0.8.1.xx あるお姉ちゃんの2日目
さて、2日目です。
料理をする、と言っても何から手をつければいいのか分からない。道具を揃えるにしてもどこへ行けば……と思っていたら。
「料理のチュートリアルがあるらしいよ。まずはレベル上げるんだって。」
妹が見つけてきてくれました。うーん、有能。
………
……
…
妹の後ろでブルブル震えながらレベル上げを終え、ジャガイモ?の収穫を手伝う為に畑へ来ました。
『おお、アンタら収穫を手伝いに来てくれたんか?』
「はい!」
「そうです。」
てっきり、昨日見た屋台のような設備で料理をするのかと思いきや、辺りにそれらしきものは見当たらない。というか……
「これって本当に料理のチュートリアル?」
「ここのクエストで先に素材を手に入れるらしいよ。」
前提クエストってこと?それならしょうがないか。やりましょう。
ルールは簡単。畑に植えられたジャガイモを収穫するだけ。土の上に出ている葉っぱの部分を掴んで引っこ抜くだけ。
ただし!中にはマンドラゴラが混じっていて、引っこ抜いてしまうと叫び声でスタンしてしまい、ロスタイムになる。
一応、見分け方もあるらしい。傘などで陰を作ってやると、日光を求めてワサワサと葉を動かすんだとか。
ただ……これも絶対ではなく、ぐっすり寝ているマンドラゴラはほとんど動かないらしい。結局運だよー。
渡された傘片手に早速収穫開始!1つ目は……よし、動かないので引っこ抜こう。
「よいしょっ、と……えっ?」
ぷちぷちと根の千切れる音と共に土の中から出てきたのは、ポッカリと虚空のような穴が3つ空いた、丸くて黄色い塊。
穴?否、これは目と口だ。あっ!と思った時にはもう遅い。両目の穴の縁からじわりと水分が滲み、口元が戦慄き……
〈キョエエエエエエエエエエエ!!!!〉
キィーン──と耳鳴りがする程の、空気を劈く悲鳴が畑に響き渡る。
「お姉!?」
ドギツイ金切り声をダイレクトに食らい、お姉は1発K.O.です。
スタンしてふかふかの畑に倒れ込む。あっ、結構気持ちいい……
倒れた時にポロッと取り落としたマンドラゴラは、そのままどこかへと走り去っていった……ぷちぷちいってたし痛かったよね……ごめんね……
………
……
…
『いやあ、助かったよ!はい、これ報酬ね!それから、今日採れたジャガイモも持ってきな!』
『これね、ガレットにすると美味しいのよ〜。レシピ教えてあげるから良かったら作ってみて!』
3回。マンドラゴラのシャウトを受けた回数。何故か私ばかり引き当ててろくに働けませんでしたが、妹の活躍によりノルマ達成です。え?陰にしなくてもちょっと動いてた?お姉にはそれが分からんのです……
「あ、ほら!クエストが“調理場に言って料理を作る。”になってるよ!」
おっ、本当だ。クエストリストを開くと、確かに変わっている。
「このマーカーの位置は……商人ギルド?」
「中に調理場があるのかな?行ってみよ!」
………
……
…
湖の国、商人ギルド。
マーカーを追いかけて辿り着いた調理場では、ふわふわの綿毛のような帽子をかぶった女の子が料理をしていた。
妹いわく、あの子が料理の作り方を教えてくれるNPCらしい。
『こんにちは!あなた達も料理をしに来たんですか?』
「こんにちは!そうです!」
私達と目が合うと、早速話しかけられた。
『こちらへどうぞ!今日は何を作られるんですか?』
「ジャガイモとチーズのガレットってやつを作りに来ました。」
『わあ!いいですね!道具の場所はわかります?ここの中に入ってるので、自由に使ってください!』
………
……
…
グイグイリードしてくれる綿毛さんのおかげで、あっという間に美味しいガレットができました。オマケにケチャップとかいう謎の調味料まで貰っちゃった。
それにしても、太く切っちゃったけど大丈夫?とか、ひっくり返した後はどのくらい焼くの?とか、ちょっとした質問にも答えてくれるし、作り込みがすごい。
そうだ、最後にこの質問にも答えてくれるかな?
「こういった料理に使う道具や材料はどこで買えますか?」
『道具は“どろどろ”という鍛冶屋で、材料は“たんぽぽ農園”と“ピグマリアン”で買えます。あ、商人ギルドの受付の方で、簡単な料理のレシピも売ってますよ!』
全部教えてくれるじゃん!
痒いところに手が届くとはまさにこの事。これらの情報を元に買い物にいきましょう。
………
……
…
ギルドで買ったレシピを見ながら材料を揃え、“レベル上げしてくるね!”という妹を見送ってから、調理場へ戻ってくると「「おおー!」」謎の歓声と拍手。
注目されているのは角の生えた大柄な男だろうか。照れたようにペコペコと会釈している。よくわからないが合わせて拍手を贈っておく。
空いている調理台へ着いたら、とりあえず食材を出してみる。ケーラン、ブタモモ、モーチの実。砂糖、塩、胡椒。
妹にもいくらか出してもらい、商人ギルドで買ったレシピに載っている材料の殆どは買えたと思う。
まずは……ケーラン焼きってのを作ってみようかな。クルクル巻くのがなんだか面白そうだ。
ケーランを混ぜながら周りの人はどんな料理を作っているのか見てみると……
目の前の調理台にいる綿毛の様な服を着た子は、ラッ葉?とか言うやつを使って折り紙をしている。何故??
作業をしながらチラチラと様子を伺っていると、今度はモーチの実に包丁を叩きつけて解体し始めた。すっごい豪快……後でコツを教えてもらおうかな……
………
……
…
ケーラン焼きを作り終え、再び綿毛さんに目を向けると、窯とかいうやつに折り紙の箱を入れているところだった。今なら聞いても大丈夫かな?
「あの、何作ってるんですか?」
「パウンドケーキってやつです。」
私の声にパッと顔を上げた綿毛さんは、いきなりの質問にも嫌な顔ひとつせず答えをくれた。どことなく料理のNPCに雰囲気が似ているなあ。
「パウンドケーキ?なんか聞いたことある気がする……レシピってどこ売ってました?」
確か小説で見たんだっけ?なんだっけ、同じ分量で混ぜ合わせるだけ?みたいなことを書かれてた気がする……それは是非とも作ってみたい。
「えっと、これはネットで見つけたレシピを参考にしてるので、どっかのお店で売ってたとかじゃないんですよ。レシピに載ってたものと似た材料が売ってたので、作ってみようかなって。」
「ネットで?あ、災害前の?材料が似てるからって、同じものが作れるんですか?」
「ふふっ、それを実験中です。」
すごいチャレンジ精神だなあ……レシピに無いものを作ろうと思うなんて。
手際もいいし、料理に造詣が深いんだね。
完成かと思ったら、ラッ葉で包んで冷温庫に入れるという、一見訳の分からない行動も、なにか意味があるんだろう……あるよね?そんなに時間かけたら腐ったりしない?
………
……
…
「さ、皆さんもどうぞ味見してみて下さい。」
心配は杞憂に終わった。美味い!
欲しいから見ていた訳では無いんだけど、まさかまさかのおすそ分けを貰っちゃった。しかも調理場にいた全員に配布。
必然的に小さい1口サイズで配られたんだけど、その1口だけでもクオリティの高さがよく分かる。しっとりと柔らかく、優しい甘さが口の中に広がる……
そうして私たちが余韻に浸っている間に掲示板へレシピを投稿し終えた綿毛さんは、またも作業へと戻る様子。
「まだ何か作るんですか?」
「はい。このパウンドケーキ、アレンジしてみようかと思いまして。」
そう言って取り出したのは、赤い実、確かリンゴってやつかな。そしてバナナと茶色い……脳みそみたいな実?
最初に手に取ったのはリンゴ。不要な部分を切り落として、小さなサイコロのように切ったら、砂糖と一緒にフライパンへ。
白っぽかったリンゴがツヤツヤと黄色くなってきたら火から上げて、冷温庫で冷ます。そして、パウンドケーキの生地と混ぜて焼いたら、『パウンドケーキ(リンゴ)』の完成!
お次はバナナ。これは潰して生地に混ぜるだけみたい。簡単!『パウンドケーキ(バナナ)』の完成。
そしてこ最後は……クルミ?ってやつ。フライパンで焼いてから、ざっくり切って生地に混ぜ込む。『パウンドケーキ(クルミ)』の完成。
テキパキ手際よく作られていくパウンドケーキ達。
綿毛さんは出来上がったその全てを私達に分け与えてくれた。なんて太っ腹……!
「なあ、あんた。オムレツになにか加えるとしたら、何を入れる?」
美味い美味いと皆で食べていると、角の生えた男性が唐突に、そんな疑問を綿毛さんへ投げかけた。
「オムレツですか?オムレツは何でも合いますよね。ジャガイモ、ホウレンソウ……モッツァレラチーズなんかもいいですね。」
「なるほどな……よし、ちょっと待ってろ。」
そう言って角の人は、自身が使っていた調理台へ戻り、オムレツを作り始める。途中ではポロポロっとモッツァレラチーズを入れて。
……オムレツのレシピにはモッツァレラチーズなんて載っていなかったはず。しかし、問題なく作れている。なるほどなあ、こういうのもアリなんだな。
そうして出来上がったモッツァレラチーズのオムレツ。角の人はニカッと笑って、これを綿毛さんに差し出した。
「パウンドケーキの礼だ。受け取ってくれ。」
ハッ!そうだよ、お礼しなきゃ!どうせなら、私も綿毛さんにアドバイスを貰おう。
「ケーラン焼きってどんなアレンジが合うと思う?」
「ケーラン焼きは……そうですねえ。今あるレシピの味付けは塩だけなので、砂糖とか醤油とか、混ぜてみても面白いかもしれませんね。」
砂糖!甘いヤツだよね。全然味の方向性が違うけど合うのかな?いや、物は試しだ、やってやろう!
そんなこんなで、お礼の品を作って作って……最終的には皆でアレンジ合戦。
砂糖で握ったおにぎりや、水で薄められたミルクなどなど……変な料理も多かったけど楽しかった!




