【結末】この想いも宙に舞う
※自殺の描写あり※
あまりにも零れてしまったその想いは、掬いきれなかった。
この紐に死を手伝ってもらうんだ、と心の中で唱える。一つ一つ丁寧に結んでいく、1度きりの紐。この仕事をこなしてもらわないと困る。
紐を掛け、首に通そうとしたが、棚に飾ってある小学校の卒アルを見つけて生き返るように駆けつける。卒アルを慎重に開くと、早速想い出が蘇ってきた。感情輸入が早い、心の奥と共に目の奥も熱くなる。集合写真に水滴が打ち付ける。あの時の私を写真越しに殴るように。ふと音楽をかける。最期に聴く音はゲームのBGMにした。これが好きと言う訳でもなく、他がなかったからだ。
涙を拭う暇もなく急いで紐にゆっくりと通す。髪が 所々引っ掛かって頭に来る。ギチチ、と音が鳴っているがそんなことも気に せずに準備を進める。最期に観る景色は部屋にした。斜め前の想い出の品が見えるように角度も決めておいた。
気づいたら椅子を蹴り、身体を浮かしていた。意思もなく、ただ単に。私に希死念慮は存在した。正解を導き出せて快く思う。時々前を見る。何度も見てきた景色。再び俯くと、液体が何粒も零れ落ちていく。この結末を望んでいたのに何故涙がでてくるのだろう。苦しい。鼓膜に張り付く音楽は盛り上がっている。今の私を皮肉っているみたいだ。苦しい。時々音楽以外も聴こえてくる。意識が朦朧とする。心臓から全身まで血が流れている気がしない。苦しい。血管から血液が滲み出て破裂する感覚がする。ふと手に見える血管には血液は流れているが、冷えているように見える。苦しい。きい、微かに聞こえる紐の音。うるさい音楽。苦しい。 首の神経が切れた気がする。前を向くことはもうできない。苦しい。身体の揺れも少しずつ無くなる。走馬灯が流れる。苦しい。私を救って私を殺した人物。 苦しい。走馬灯と共にハーモニーが奏でられている。最期に君の笑顔が見える。苦しい。たった1年間過ごしただけなのに、走馬灯を独占するなんてずるい。苦しい。君は最後までずるい人間だった、好き。苦しい。やっぱり最期に想いを伝えたかった。苦しい。中断したい。必死に 藻掻く。苦しい。苦しい。後悔してしまったんだ、この選択を。苦しい。今すぐやめたい。苦しい。せめて告白を。苦しい。やめて。苦しい。
目を閉じたらいけないのに閉じてしまった。苦しい。苦しい。もう誰も思い出すことはない。苦しいのが消え去った。何かがちぎれた音がした。頭に衝撃が走る。目を開けて太陽の光を感じたい。瞼に映ったのは暗闇と君だった。
◇
胸から飛び出た想いは地面に落ちた。地面に零れ落ちて、蒸発するように無くなっていく。君のために生きようと意気込んだのに叶えられなかった。君が私のことを特別だと想ってくれるまで待てなかった。そんな想いも気づかれない。君と旅立つ約束すら交わせなかった。そんな私じゃ君と幸せに過ごせない。
初投稿です。
この『貴方だけに向けるハートの矢印』の「主人公」が最終的にたどり着いた未来を描いています。
これからは、その「主人公」の過去のお話を、




