0.4.1.0 ポトフちゃん死す
本日は土曜日。お休みの日だけど、レベル上げも兼ねてうさちゃんとゲームで遊ぶよ。
「おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
ログインして家から出るとうさちゃんのお迎えが。お早いですね。外へ出る前にちょっとだけ農園を見ていこう。植えただけの種は大体3〜4日で実が出来るらしい。月曜にはいくつかできてるかな。
小さな蕾がついている作物たちを一通り観察し終えたら、農園を出て街へ行く。
「今日はどこへ行くんですか?」
「ああ、森の街を南から出て正面にある川に沿って、上流にある町へレベルを上げながら向かおうと思う。」
おお、ついに街の外へ!これから行く町の話やら、うさちゃんはこのゲームでどういう仕事をしているのかとか話しながら、南門の方へ向かう。
……視界に入る露店は所々商品が消えている。お肉関係ですね。とか思ってたら。
「あっ!ブタモモ!」
キュートなしっぽが野菜みたいに並んでる!豚と入れ替えたって聞いてたけどこんな感じになってるのか。
「あっちで焼きブタモモも売ってるぞ。」
本当だ!鉄板で焼かれた薄切りのブタモモが、器代わりの大きな葉っぱに包まれてお客さんに渡されている。おお、私の料理が生活の一部になってる……なんだか感動する。
「そうだポトフ、渡しておきたいものがあるんだ。」
「えっ、これって防具?いいんですか?」
「ああ。この辺りのモンスターはそこまでレベルが高いわけじゃないが、流石にレベル1だと厳しいからな。」
南門にたどり着くと、うさちゃんが帽子以外の木の防具一式を取り出した。
レベル上げの手伝いを申し出てくれたり、この装備をくれたり……この人って初心者をキャリーしたいタイプのひと?助かる〜。
と、うさちゃんの手から装備を受け取ろうとした瞬間、
「ん?あれ?」
「あっ、ポトフ!」
指先に温かいものが触れたなと思ったら、膝カックンされたかのようにカクっと地面にへたりこむ。......もしかして私、うさちゃんの手に触っちゃいました?
うさちゃんは、冤罪です!と言わんばかりに手を上げてあわあわしている。触っちゃったんだから冤罪じゃないよ。いや触ったのは私だから悪いのは私なんだけど。
慌てるうさちゃんを横目に、目の前出てきたウィンドウを見る。
【あなたは戦闘不能になりました。】〈町へ戻るまで残り 59:25〉
[救援依頼を送る][復活する(1)]
おお、死ぬとこんな感じなのか……この復活は私の特性の効果だよね。一日一回。
とりあえず復活を選択して、すっくと立ち上がる。うさちゃんに詳しく聞こうっと。
「いやあお騒がせしました。」
「あ、ああそうだった復活持ちだったな。」
「戦闘不能画面のこと聞いてもいいですか?」
「ああ、なんでも聞いてくれ。」
まず、戦闘不能になるとその場から動けなくなり、一時間後に最寄りの街や村の宿へ転送され復活する。ただしお金を半分失う。
次に、救援依頼を送ると、近くにいるプレイヤーに通知が行き、倒れた国の町村にクエストとして張り出される。
倒れたプレイヤーを街まで運ぶと、助けたプレイヤーは『カルマ値』(未実装)が低下し、助けられた側は何も失わない。輸送中はタイマー止まるよ。
このカルマ値は悪いことをすれば増え、善いことをすれば減る。低ければ低いほどいいらしい。お店で割引されたり、クエストの報酬が良くなったりするんだって。
そして、復活する選択肢。これは一部の種族や装備についていて、文字通りその場で復活する。デメリットは特にない。
「悪い、復活回数を無駄に使わせたな。もっと早く伝えておくべきだった......」
「大丈夫ですよ。装備を着ちゃえば触っても死ぬことは無くなるし、私に何かあったらうさちゃんは助けてくれるでしょ?」
「当たり前だ!たとえ世界中の全てがお前の敵になったとしても、俺が死んでも守る。」
「死んじゃだめですよ。私と生きてください。」
ゲームでレベリングするだけなのに凄い重いこと言ってるな......というか世界中を敵に回してもってそれ私がなにかやらかすの前提で言ってる?
気を取り直し、うさちゃんから地面を経由して、装備品を受け取り装着しました。これで触っても安心だね!改めて出発です。
南門を抜け木々の間の道を進むと、大きな川が見えてきた。手前の方は左右に道が伸びていて、真っ直ぐ行くと、馬車がすれ違えそうなくらい幅の広い橋が架かっている。対岸には崖に挟まれた上り坂の道がある。そのずっと先、霞むほど遠くには、山のようなシルエットが見える。
「もしかしてこの向こうが火山の国ですか?」
「ああ。ここからでも火山が見えるな。あの山の周辺には火属性のモンスターが多く生息しているんだ。それから、鉱山があって鍛冶が盛んだったり……あとは、温泉が湧いてたりするな。」
「温泉!」
「今日はお預けだ。」
いやぁわかってますって。単純に、温泉といえば『温泉卵』だな〜って思い浮かんだんだよ。卵も食用ではないだろうし作りたいものリストにメモしておこう。
「こっちの左の道を行くんですよね?」
「そうだ。ただ、道の近くにはモンスターがあまり近寄ってこないから、川沿いの少し外れた所を行こう。」
「わかりました。」
どんなモンスターがいるんだろう。ドキドキするなぁ〜。




