1.0.1.0 ポトフちゃんと食中毒
・(仮)が取れました。
おはようございます。リリース2日目、ユーザー数は順調に伸び1万人を突破したらしいですよ。やったね。
その勢いに負けないよう、今日も一日頑張りましょう。
本日一発目のお仕事は、たんぽぽ農園のキッチンにて未鑑定品への味付け。前にもやったやつだね。
ありがたいことに、初日から私の、いや、うさちゃんの両腕ですら抱えきれないほどの食材がたんぽぽ農園に持ち込まれています。甘~いニンジンすっぱいミカン。味の幅がどんどん増えるよ~。
一通り味付けを済ませたら、アレンジ、アイデアスレに寄せられた料理への味付けもやっちゃいます。
流石に全部は食べ切れないので、優秀なAIちゃんにお願いして、掲示板からまだ食べたことの無い組み合わせを優先的にピックアップしてもらうよ。
えー、なになに……ブドウジュースを加えたオムレツに、ミルクで炊いたご飯……
トウモロコシのキャラメリゼに、ミルクを足したポトフ、ミルクを煮詰めて固形にしたやつ……
コメントに困るような料理もあれば、少し工夫すればそのまま実装できそうなものまで、多種多様な料理が寄せられています。
ミルク料理が多い気がするけど、流行ってるのかな?
とりあえず、ピックアップされたものを1つ1つ試してみよう。
………
……
…
ブドウジュースオムレツ、これは正直イマイチ。ブドウの酸味とほんのり感じる渋みが邪魔だ。
オムレツそのものを楽しむなら無しかな……
混ぜ込むよりも煮詰めてソースにしたほうがまだ良さそう。赤ワインのソースとかあったはずだし。
キャラメリゼモロコシは意外にも悪くない。
板状に削ぎ落としたトウモロコシは、しっかりと塩を入れて下茹でしてあるので、ほんのりしょっぱさを感じる。しかし、それが周りのカラメル部分の甘さをよりいっそう引き立てている。
なんだか上級者向けスイーツって感じ。
続いてミルク料理を食す。
まずはミルクで炊いたご飯。
作り方は簡単。しっかり洗ってから、長めにミルクに浸して、普通のご飯と同じ要領で炊くだけ。
見た目は普通のものと変わらないけど、お味は……意外や意外、クリーミーで洋風な味わいで悪くない。
ただ、ちょっとミルク感が主張しすぎでくどいかな。色んな具材を混ぜて薄めてやるとちょうどいいかもしれない。
お次はミルクポトフ。
普通に作ったポトフにミルクを加えて、少し煮詰めるだけ。これは美味しい!
コンソメの濃厚な旨味を、ミルクが優しくエスコートして喉奥へ滑り落ちていく……スパイスの刺激もマイルドになって柔らかな味わいだ。
続いて、ミルクをひたすら煮詰めたやーつ。
材料はミルクだけ。鍋に入れて、膜ができないように、焦げないように気をつけながら混ぜ続けるよ。
混ぜて混ぜて、ひとかたまりになったらひとまずOK。この時点での味は、食べるミルクと言った感じで割とイケる。
最後に、固まったミルクをラッ葉で包んで、棒状に整えて冷温庫に入れて冷やしたら『蘇』の完成。食べやすい大きさに切っていただきます。
ふーむ。食感はチーズのような感じだね。素朴で自然な……自然すぎる味だ。本当にミルクだけだもんね。美味しいけど、味付けしないと物足りないかも。いろいろ試してみよう。
おまけで、蘇を乾燥させた精蘇なるものもあるようなので試してみた。相変わらずミルキーだけど、ちょっとサクッとしてて生の蘇とはまた違った美味しさがあるね。
そんな風に料理に集中していると、お昼を過ぎちゃいました。休憩休憩っと。
………
……
…
午後からは、気分転換に外へ。
素材を集めたり救援に向かったり、のんびり見回ったり。最後に、以前にも来た木の街に近い野営地へやってまいりました。
10、20……ここも人で溢れてるね〜。
座り込んで休憩してる人、大の字で伸びている人、各々が空いたスペースでくつろいでいます。
もちろん、焚き火で串焼きを作っている人もいるよ。串に刺さったウオクサをの変化を、見逃すまいと見つめる初々しい視線……好奇心旺盛な子供のようで微笑ましいね。
私も周りに習ってご飯にしようと、空いたスペースに陣取り薪を組む。
「こうやって……こんな、感じで、よし。真ん中のところに火頼むわ。」
「おう。〈火矢〉!」
おやおや、目の前のスペースでも初心者っぽい3人組が火を焚こうとしているようです。
ちょうどここは彼らの死角になる位置。耳をすませてこっそり見守ってみましょう。
「「おおー!」」
「あとはウオクサ?だっけ。」
「そうそう。これこれ!」
1人はドワーフ。彼は手先が器用なようで、お手本のような串打ちを披露している。
1人は二足歩行の犬人?コボルトってやつかな。
彼は空中に目をやりながら、指示を出している。動画か何か見てるのかな。
もう1人は見た目は人間っぽいけど、他の2人と同じくらい背が低い。小人族的なやつかな?火をつけていたのは彼だね。
みんな小柄で随分と可愛らしいパーティだ。
耳をくすぐるパチパチ爆ぜる薪の音……ゆらゆらと形を変える炎……
ひやりと涼しい風が通る中で、心安らぐぬくもりに癒やされながら何を食べようか考えを浮かべていると……
「なあ、これ火に突っ込んだらもっと早く焼けるんじゃね?」
「だよな。やってみようぜ。」
なーんて声が聞こえてきた。せっかち!まだ5分もたってないよ!何十分も待つ必要があるから気持ちは分からんでもないけども。
一回作っちゃえばあとはスキップ出来るし頑張れ〜とか思いながら、3人組にちらっと視線を向けると、串を持ってぼうぼうと燃える火に突っ込んで直火焼きしていた。
……人間、失敗から学ぶものだ。私は何も言わずそっと見守ります。
あっという間に焼けたウオクサ、こんがりとした焼き目がついてオイシソウダナー。
「おっ、いい感じじゃん?」
良くないんだよなあ……
「はふっ、ん、なんかグニグニしてんな。」
「んー、そんな話題になるほどの料理か?これ。からあげとかのがよっぽど美味いだろ。」
「こうやって作って食べるのがウケたんだろ。これなら食うんじゃなくて使ったほうがマシだな。」
意気揚々と丸かじりするも、なんとも微妙な反応。案の定、生焼けのようですね。
最終的に、直接食べるのを諦めてインベントリから使うことにするみたい。
「使用する、っと。これで回復……ん?あれっ?お前ら体力減ってね?」
おおっと、ステータスの確認中に何やらトラブルが発生した模様。これはもしや……?
「やべっ!なんだこれ!」
「ステータス、ステータス……これか?〈食中毒〉?」
「毒?毒なら解毒魔法!お前使えたろ?」
「げっ、魔力も減ってて使えねえ!」
あたりました〈食中毒〉!
発症確率はそこそこ高めだけど、コボルトさんは回避したのかな?ジリジリ減っていく体力に慌てる2人に対し、1人冷静に対処するすべがないかどうにか知恵を絞っている。
「あれは?毒消し草!それか、解毒ポーション!」
「どっちも使用不可になってる!なんで?!」
「あ〜、死ぬ〜……」
小人さんに至っては、諦めて静かに死を待つことにしたようだ。食中毒じゃ死ねないんだけどね。
ここは街道から少し外れているし、帰り道で敵とエンカウントする可能性も高い。
体力1、魔法不可、スキル不可の縛りプレイをやらせるのは流石に可哀想なんで、そろそろ声をかけに行きますか。
「あの〜、大丈夫ですか?」
「あ、騒がしくしてすいません!」
「わたっ、すんません!あっ、あの!解毒魔法ないっすか?あったらかけてもらえませんか?」
そろーっと近寄って話しかけると、ペコペコと平身低頭で謝罪される。ええんやで。
そんな礼儀の正しい子達には解毒魔法をかけてあげたいところだけど、今日はこの子達だけでも出来そうな解決策を提案することにします。
あのせっかちっぷりは、またいつかやらかすだろうから……
「解毒魔法はかけられないですけど、食中毒なら解毒ポーションをかけるだけで回復出来るはずですよ。」
「かける?」
「そうです。えーっと、こうやって。」
初対面の人間にぶっかけるのは気が引けるので、自分で実践してみせるよ。
取り出したるは『解毒のポーション〈粗〉』粗って言っても、よわ〜い毒にはちゃんと効きます。
さっきの会話から察するに、解毒のポーション持ってるみたいだからこれを使います。
ポーションの入った試験管のコルクの蓋を外して、頭上に……あ、ぽぽ達はちょっと退いててね。
頭上に持ち上げ頭に垂らすと、ほんのり薫る花の香りとともに、ひんやり冷たい液体が頭皮にじわーっと浸透していく。
突然声をかけてきて、頭からポーションを浴びるという奇行を始めた私に、ドン引き……いや、ギョっとした様子ではあったが、意外にも3人とも乗り気ですんなり受け入れられた。
「治った〜!」
「ギリギリ!残り1!」
よかったよかった。
どうにか峠を乗り越えた3人は、律儀にもお礼をしたいとのことなので、ウオクサを4つ貰いましょうか。
そして、焚き火をお借りして串焼きをクイック作成!1本は私が、残りは3人にお返しします。
「串焼きっすか……」
「ふふ、さっき君たちも作ってましたね。」
「う……それで毒になったんだけど……」
「これに毒はないから大丈夫ですよ。ほらほら、体力も回復しなきゃ。」
どうにかフォローするものの、芳しくない反応を返す 3人……しょうがない、無理強いはしません。
しまってから使ってもいいからね、と伝え、私は串焼きをパクり。う〜ん、パリッと砕ける皮にホロっと崩れるふわふわの身がたまりません。
はふはふと串焼きを味わいながら、わざとらしく「ん〜!美味し〜!」「ふわふわだ〜。」なんて言ってると……食べた!3人とも串焼きにかぶりついた!
「「「俺たちのと全然違う……!」」」
そうでしょうそうでしょう。
一口食べれば、ふっくらジューシーホックホクな串焼きの虜に。もう一口、もう一口が止まりません。骨には気をつけてね。
これで、串焼きはグニグニしてて生焼けで美味しくない、って印象を払拭してもらえたらいいな。
「こんな美味いものまで作って貰っちゃって……本当に何から何までありがとうございます。」
「ありがとう!ママ!」
「ママ……?」
「あっ、なんでもないっす!ありがとうございました!」
……私は綿毛マンじゃなかったの?




