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0.2.3  ポトフちゃんはいっぱい食べたい

 満腹度──

 ゴインキョさんに、ポーションでちょちょいのちょいと言われたシステム。ポーションなんかで腹が膨れるか!と思っていたのだが……


「ほら、たくさん水を飲むと腹がタポタポになるじゃろ?」

「なりますねぇ〜……」


 なるわ。即オチである。


「戦闘中に回復系の即時使用タイプのポーションを飲むと、このゲージが上昇して、マックスになるとそれ以上は飲めなくなるんじゃ。」

「大量のポーションを連続使用してゴリ押しできなくするためのシステ厶ですね。」

「うむ。理解が早いのう。」


『お腹いっぱい♡』なシステムではなく『も、もう飲めねぇ』なシステムであった。ちょちょいのちょいじゃないよ。

 そもそも、私が早とちりしていたのだが、これは正式には『ポーションクールタイムゲージ』らしい。満腹度はただの通称である。よく見たら端っこに、丸いフラスコみたいなアイコン付いてるし、そういえば、満腹度があるのってサバイバル系のゲームが大半だよね……


「他にはどんなポーションがあるんですか?」

「魔力回復、スタミナ回復、後は各種ステータスにバフをかけるものがあるな。」

「デバフのポーションとかはないんですか?敵に投げつけるような。」

「おっ、いいのう。伝えておくぞ。」


 あっ、敵に塩送っちゃった。ポーションで回復もバフも出来るなら、『ご飯』はどう実装したらいいんだろう……

 むむむ……と唸っていると、


「ポーションと『ご飯』の役割が競合するだとか、そういうのは深く考えんでいいぞ。」

「えっ?」

「……悲しいことじゃが、殆どの、いや、よっぽど奇特な人間でもない限り、この世界で『ご飯』を食べようとする者はおらんじゃろう。」

「……それは……」

「じゃから、その奇特な人間を増やしてやればいいと思わんか?」

「へ?」


 ちょっと凹みかけてたのに、何か言い出したぞこの人。


「チュートリアルの過程で『ご飯』を食べさせるんじゃよ!口に合わなければ、ポーションを飲めばいい。味覚をオフにする機能もある。美味かったなら他の『ご飯』にも手を伸ばすじゃろう!」

「そ、それは……」

「断言してもいい!プレイヤーの過半数が『ご飯』の虜になる!わしがいい例じゃ!」


 いいのかなぁ?まぁ……いいか。


「そうですね、とりあえず、満腹度のこともっと詳しく教えて下さい!」



 第一に、満腹度の上限は100である。ただし、99のときにポーションを飲むと、上限を越える。例えば、満腹度10のポーションなら109まで上がる。


 第二に、この満腹度は1秒で1減少する。



 こうしてみると、ほんとにポーションのクールタイムの為だけって感じ。戦闘中にもガブガブ飲む想定だろうか。でも、これをご飯に適用したとして、100秒でお腹ペコペコになるって、う〜ん。


「私の考えてる『ご飯』って、もっと腹持ちがいいんですよ。それに、戦いながら食事なんてできないでしょ。」

「リンゴなら戦闘中でも片手で食べられんかの?」

「リンゴは……そうでしょうけど、私はもっとゆっくり食べたいです。この森の中で大きな木の根っこに座って、木漏れ日を浴びて、風にあたって……そうやってのんびり食べるの、良くないですか?」

「……そうじゃのう。」


 ゴインキョさんはキョトンと一つ目を瞬かせると、ゆるりと眦を下げた。




 それからぽつぽつと話し合って、いっそ、満腹度は気にしなくていいんじゃないか?ポーションと共存出来るようにすればいいんじゃないか?と言う話になりまして。


 とりあえず『ご飯』の仕様はこうなった。


 1.効果時間は最長半日。同じご飯を2つ食べると、効果時間が加算される。


 ちなみにこのゲー厶の時間はリアルと連動してる。ポーションのバフは一律30分なので、そう考えるとめちゃくちゃ長い。

 この、同じご飯『卵焼き(甘)』『卵焼き(塩)』みたいなのは別料理扱いになる。

 ……この例えぜんぜん伝わらなかったけど。


 そして、効果時間の加算には上限がある。例えば、60分効果のある食べ物を食べた後、30分経ってから同じものを食べると、残りの時間は60分になる。つまり、本来の効果時間を超えることはない。


 2.バフは5つまで。ポーションとは別枠。回復量は多め。戦闘中の使用不可。


 バフは重ねがけできるようになっており、攻撃力+1の果物と、攻撃力+1 の野菜を食べると、合わせて+2される。

 回復量が多めなのは、戦闘中以外での回復ならクールタイムなくていいんじゃない?ってことらしい。

 ちなみに、5つまでなのは一汁三菜プラスデザートなイメージだ。


 3.満腹度の下に『ご飯』バフアイコンが追加される。6種類目のご飯を食べると、既にあるバフに上書きするかどうかの確認ポップアップが出る。


 バフアイコンに触れると、バフの確認、ロック、消去ができる。あらかじめロックしておくことでこのポップアップを消すこともできる。初期設定では出現するよ。




「大枠はこんな感じですかね。」

「そうじゃのう。後はテストしながら調整していけばいいじゃろ。」


 というわけで早速、ゴインキョさんを先導しながら、いつもの場所へリンゴを取りに行く。たわわに実ってるね!


「おお、たくさんあるのう。」

「ゴインキョさん、そこの目の前の上の方にある真っ赤なやつ取ってください。」

「これか?」

「それです!」


 背の高いゴインキョさんに、高いところにある真っ赤で美味しそうなリンゴをとってもらう。

 私じゃ届かないからね……。渡されたリンゴを割ってみると……


「わ!蜜入り!」

「蜜入り?」

「この、種の周りの所、黄色くなってるとこがあるでしょ?これはリンゴが熟してる証拠なんです!」

「ふむ?」


 論より証拠!いざ実食!シャクッ!っと景気のいい音を立ててかぶりつく。

 ん!甘〜い。さっきのよりも甘い。酸味も控えめだ。歯を立てるたび、果汁がジュワーッと口の中に広がって……んまーい!

 ゴインキョさんを見上げるとちょうど口をつけるところだった。


 シャク……シャク……と黙々と食べている。


「……」

「……どうです?甘いでしょ?」

「……なるほど……甘酸っぱいの“甘い”の部分はこれか……」


 ご理解頂けましたでしょうか。


 それでは、これにパラメーターを設定して行きましょう!あ、ちなみに重さは自動的に決まるよ。



 まずは品質。この世界で作られた作物や武器、ポーションなどの製作物のほとんどに設定されており〈粗〉〈並〉〈良〉〈優〉〈極〉の5段階評価になっている。ただし、一部の特殊なものには付いてなかったりする。いわゆるユニーク装備ってやつ?


「これは……〈良〉かな」

「ふむ。その心は?」

「う〜ん、少なくとも最初のリンゴよりは上だと思うんです。それでいて、もっと蜜の入ったリンゴもあると思うんです。」

「もっと……蜜が……!」


 緑の手と植物成長を使って品種改良を繰り返せば、きっと“私が最初に食べたリンゴ”の味も夢じゃないよね!



 お次はバフ。上がるのはやっぱり知力でしょ。

 段階ごとに1増える感じでいいかな。〈粗〉が+1で〈極〉が+5。


「これを基準にすると、上と下でシンプルに5倍の差が出ますね……加工前の素材の状態でこれだから、料理にしたら結構バカにならない数値になっちゃいそうです。」

「バカにならん数字でええじゃないか。そのほうが新規プレイヤーも食いつくじゃろ。」

「変人を増やす話し続いてます?」

「『ご飯』の虜にする話じゃろ。」


 それから回復量。これは体力、魔力、スタミナを固定値の10と上限の5%を回復する。これも品質によって変動する。〈極〉で25%。割合回復をつけておけばレベルがあがって体力とかの数値が増えても使えるよね?


「たしかに、割合回復はいいかもしれんのう。」

「これ、3つとも回復するってちょっと破格すぎますかね?」

「3つとも回復できるのは、現状最上級のポーションである『エリクサー』か、宿屋に泊まるかの二択じゃな。『エリクサー』は早々手に入るものでもないし、いちいち宿屋に行くのも手間じゃ。どうせ戦闘中には使えんのじゃから、フィールド上で手軽に回復できても問題はないじゃろ。」


 後は……継続時間かな?……リンゴ一個でどれくらい持つかな。


「とりあえず……1時間に設定しておきましょ。あんまり頻度が高ければ伸ばします。」

「そうじゃな。」



 さてさてこれで出来上がりかな?

 パラメーターを適用できたみたいなので、とりあえず一つ取ってもらおう。むっ!美味しそうなリンゴ発見!


「ゴインキョさん!あれ!あれ!」

「わかったわかった……ん?」

「どうしました?」


 なんだか変な反応。差し出されたリンゴを手に取ると、アイテムの詳細ウィンドウが出てきた。実装されてるとこんな感じなのね。



『リンゴ』〈未〉〈未〉〈未〉〈60分〉 重量:0.32G

 “フレーバーテキスト”



 ???未ってなんだ?3つもある。


「なんですかこの未って?」

「それはな、まだ設定されていない項目なんじゃ。」

「設定……ってさっきしたんじゃ……?」

「いやつまりじゃな、このリンゴは〈並〉にも〈良〉にも似ておらん外れ値……すなわち〈粗〉〈優〉〈極〉のどれかということじゃ。」

「!!!!!」


 割ります!オラッ!断面は!??


「蜜入りです!!!」

「よし!」

「食べます!!!」

「よし!!」


 すぐさまかぶりつく!うんま〜。甘〜。ふくよかな香りが鼻に心地よい。

 私とほぼ同時にかぶりついたゴインキョさんも目を閉じて堪能している。


「……〈優〉です……」

「……まだ上があるのか……」



 リンゴの余韻に浸っている内に終業時刻を告げるアラームがなったので本日の業務は終了です……

 お疲れ様でした……



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