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プロローグ

2/11 プロローグを追加しました。

 夢を見る。

 それは、魔力もなしに戦う男の夢。


 焼けた木と鉄と、乾きかけた血の匂い。


 空は暗く、どこかで金属が擦れる音が鳴っている。


 戦場だ、と直感だけが告げてくる。

 そこを男が駆けていた。

 魔力の煌めきも、術式の光もない。

 あるのは、ひと振りの刀だけ。

 刃が風を裂く音がする。


 振りは速く、無駄がなく、恐ろしいほど静かだ。


 斬る瞬間、世界から音を奪っていく。

 強い。

 ただそれだけが、夢の底に刻まれる。


 袖は裂け、手の甲には古い痕があり、それでも握りは微塵も揺れない。

 倒れているのが敵か味方かさえ判別できないほど、地面は黒く濡れている。

 男はふと立ち止まり、こちらを振り返る。

 顔はよく見えない。

 けれど目だけが、あり得ないほど澄んでいた。

 その目が、まっすぐに言う。


 ──強くなれ。


 命令ではない。

 もっと別の、抗いようのない何か。


 手を伸ばす。


 ──しかし、届かない。


 この夢が、情景が、薄れて消えていく。  


 ──強くなれ。


 それは、約束だ。

 男は微かに笑ったように見えた。

 笑みというより、ようやく終わりに辿り着いた者の安堵に近い。

 遠くで、誰かが叫ぶ声がする。

 風に掻き消されて、言葉の形だけが残った。


 それは、かつて最強と呼ばれた刀使いの夢だった。




 

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