0.6.1.4 ポトフちゃんと食べ盛り
「「いただきます。」」
最初に手を伸ばしたのはからあげ。ザクッとした歯ごたえのある衣の先には、プリっと弾力のあるジューシーなお肉。溢れ出す肉汁もたまらない。サクッと軽いからあげも、両方のいいとこ取りなハイブリッドからあげも、うんま~い!
おまけに、レモンをかけると、これまたさっぱりして美味しい。いや〜ご飯がすすむわ。
「美味い!少しづつ食感が違うのは、粉の違いか?」
「ですね。ザクザクして硬めなのが片栗粉、サクッと軽い食感なのが薄力粉です。」
うさちゃんはからあげたいそう気に入ったようで、お米と交互にもりもりと頬張っている。食べ盛りの学生みたいでカワイイ~!
お次はブタカツ。からあげとは違ったサクサク感のある衣がこれまたいい。とろけるような脂と、旨みの強い赤身をしっかりと抱え込んでいる。
合間にキャベツをつまんで、揚げ物続きで油っこくなった口内をリフレッシュ!そしでまたブタカツを食べる作業へもどる。
うさちゃんも、私を真似てブタカツの合間にキャベツに手を伸ばすが……?
「……キャベツって食べなきゃダメか?」
何とも言えない表情で咀嚼しているし、明らかにフォークの進みが遅くなった。あんまりお口に合わないみたいですね。
「食べなくても大丈夫ですよ。苦手なら、アイテムとして使用して消費すればいいだけですから。」
「そう、だな……せっかく作ってくれたのに悪い……」
「いいんですよ!現実にあったら食べた方がいいかもしれないですけど、ゲームの中なんだから嫌いな物は無理して食べなくていいんです!」
そう伝えると、ホッとしたようにブタカツを食べ始めた。ニコニコとほっぺを膨らませちゃって……カワイイ!いっぱい食べて健やかに育て……!
そして、ステーキ。パサつかず、かといって生々しすぎずの絶妙な焼き加減。口へ運ぶと、肉らしい弾力を残しつつも、歯を立てれば簡単に千々になるほどの柔らかさを堪能出来る。そして、顎を動かす度に、中に閉じ込められた肉汁の旨みが口内を侵食していく……
「ん?ちょっと赤いな。肉は火を通さないと駄目なんじゃなかったか?」
「ブタとトリはそうですね。しっかり火を通す必要があります。ウシカボチャはこのぐらいでも大丈夫です。」
「そうなのか。ん……分厚いから焼き肉より食べ応えがあっていいな。」
ふーむ、このウシカボチャを先に知っちゃったら、ブタもトリもレアで食べちゃう人いるかもな……まあ、ゲームだし別にいいかな……
いや、デメリットをつけるか。生食アウトなやつにはデバフやスリップダメージを受ける毒効果。毒性が消えれば火が通ったって指標にもなるしいいかも。うん、後で改造しておこう。
そして最後の料理を盛り付け。お椀にご飯を控えめに盛るよ。
「ご飯の量が少なくないか?」
「ふふふ。これでいいんですよ。」
そこへモモ肉とタマネギの煮込みをドバーッとかける!これで『ウシ丼』の完成!
醤油をベースに甘辛い味付けされたウシ丼の素。ただの砂糖醤油だから、ちょっと物足りないかな?と思ってたけど結構美味しい!
茶色く染まったタマネギは甘く、ザクッとした食感がアクセントになっていいね。程よく染み渡ったツユのかかったご飯もこれまた美味い!
薄いウシ肉でタマネギとご飯をクルッと包んで、口いっぱいに頬張ると、もう、たまりません!
「んん〜!美味い!」
「ああ……この、汁が染みたご飯がまたいいな。」
ふぅ、ご馳走様でした。本当にご馳走だった……
後は細々としたものを作って終わりにしましょう。えーっと、タマネギの味付けと、焼きおにぎりと……
…………
………
……
「ポトフ、お疲れ様。」
「うさちゃんもお疲れ様です。」
さて、そろそろ今日のまとめに入りましょう。
「えーっと、まず、からあげは屋台でも売れそうですね。」
「そうだな。気軽に食べられそうだ。」
「それから……焼肉、ブタカツ……今日作った料理は、お店で売る時、単品売りとセット売りの2つ用意したいです。」
「セット?」
「はい。ご飯と一緒に出すんです。ただ、その場合はお店の中で食べてもらうことになると思うんですけど……美味しかったでしょ?」
「めちゃくちゃ美味かった……ああ、確かにご飯は必須だな。」
つまり“定食”です。そのうち汁物も追加したいな。
注文する時に部位やソースを選択できたり……いや、それは隠し要素ってことにして良いかも。基本的には今日使った部位で出して、こだわりのある人は口頭で部位を指定できる……知る人ぞ知る裏メニューって感じで。
今日のお仕事はこんなところかな。
最後に、何やらうさちゃんからご相談があるようです。
「あー……ポトフに1つ頼みたいことがあってな。」
「はい。何でしょう。」
「嫌だったら断ってくれていいんだが……」
そう切り出してお願いされたのは、水中の樹、改め『神樹』の化身……のモデルになって欲しい、ということ。厳密には、ポトフのアバターを土台にしたいらしく、私の顔をいじることになるから可否を問いたいんだそう。
なぜ私?と聞けば、私の仕事の様子を覗いてたライターさんに、インスピレーションが降ってきたらしい。何を見たんだろ……
ともあれ、ポトフを使うのは問題ない。でも一個だけ……
「……殻の人にも化身みたいなのっているんですか?」
「そっちは俺がモデルになる予定だ。」
「だったらやります!」
うさちゃんが相手なら、やらない理由はない!自由に使ってください!!!
それじゃあ、今日は解散しましょうか。
「明日も会えるか?」
「はい!明日はふわふわの絨毯を堪能してください。」
「ははっ!そうだな!」
明日はうさちゃんにミサンガを渡して……リビングでまったりすごそう。たまにはのんびりしてもいいよね。
それじゃ、本日もお疲れ様でした!




