0.4.3.1 ポトフちゃんとモーチの実
ローラ様を見送った後は地下へ。
忘れないうちに砂糖に色を付けておこうか......色......三温糖とかザラメは茶色っぽい感じだよね、存在するか分からないけど。被らないように別の色、でも青や緑はちょっと......似たような黄色系で違う色......レモンイエローにしてみようかな?
「どうですかね?」
「ほお。なかなか分かりやすくて良いと思うぞ。」
ローラ様に貰った塩と並べて比べてみる。うん、全然違うね。単体で見ても多分わかると思う。他のスタッフさんにも見てもらってOKが出ました。よかったよかった。これで思う存分砂糖がつかえるぞ。
さてここからは今日の作物作りです。
水球に手を添えて思い浮かべるのは乳白色な液体。どんな皮に入れようかな……液体の入った植物……ココナッツ?ヤシの実?うん、そんなかんじのがいいかもしれない。あの内側についてる白い果肉の部分はバターにしちゃおう。他に牛乳からできているものといえば……うーん検索検索っと。
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………
……
チーズ、ヨーグルト、練乳……このあたりは加工品になるかな。
牛乳というか、生乳だけでできて、このヤシの実(仮)に入れられそうなものは……生クリーム?機械に頼らない作り方だと、生乳を放置すれば分離して浮いてくるんだって。なるほど脂肪分だからかな?
……実ができて大きくなる過程で中に生乳が溜まって……熟すまでの時間でクリームが浮いてきて……うん。中身はそんな感じでいこう。ぱんぱんに詰めるんじゃなくて九分くらいまで注いどこ。
皮はやっぱりホルスタインな白黒模様。白をベースに熟してきたら黒い模様にでてきてもらおう。そのうち牛肉も作る予定だからそっちを黒か茶色にしするか。
皮とココナッツの間の......これも皮?果肉?部分。結構分厚くてこれがクッションみたいな感じなのかな。ううん……せっかくだから、ここも何かに変えてみる……?
うんうん悩んでいると、ヤシの実の断面図を見てふと思い出した。
(アボカドに似てる……)
中の皮は果肉に、ココナッツ部分は種に見えてきた。そういやあいつ、森のバターとか呼ばれてたっけな……
バターは既に就職先が決まっているので他のものを入れたい。もう決めました。加工品とか知ったこっちゃないです。チーズを入れます!肉は流石に入れたくない!
でも種類いっぱいありすぎ〜!モッツァレラ、ゴルゴンゾーラ、チェダー……うう〜ん、どうしよ。
やっぱ生モノっぽい感じだしモッツァレラチーズを入れるか。弾力もあるしクッションにもなるんじゃない?知らんけど。ココナッツアップルのほうがモッツァレラっぽい?それはそう。
内側の皮、ココナッツ部分のあのガサガサした茶色いとこは削ります。ツルッとアボカドの種みたいにします。種……ヤシの木の種は……ココナッツがそうか。そのまま植えてね。芽は出るでしょ。
「ふぅー……完成です!」
「おお!お疲れさん。今日は何ができたんじゃ?」
「これは……『モーチ』の実です!」
「これまた大きいのう……して、中身は?」
「牛乳とその加工品を詰め込みました。」
「なるほど牛乳か……」
私の頭よりもおっきなモーチの実。牛乳は卵とか豚より抵抗ないよね。人間だってお乳を飲んで育つわけだし。まあこの世界じゃ、産まれたての赤ちゃんの頃から、サプリを溶かした栄養水を飲まされて育つんですけどね。
ちょっと遅くなっちゃったけどお昼休憩してから植えに行きましょうか。
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畑に来ましたよ〜。大きな木になる予定なので端の方へ……流石にココヤシそのままの成長性でど真ん中に植えちゃうと、クソデカランドマークが出来上がってしまうのでちっちゃくしますよ。
どでかいモーチの実を穴ほって埋めます。育て〜育て〜。
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.........
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「ちょっと大きすぎましたかね……」
「流石に手が届かんのう。」
30メートルくらいまで育つって書いてあったから、いくらなんでも大きすぎるよね……と思って5メートルくらいにしたんだけど……感覚が麻痺してたね……これでもまだでかい。ちゃんと実は出来てるみたいだけど、ゴインキョさんが背伸びしても、杖でつつこうとしても届かない。
ぽぽ達もなんとか動かそうとしてくれてるけど重すぎるのか微動だにしない。ああ~非力~。戻っておいで気持ちだけで十分だよ……
「ふむ……魔法を使って落としてみようかの。」
「ゴインキョさんは何の魔法が使えるんですか?」
「ふぉっふぉっ。なんてったって『世界樹』じゃからな。どんな魔法でも使えるぞ。」
「おお~!どんな魔法でも!」
ゴインキョさんの魔法!一歩下がったところで見守ります。スパっとやっちゃってください!
「コホンッ。……それではいくぞ……〈風刃〉!」
ゴインキョさんが杖をモーチの実へ向けてスキル名を唱えると……
「「あっ。」」
杖の先から出た風の刃がモーチの実を切り裂いた!ぼたぼたと生乳……モーチチ……モーチミルクが垂れ流しだ……
「ざ、斬撃はマズかったですね......」
「つ、次は〈水弾〉をぶつけてみるか......」
「なにしてんだオマエら?」
「「ローラ」様!」
どう収穫しようか試行錯誤していると、後ろからローラ様に声を掛けられる。おかえりなさい……なんか衣装が変わってる!
「ローラ様、なんかすごくおしゃれな服に変わりましたね!?」
「オウ。73トコに服飾班が来ててな、ついでに色々いじられちまった。」
「すっごくかっこいいです!」
「ハハッ!ありがとな!」
服装以外にも、頭にはターバンが巻かれ羽やビーズの装飾がつけられたり、顔やさらけ出されている体表には白い戦化粧が施されていてかっこいい!
「ん?もしかしてアレが今日作ったヤツか?」
「そうです!高いところにあるのどうやって採ろうかって話してました。」
「……なんか一個割れてんな?」
「〈風刃〉で落とせんか試してみたんじゃが……」
「ナルホドな……じゃあコイツに採ってきてもらうか。」
コイツ?そう言ったローラ様の肩の上にひょこっと現れたのは……
「サル?」
きゅるんと正面を向いた目にローラ様の肩を掴む指先。肩乗りサイズに不釣り合いなほど尻尾は長く、ローラ様の腰の辺りで先っぽが揺れている。
「ああ。リスザルの『スーザン』だ。ほら、アレを採って来てくれるか?」
「キッ!」
リスザルよりも耳の感じとかワオキツネザルっぽいけどな……尻尾は縞々じゃないけど。とか考えていたら、スーザンはヒョイヒョイっと木を登ってあっという間にモーチの実の所へ。
「キキッ!」
「おっ、落としてくれるみたいだからチョット離れとこうぜ。」
「はい!」
私達が離れたのを見計らって、スーザンは器用にモーチの実をくるくると回すと……捻れた軸がちぎれ、モーチの実が落ちてきた!
「おお〜すごーい。」
あっ!ぽぽ達もすごいよ!賢くて可愛くて私の最高の癒やしだからしょんぼりすることないよ!
「毎回アタシらがいるわけでもねーし、ポトフだけでも採れるような方法があるとイイんだけどな。」
「そうじゃのう。木に登れたり……ああ、飛べたりする仲間がいるといいかもしれんのう。」
スーザンが実を採りおえて降りてきたので、地面に落ちたモーチの実を拾いながら、どうやったら私達だけでも採れるか考える。木登り、飛行、ん?
「……私、飛べるかもしれません。」
「ん?」
「オマエが?」
「〈綿毛〉の種族特性で風属性の影響があれば飛べるんですよ。どれくらい飛べるかはわかんないですけど。」
「「ああ〜。」」
そんなのあったなぁって反応。私もすっかり忘れてました。
今日はもうスーザンが採ってくれたので飛ぶのはまた今度......




