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0.4.0.5 ポトフちゃんと調味料

 味見用のブタモモをテーブルに置き、席についてもらう。うさちゃんは……座れないよね。あ、下に直接座座る?……お客さんになんだか申し訳ないなぁ。


 そういえばゴインキョさんも割と大きい人だから、このテーブルと椅子じゃ窮屈かもなぁ。背の低いテーブル作ってみんなで下に座るスタイルにするのがよさそう。うん。考えておこう。では私も席につきまして。


「いただきます。」

「「いただきます。」」


 まずは一口。カリッ!と軽い食感のあとに香ばしさが鼻に抜け、噛めば噛むほどに豚本来の味と脂の甘みが口の中に染み込んでいく。動物性の油分がたまんね~……動物性かなぁ……?


「こ、これが豚さんの味なのですね……!」

「これが香ばしいってやつか……」


 二人共不思議な顔しながら食べてらっしゃる。


 う~ん改善点は溢れる脂分だなぁ。実際の身体に影響ないとはいえ……たくさん食べると胃がもたれそう。油をきる為の網とバットか、吸い取る用にキッチンペーパーの代わりになるものを作らなきゃな。


 さて、残りの豚を焼いてしまおう。それにしても……


「塩があればなぁ……」

「塩なら私の手元にございますよ。」


 物足りなさにボソッと呟くとななさんから回答が。塩持ってるの!?


「ポーションの素材になるものですから、いくつか常備しております。」


 ななさんは錬金術が出来るらしく、塩以外にも取り出して見せてくれた。これ……胡椒!?こっちは唐辛子、生姜、にんにく……あっ!噂に聞く薬草!これ青汁とかに使われてるやつじゃない!?


「な、ななさん、これ全部料理に使えるものですよ!」

「まあ、そうなのですか?これらにも味を付けられると?」

「そうです!」


 この世界の一部の背景やアイテムはAIで生成されたものだそうで、ポーションの素材もその一つ。薬の素材になるアイテム……と言うような注文で作ってもらったそう。

 基本的に店売りで、国によって値段と品質が変わるんだとか。海に面した街で〈極〉の塩が安い値段で売ってあったりね。


「ななさん、これ、ちょっとだけ貰ってもいいですか……?ブタモモがもっと美味しくなるんです!」

「ふふ。いくらでもどうぞ。」

「ありがとうございます!」


 それでは塩の瓶をちょっと拝借。胡椒も使いたいんだけど粒のままじゃなぁ……と思ってたら、ななさんが乳鉢と乳棒を貸してくれた。


「まあ、これが胡椒の匂いですか?」

「へっぷし!」


 ゴリゴリ潰していくと漂うスパイシーな香り。に、うさちゃんがくしゃみを一つ。匂いだけで?


 ちょっと粗めに挽きおえたら、ブタモモに振りかける。塩だけ、胡椒だけ、両方の三種に分けてみた。とりあえず塩から焼くよ。


「あんまり茶色くなってないみたいだが、ひっくり返していいのか?」

「白っぽくなれば火が通ったってことなので大丈夫です。さっきのは私の趣味。」

「趣味……」


 趣味です。いい感じに焼けたのでお皿に移します。他のも同様に別の皿へ。さあ食べ比べです!


 まずは塩!


「美味……」

「塩のしょっぱさでブタモモの甘みがより引き立ちますね……!」

「汗と全然違うな……美味い。」


 汗って言わないで!次は胡椒。


「スパイシー……」

「んんっ!?舌がピリッとします!?」

「面白い感覚だな。」


 そして両方!


「最高だ……」

「2つ合わせるとより一層美味しさが増しますね……」

「あんなちょっとの量で、こんなに味がつくんだな。」


 初めてのブタモモ料理。いかがでしたか?


「私はやはり分厚く切ったものの方が好きですね。もう少し塩を減らしてブタモモそのものの味を楽しんでみたいです。」

「俺はカリカリに焼いたやつが好きだな。今度は塩と胡椒を振って食べたい。」


 堪能していただけたみたいです。


 ──────────


「そういえばポトフさん、先程出したものは全て料理に使えると仰っていましたよね。」

「そうですね。」

「他のものにも味付けしませんか?」

「やりましよう!」


 とりあえずそのまま食べても大丈夫そうな生姜とニンニクをチョイス。


「薬草は食べられないのか?」

「……薬草、食べますか?」

「そこまで乗り気でなさそうだと逆に興味が湧きますね……」


 薬草はいわゆるケールってやつに似てるんだけど……この世界の人間に“苦味”はまだ早いんじゃいかな……止めはしないけどね。


 まずは生姜の皮を剥いて薄く切って食べてみる。んん辛い。あーでも爽やかな香り。


「ん!これも辛いという感覚ですか?」

「辛いのは胡椒と似てるけど匂いがぜんぜん違うな!」


 お次はニンニク。一かけ取ってお尻にちょこっと切れ目を入れて、そのまま皮を頭の方まで引っ張って剥く。あっ!切れ目から匂いが!

 剥けたら薄切りにして一口。あ〜、臭〜い、辛〜い。でもこれがいいんだよね。


「うお、すごい臭いだな。」

「ポーションに使ってるものってこんなに辛いものばかりだったんですね……」


 確かに香味野菜って辛いものが多いよね。香辛料なんて読んで字のごとくだし。


「先に聞いておきますけど、ポーションに味はつかないんですよね?」

「ええ。その予定ですよ。」


 よし、懸念材料は消えた。さて問題のケール。もとい薬草です。そのままかじってみる。う゛っ苦っ、それから野菜の青臭い感じが鼻に抜ける。これは……大丈夫か?


「「……」」


 大丈夫じゃなさそうですね……苦虫を100匹くらいかみ潰したような、激渋な顔になってます。いや実際に苦いもの食べたんだけど。


「お味はいかがですか……?」

「なんですか、これ……毒……?」

「この苦味が健康にいいんですよ。」

「健康に良いどころか舌が害されてるんだが……」

「少なくともポトフさんが乗り気でなかった理由がわかりました……」


 お口直しに、いま味見した三種に火を通したものをご用意しました。ささ、食べましょ。


「あら?辛味が消えていますね?」

「こっちは……多少マシになったがまだ苦いな……」


 お口直しにはならなかったね……デザートとして、インベントリに残してた虎の子のリンゴを食べましょ。


 この後は、インベントリに入っている果物達の種を蒔いて、本日の業務は終了です。お疲れ様でした。


 …………

 ………

 …


「ポトフ。」


 さあ解散というところで、うさちゃんから物欲しげな顔で呼び止められる。おっと失礼、忘れるところでした。木の帽子を装備して頭を差し出す。


「どうぞ。」

「ああ、ありがとう。…………ふわふわだ……」


 恍惚とした声で綿毛を撫でるうさちゃん。……うん。頭を差し出しているから身長差と相まって目の前がちょうどうさちゃんの股間の位置なんだ。なんか、流石にちょっと……


「うさちゃん、後ろか横から撫でて貰っていいですか?」

「ん?後ろ?」

「私の頭の位置的に、傍から見た絵面がちょっとマズいことになってるかもしれません。」

「!!!あっ!わ、悪い!セクハラじゃない!決してセクハラじゃないんだ!!!」

「大丈夫です、わかってます。」


 故意じゃないのはわかってますよ。大慌てのうさちゃんを綿毛であやす。再びふわふわしていると、


「ポトフ、明日から休みだったよな?何か予定はあるか。」

「明日ですか?特になんの予定もないですね。何かありましたか?」

「ああ、お前のレベル上げをしようと思ってな。」


 お?一緒に遊ぼうってお誘いですか?


 この会社の寮の部屋にはVRゲーム機が一部屋に一台設置されている。社内にあるような、開発用の機材ではなく、一般に販売されているような普通のやつだ。それでもマッサージチェアみたいな感じでデカイけど。


 ただ一つ違う点があり、社内のネットワークと繋がっているため、我が社で開発中のゲームも遊ぶことが出来るのだ。もちろんお休みの日でも。あくまで普通のゲーム機なので、プログラムに干渉することはできない。……まぁ、休日に遊んでバグを見つけて、出勤中の同僚に伝えたりする奴はいるのだが。

 ちなみに、アカウントはポトフちゃんでログインできるよ。感覚学習機能がないだけ。


 そういえばまだ敵とエンカウントしたことないな〜と思い。


「いいですよ!一緒に行きましょ。」

「ああ、いつもの出勤時間からでいいか?」

「はい。大丈夫です。」


 快く了承。いや〜ついにバトっちゃうか!

 それじゃ改めまして、本日はお疲れ様でした!

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― 新着の感想 ―
これから先豚を見ると「これがあの味か……」って、なっちゃうのか……
豚肉の味しってしまったねぇ(ニチャァ)
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