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0.9.3.1 ポトフちゃんとお茶

 山林の国、桜の街からずーっと北東に行ったところ。

 標高高めの山の中、山肌に階段状に並んだ茶畑のそばにある椿の町へとやって来ました。


 その名の通り椿の木で彩られたこの町は、にぎやかな桜の街や一ツ葉の街とは打って変わって、どこか秘境のような静謐さがある。


 かと言って、活気がない訳でもない。

 お茶作りが盛んなようで、お茶っ葉が大きな竹ざるに広げられて天日干しされていたり、その茶葉をガサガサと揉んでいる人がいたりと、住民たちが元気に働いている。

 茶畑が周りにあるから、連動して生成されたのかもね。



 ある程度町を見回った後は茶畑へ。

 美しく刈り込まれた茶の木の樹高は、私の胸下くらい。ツンとのびた新芽がなんとも可愛らしい。


「これが茶の木か?」

「そうです。ここ以外にも生えてるとこありますかね?」


 場所によってフレーバーを変えたり出来たら面白いよね。そう思ったので聞いてみる。


「ふむ…………茶の木自体は山林の国内に点在しておるようじゃ。しかし、この町ほどまとまって生えておる場所はないな。」


 桜の街周辺にもちょこっと生えてるらしいです。これなら正式リリース時の料理のラインナップに入れて良さそうだ。


 それじゃ、そろそろお茶っ葉を収穫しますよ。

 茶の木に手を伸ばし、ふにふにとした柔らかい新芽と若葉を指先で挟み、茎をプチッと折るようにして優しく摘み取る。一先ずボウル1杯分。

 オマケで、少し固くなり始めた葉も摘んで別のボウルに確保しておくよ。


 それぞれ収穫し終えたら、農園に戻ってお茶作りを始めます。

 まず1つ目は柔らかな若葉を使ったお茶から。


 ボウルに入った茶葉を一掴み。フライパンに広げて炒っていきます。

 水分が飛んでしんなりしてきたら、ザルに入れて、手で揉み揉み。餅を丸めるときのように〜くるくる円を描くように〜優しく揉んでいきます。

 水分が出てしっとりしてきたら、再びフライパンで炒る。とにかく焦がさないように!

 そしてまた揉む。炒る。揉む……を繰り返し、少し力を込めただけで、ポロッとなるくらいカラカラになれば茶葉の完成。


 小鍋で沸騰させない程度のぬるめのお湯に、スプーン1杯分の茶葉をぱらり。

 蓋をして少し蒸らしたら、コップに注いで『緑茶』の出来上がり。おっ、茶柱だ。

 それではいただきます。


 ん〜、森の中にいるような、青々とした爽やかな香り。

 口に含むと、優しい甘さがふわっと広がり……すぐに苦味と渋味が追い上げてきて、舌の上を通っていく。くーっ、これこれ、この味だよ。


「むっ……この苦味は何とかならんのか?」


 やはり苦味がネックだね。そんなゴインキョさんには『氷出し緑茶』を作って差し上げましょう。

 鍋に氷と茶葉を入れて、常温の冷温庫で溶けきるまで時間を進めれば完成です。


「ふむ……多少渋味はあるが、飲みやすくなったのう。」


 低い温度で抽出された緑茶は、まろやかで甘みも強い。お茶初心者にはこちらの方が飲みやすいかもね。



 続きまして若葉からもう1つお茶を作ります。


 葉っぱを乾燥棚に広げて丸1日放置。この放置している間に発酵が進むんだってね。

 程よく水分が飛び、しおしおのお茶っ葉になったら、緑茶と同じように揉み揉み。

 じっとり水分がでてきたらボウルに移し、濡らしたサラシを被せて、湿度マシマシにした冷温庫でしばらく寝かせます。

 最後に、フライパンでカラカラになるまで乾燥させれば茶葉の完成。


 グラグラに沸騰させたお湯で茶葉を煮出せば、じわじわと溶けだす夕焼け美しい色……これで『紅茶』の出来上がり。


 うーん、上品な甘い香り……せっかくだから椿っぽいフレーバーにしたいな。

 椿、椿……ここは椿の町……茶葉にもその香りが移ってる……目を瞑って強くイメージする。よし、ほんのり花の香りがしてきた。


 口に含むと、深いコクとほのかな甘み。最後には渋味がガツンと舌にくる。


「これまた、渋いのう……」


 ゴインキョさんは、イーッ、と歯を食いしばって、しかめっ面に。


 それじゃあ、砂糖とミルクを追加して飲みやすくしちゃいましょう。ドバドバっとね。

 スプーンでクルクルと混ぜ溶かして、味見。

 ……うん、砂糖の甘味とミルクのコクで渋味が誤魔化されていいかんじ。


「はい、『ミルクティー』です。」

「もはや原型を留めておらんのう……じゃが、先程よりも余程飲みやすいな。」


 これなら大丈夫そうですね。



 最後に、少し固めの若葉を使ったお茶。


 作るのは“半発酵茶”と呼ばれる種類。紅茶と同じように発酵させるんだけど“半”とつくだけあってその時間はかなり短くていいみたい。


 3時間ほど乾燥させたら、ザルに入れて揉みます。

 揉んでいると、鮮やかな緑がじわじわと茶色く変色してくるけれど大丈夫。発酵が進んでる証拠です。

 ある程度茶色くなったら揉むのはストップ。緑色が残っている状態で止めます。あんまり発酵をすすめると紅茶になっちゃうからね。


 あとは緑茶と同じように、炒って揉んでの繰り返しで乾燥させれば完成。

 お湯で煮出して『ウーロン茶』の出来上がりです。

 緑茶のような重すぎない風味に、紅茶のような華やかな香り……渋すぎることもなくなかなか飲みやすいんじゃないかな。


 以上。同じ茶の木の葉っぱから作ったお茶3種でした。


 あとは……抹茶とか?粉末状のお茶……緑茶の茶葉を粉にしても抹茶にはならないよね?

 作り方を調べてみると、そもそも茶葉からして特殊なもののようだ。日光を遮って育てるとかなんとか。

 地底にも国があるらしいから、そのうちそっちで栽培してみようかな。特別感があっていいかも。


 お茶っ葉以外の、茶外茶も色々あるよね。

 麦茶はもちろん、豆のお茶とか、トウモロコシのヒゲのお茶とかあったはず。

 健康で美しくなれるお茶なんかは、10種類以上使ってたよね。


 なんにせよ、今日はこれ以上新しいお茶を作る時間はなさそう。揉んで炒って、にかなり時間を割いてしまったからね。


 残った時間は、今日作ったぶんのお茶にアレンジを加えて行きますよ。


 ………

 ……

 …


 緑茶の葉を炒って作った『ほうじ茶』は香ばしい、いい香り。味の方もクセがなくていい感じです。


 紅茶にレモンの輪切りを浮かべた『レモンティー』は、爽やかな香りと酸味でさっぱりと頂けます。


 ミルクで煮出した『ロイヤルミルクティー』。ミルクティーよりも一等強いミルク感で、優しく贅沢な味わい。


 氷を入れてキンキンに冷やした『アイスティー』やウーロン茶はのどごしもスッキリで爽快だ。


 さて、ラインナップも充実させたところで、あとはどこで売るか、だね。

 緑茶系とウーロン茶は山林の国。

 紅茶系は草原の国。

 たんぽぽ系はもちろん全国展開。ビワの葉茶は樹海でいいかな。


「ん?……ああ、そうじゃな。ポトフ、ちょっと頼みがあるんじゃが、」

「はい、なんでしょ?」


 細々とした設定をしてもらっていると、ゴインキョさんになにやら連絡が来たようです。

 いくつか匂いをつけたい場所があるので、ポトフを連れてきて欲しい、とのこと。


 もしかして、湖の国の中央のお城?大聖堂?みたいなところ?先行プレイ中に立ち寄ったんだけど、衛兵さんに止められて入れなかったんだよね。それっぽいクエストもなかったし。

 あ、あと、闇ギルドもかな。こっちはそもそも見つけられてすらいないんだよね。


 それじゃあ、最後に色んなとこを散歩して、今日のお仕事は終わりだね。

 んじゃ、本日も一日お疲れ様でした!

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― 新着の感想 ―
飲み物にも味がない物しかなく食べ物も錠剤オンリー、もしかしたらこの世界の人は一昔前のアイドルの如くトイレとか必要ないのかも知れない
うーむ、お茶の苦味や渋味も物珍しいのか。となるとポトフのディストピア世界では何が一般的な飲料なんだろう?錠剤と同じく無味無臭の水なのかな?
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