳!! レベルは9か。
「む、胸が出てますけど…」
女はチラッと自分の胸を見て。
「いいんだよ、動きやすければ! そんであたしとパーティー組むのか組まねぇのか、どっちなんだ!」
どうやらかなりのせっかちさんみたいだ。
「ぼ、僕でいいんですか? レベルは見ての通りですけど……」
「構わねぇよ! チョット旅するのに話相手が欲しいだけだからね」
「じゃ、じゃあ…ぜひお願いします!」
「ああ、よろしくな! あたしはジュネってんだ」 そう言って手を恭の方へ出した。
「ぼ、僕は……恭って言います。よろしくお願いします!」
しっかりとジュネの手を握った。
こうして恭は危険な香り漂うおっぱい……ジュネとパーティーを組む事になった。