0.8.5.0 ポトフちゃん、夢うつつ
先行プレイ終了から一夜明け、人気の少なくなった一ツ葉の街。
今日は息抜きに、たんぽぽ農園へ帰ってのんびりしようと思います。
ということで、まずはフィールドへ出て呼び出しますよ。おーい、
「もちさーん!」
空へ向かってそう呼びかけると、樹海の国方向からビューンッと弾丸の様に飛んでくる白い塊。
「む゛っむ゛っ。」
翼をはためかせて地面へ降り立ったもちさんは、鼻を鳴らしながら体全体を押し付けるようにすり寄ってきた。oh……もふもふぅ……1人にさせてごめんね。
「キュワ〜?」
抱きしめて撫でくりまわしてやってると、“誰〜?”と言うようにこんちゃんが足をつついてたずねてきた。そういえばお互い初めましてだね。
「ほら、もちさん、この子はこんちゃん。こっちはぷるんちゃんだよ。」
新しく仲間になった2匹をもちさんにご紹介です。
「キュワ!キュッキュワキョワワー!」
「む゛〜。」
「キュワワッ!キューワッ!」
大はしゃぎでもちさんの周りを走り回っているのはこんちゃん。しょんぼり顔だけど、テンションの高い子だ。
ぷるんちゃんは相変わらず私の肩の上で震えているが、いつもより揺れは大人しい。
もちさんは私よりも大きなモンスターだし、もっと怯えるんじゃないかなって心配してたけど、そうでもないね?
これだけ落ち着いているなら、と手に乗せてもちさんの方へ差し出すと、ポヨポヨと全身を使って挨拶しだした。
「む゛〜。」
それに応えるように寄せられる、もちさんの鼻先。ふわふわの毛に撫でられたぷるんちゃんは、くすぐったいのか楽しそうに体を揺らす。
もしかすると、白くてフワフワな所がぽぽ達や私に似てるから怖くなかったのかな?
何はともあれ、3匹とも打ち解けられたようです。
それでは、おチビちゃんたちともちさんに乗り、たんぽぽ農園へ帰りましょう!
………
……
…
ただいま!たんぽぽ農園!
作物たちが今日も青々と生い茂っているね。
「さあ、ここが私達のお家だよ。」
「キュワ〜!」
もちさんから降りて園内に放してやると、早速元気に駆け回るこんちゃん。
ぷるんちゃんも興味津々なようで、“行ってもいい?”とこちらを伺っているような雰囲気。
いいよ〜、いっといで〜。と許可を出すと、ぽぽ達の元へ跳ねていった。
生えてるやつはどれでも食べていいからね〜。好きにお着替えしておいで〜。
「キョワッ!?」
ぷるんちゃんを見送っていると、突然、こんちゃんの悲鳴が!慌てて振り向くと……
「もちさん!?」
も、もちさんがこんちゃんを捕食している!
アワアワと手足をパタつかせるこんちゃんを意に介さず、葉っぱの部分を咥えている。落ち着いて見てみると、食べている訳ではなさそう……?
そのまま、親猫が子猫を運ぶようにどこかへ連れ去るもちさん。
一体何をやかそうとしているのやら……ついていきましょう。
のっそのっそとやってきたのは、もちさんのモーチの木スペースにほど近い、作物を植えていない空き畑。
もちさんは前足で土を掘り起こし、その穴へこんちゃんをポイッ!雑ゥ。
「キョワッ!キュ?キョ……」
穴に転がされたこんちゃんは……
おや?すぐに出てくるものと思ってたけど、なんだか満更でも無い様子。
手で土を撫でて“ほう……”と感嘆のため息をついている。ああ、植物だもんね、土から栄養を吸収するのか。じゃあ今はテイスティングしてる感じ?
うちの畑の土は、世界樹周辺のユービキアスで最も質がいい、と言っても過言ではないからね。ご満足していただけると思いますよ。
しばらくの間、土を堪能していたこんちゃんは、おもむろに頭の葉っぱを使い、体の周りに土を寄せ集めて埋まり始めた。器用だね……
「キュワ……キュ……」
最終的に、顔がギリギリ地上に出るくらいすっぽりと土に埋まったこんちゃん。しばらくすると、なんだか眠たそうにウトウトしだした。
しょぼしょぼとした瞬きが増え……やがて寝息を立て始めた。
「こんちゃん……?」
「キュワ……?」
「あ、寝てていいよ、おやすみ。」
「キュ……」
おくるみに包まれた赤ちゃんの様にスヤスヤと眠っている。空は晴天ぽっかぽか。日光浴、いや、光合成日和だ。そっとしておこう。
なるほどなあ。ここは日当たりもいいし、もちさんはこんちゃんにベストポジション教えてくれたのか。アーイイコッ!カワイイッ!カシコイッ!
そんなもちさんも 、眠りについたこんちゃんを見届けると、すぐ隣で横になって夢の中へ。
……いいな、私もここで休もう。そろっともちさんのお腹に頭を乗せて仰向けに寝転がり、空を見上げる。
はあ、気持ちいい……
………
……
…
『ポトフ、ポトフ、』
あわい微睡みの中で、うさちゃんの呼びかけが聞こえる。優しい声が私の名前をつむぎ、暖かい手が私の頭を撫でる。
先行プレイが終わって気が緩み、疲れが一気に来たのか、どうにもまぶたが重くて開かない。
目を閉じたまま、その手を追いかけるように私の手を泳がせると、漏れるような笑い声と共に、熱い、大きな手に絡めとられた。
『ふっ、疲れてるんだな。眠ってていいぞ。』
そっかあ……うさちゃんも一緒に寝てくれる?
『ああ、もちろんだ。』
ぽつりと願望をこぼすと、わずかな浮遊感の後に、暖かくて柔らかいものが私の体を包み込んだ。心地良さに擦り寄ると、よりいっそう熱が上がった気がする。
『おやすみ。』
耳に吹き込まれる甘い声の後には、額に柔らかいものが触れる感触。
それが何だったのか考える間もなく、私の意識は闇に溶けていった……
………
……
…
『ゲーム開始から6時間が経過したため、自動的にログアウトしました。』
[OK]
ハッと目を覚ますと、目の前は無機質な黒い空間。そこに浮かぶ、白い文字。あちゃ〜、寝落ちしちゃいました。
うさちゃんが出てきたな〜、ぐらいしか覚えてないんだけど、すっごく幸せな夢をみた気がする……
改めてログインしなおすと、もちさんは相変わらず夢の中。こんちゃんはいつの間にやら土から出て作物の様子を見て回っているし、ぷるんちゃんはトリイチゴフォルムで飛びながらぽぽ達と遊んでいる。
良かったー、特に異常はないみたいだ。
それじゃあ、もう夕方なので、晩ごはんを食べて今日は終わりにしようか。月曜は何しよっかな〜。




