0.2.2 ポトフちゃんはゲームの理解を深める
ゴインキョさんはリンゴを気に入ってくれたらしく、残りのリンゴを口に運ぶ。が、
「あっ、待って!」
「むっ?なんじゃ?」
「その黒いのは種なんで、食べちゃだめです。」
「これがか?」
体がデカけりゃ一口もデカイ。二口でリンゴの中心に到達しかけていたので、慌てて止める。
「そうです。後でリンゴの木を育てたいので、取っておいてください。」
「ふむ…………………」
あっ!ゴインキョさんが、虚無を見つめる猫ちゃんみたいになってる!
多分、他のスタッフさんたちと話し合ってるんだろうなぁ。目が一定のところを追ってるように見えるし。てっきり未実装の所を突っつかれて、うろたえてるのかと思ってた。ごめんね。
「種をアイテムとして、取得できる様になったぞ。」
「種がないなら、植物成長系のスキルってなんの為にあったんですか?」
「いや、種自体はポーションに使う薬草と、その素材に使う植物のものがあるんじゃ。」
「それ以外の植物は完全に背景ってことか……」
「これからはそうじゃなくなるじゃろ?」
「!はい!」
これからはこの植物たちがメインコンテンツになるんだ!(そこまでは言っとらんぞ)
「それじゃあ、これは取っておくからの。」
ちゃんと身の部分だけ食べ終えたゴインキョさんはそう言って何かに手を触れた後、種を虚空に突っ込んだ!も、もしかしてそれって!
「あっ!それ!教えて下さい!持ち物収納するやつ!」
探してたやつ!リンゴを探しに行ったとき思ったんだ、このゲームインベントリ無いのかな?って!
周りを見渡してもないから、音声認識かな?と思って、「インベントリ」とか「収納」とか言ってみたけど、何も起きなかったんだよね。
「ああ、これはまず、視界の左下の方にある、かばんのアイコンにピントを合わせるじゃろ?」
「左下……には何もないですね。」
「無いか?下にある、体力バーからまっすぐ左の方に。」
「体力バーも無いです。」
おっと?なんだか噛み合わないぞ?助けて開発者〜!というわけで再び猫ちゃん。
「……む。どうやら設定が『没入感モード』になっとるようじゃ。」
「あー……画面上のUIを消して、現実と同じような視点にする、みたいなやつ、でしたっけ?」
「そうじゃ。本来の挙動は、キャラをつくるところまでは没入感モードで、それを終えてゲーム内に降り立つと、そこで通常モードに切り替わるはずなんじゃが、切り替わっておらん様じゃの……うーむ……原因はなんじゃ……?」
バグかなぁ?なんて思ったけど、一つ思い出した。私の挙動がちょっとズラされたことを。
「……一個、これが原因じゃないかなって言うのがあります。」
「おお!なんじゃ?」
「キャラメイクしたあと、最初に行くのは街の側なんですよね?」
「そうじゃ。」
「私、森の中で産まれたんですけど。」
「……そうじゃな。」
結論。正解でした〜!切り替える判定が街の周囲にあるらしいで〜す!
おかげさまで、街に近付くと没入感モードが勝手に解除されるバグがあることが発覚&修整されました。みんな普通モードでやってるのね。
それから、音声認識。ちゃんと認識されてたみたいで、傍から見ると閉じて開いてを繰り返してたみたい。──これもスタッフさんに目撃されていた。──これも、没入感モードの影響で見えなくなっていたので修整。
というわけで、通常モードに直してもらい、UIが表示されるようになったぞ!これだけでザ・ゲームって感じ!
基本的にうっすら見えていて、意識を向けるとはっきり表示されるようになっているので視界の邪魔にはならないようだ。
体力、ヨシ!魔力、ヨシ!スタミナ、ヨシ!これは多分満腹度?ヨシ!
そしてかばんアイコンの横には『0.1/18』という数字が。これは恐らく、スタミナの数値だけ持ち物が持てるということだろう。すでに何か入ってるな?
「《インベントリ》」
早速使ってみる。ポコンとポップアップしたインベントリ画面。『ポトフの装備一式』『初心者の杖』そして『ポトフの装備発注書』なるものが一覧になっている。
上部にはタブが並んでいてここから絞り込めるみたいだ。ぽちっとアイテム名に触れてみるとアイテムの画像と説明文の書かれたウィンドウが出てきた。
〈E〉『初心者の杖』〈知力+2〉重量:0.1G
“魔法使いになりたいあなたへ贈る杖。”
『ポトフの装備一式』重量:0G
“ポトフがはじめから着ている装備。スキンとして装備することができる。”
『ポトフの装備発注書』重量:0G
“専用の施設で使用すると、ポトフの装備一式の見た目を自由にカスタマイズできる。消費されない。※別途素材が必要。”
とりあえずつらつらーっと目を通してみる。
頭にある〈E〉は装備中ってこと?杖?どこだ......さわさわと身体をまさぐってみると、ふわふわの綿毛を発見!背中側にあるベルトを通す穴の所に刺さってた!横に移動させとこ。
私の名前のとこは、プレイヤーネームかな。
この装備一式は、今着てるやつだね。特殊なアイテムみたいで、重量も0だし装備品とは別にカテゴライズされてるみたい。それで、発注書を使って見た目を変えられる……と。
「で、どうやって入れるんです?」
「そっちのアイテム名が並んどる方に、アイテムを持ったまま突っ込むんじゃ。」
「ほうほう、取り出すのは?」
「一覧から選んで、右側の説明欄に手を突っ込むと取り出せるぞ」
リンゴの種を手に持って、突っ込む!お、手から消えた。そして種を選択して、説明欄に手を突っ込んで取り出す。これ……なんか……
「箱の中身は何だろなゲームみたいですね。」
「確かにそうじゃな。」
「素手で触れたらマズイものって実装される予定あります?」
「あー……要修整ってことじゃな?」
というわけでちょっと変えてもらった。アイテム欄で選択して、説明欄の画像に触れる。すると、選択したアイテムがホログラムみたいに空中に浮かぶのでそのまま触れると実体化する。という形になった。
このゲーム、一応ちょっとだけ痛みを感じるからね……最高設定でも、ウレタン棒でぺしぺしやられるくらいの痛みらしいけど。マグマだって、せいぜい長く浸かるのがキツイぐらいのお湯だとか。
さて、杖を見つけて気になった『装備』。これはステータスウィンドウの所にあった。
左半分にはステータス。知力が3から5に上がってるから装備品が適用されてるね。
右半分には装備品スロットが表示されている。
武器は4つまで。一つには杖が入っている。大きい武器や、弓矢などの両手が塞がる武器はスロットを2個つかうらしい。いつでもどこでも切り替え可能。
防具とかの装備品は、頭、胴体、腕、下半身、足、アクセサリーを5個の合計で10つけられる。
一番下には〈初期スキンを適用する〉〈創作スキンを適用する〉というチェックボックスがあり、既に初期スキンの方にペケがついている。創作スキンってのはつまり服を買えるってことかな?
チェックマークを外してみると、特に何も起こらない。服はそのままだ。初期スキンは全裸でもあるってことだな。が、しかし、杖がただの木の棒になってる!私のふわふわ梵天ちゃんが……チェックマークは戻しておこう……。
さて、システム周りは理解できてきたので、今、私が最も懸念していることであり、これから先、永く付き合うことになるだろう要素である、
「満腹度について聞きたいんですけど。」