0.8.0.2 ポトフちゃんと焚き火
湖の国で配達依頼を受け、木の街へやって来ました。
ギルドに荷物を届け、クエストを完了したら、残りの時間はフィールドに出てみようと思います。
もちろん行くのは人のいるところ。ゴインキョさんから人の集まっている狩場の情報を教えてもらい、いざ、出発!
………
……
…
「〈風刃〉!〈水弾〉!」
「そっち1匹いったぞ!」
「はっ!おりゃっ!」
おお、狩ってる狩ってる。魔法を詠唱する声や、剣戟の音が飛び交ってるね。
ここは木の街を北から出て、少し行った場所にある河原。そばには野営地もあり、絶好の狩場だ。何もしないのは不自然なので、私も少し狩ってきます。
適当に戦闘をこなしながら、ちょっと散策。
川に近寄ると、ウオクサが泳ぐように揺らめいているのが見えた。せっかくなので収穫しましょう。プレイヤーに手を付けられていないぶん、大漁だ。
お次は木の生い茂る方へ向かい、枝を拾い集めます。最後に野営地の方で休憩するよ。
「……何やってるんですか?」
焚き火っぽくするために、丸太のベンチに座って枝を組んでいると、興味を持たれたようです。猫っぽい獣人の女性が話しかけてきました。
「これだけ自由度が高いんだし、焚き火とか出来ないかなと思いまして。こうやって、〈火矢〉!」
「おお〜……あ!なんか見たことある!キャンプファイヤーってやつだ!」
火をつけると、目を輝かせて焚き火をしげしげと眺めている。ほう、ご存知でしたか。
じゃあ、これはどうかな?
「それは?」
「えっと、バスクサ、って言う食べ物みたいです。ほら、こうして塩を振って、枝にさして……地面に刺すと、」
「アニメで見たことある!!」
「でしょ?」
すごい食いついてくれてる……!これは布教のチャンスでは?
バスクサを取り出し、調子に乗って採り過ぎたので、良かったら貰ってくれないか?と伝えると、
「いいの?じゃあアタシもその刺すやつやってみたい。」
と言うお返事が。料理への興味、というよりは見たことあるやつ!やってみたい!という好奇心からだろうけど、結果として料理することになったのでヨシ!追加で何本か焼きましょう。
なんの種族?スポーン地点どこだった?なんてダベりながらウオクサを炙っていると、野営地の中でポツンと火が焚かれている奇妙な光景が気になるのか、人が寄ってくる。
中には、湖の国で屋台巡りをしてきた人もいるようで、時折、質問が飛んできた。
「それも食べ物なの?」
「食べられると思います。食材に分類されてるし、こんなふうに焼かれてるのをアニメで見たことあるので。」
「その白い粉は何?」
「塩です。お店で見かけたので買ってみたんです。これをかけると大抵のものは美味しくなるってアニメで見ました。」
“アニメで見た”言い訳として万能すぎるな……使うたびに誰かしらが、「ああ〜。」と納得している。適当ぶっこいてるだけなんだけど、あるんだなあ……
さて、そろそろ焼けたかな。周りにいる人達にもどうぞ食べてください、と声をかけながら、地面から枝を抜いて、手に取ります。
「ん?」
「どうしました?」
私と同じように枝を手にした猫の彼女が、唐突に疑問の声をあげた。
「なんか、『バスクサの串焼き』?のレシピが開放されました、って出たんだけど。」
おっと、ポップアップが出てくるのか。ここは話を合わせねば。
「私の方も出ました。多分この、レシピと同じような手順で作ったからアンロックされた……みたいな感じですかね。」
「あー……塩振って、串に刺して、焼く、か。確かにさっきやったね。」
「なになに?隠し要素的な?」
「マジか、どうやったん?」
ご明察ですね、そこのエルフっぽいお嬢さん。この串焼きは、正しく隠し要素だ。
ギルドでの販売は無く、NPCから貰うこともできない、こうして作ることでしか解放できない、特殊なレシピなのだ。
とはいえ、ゲームの隠し要素なんて、公然の秘密のようなもの。
周りの人達に、バスクサは川に生えてましたよ〜。塩は『ピグマリアン』って店で買えますよ〜。なくても作れるっぽいですけど。と伝えて、どんどこ広めていきますよ。
ちなみに、『ピグマリアン』はななさんのお店だ。ピグの部分は“Pyg”ではなく“Pig”。そう、豚です。
採ってくる!とバスクサ狩りに行く人を見送りつつ、ワイワイと串焼きを食べていると、騒ぎに引き寄せれた人がまた1人、やって来ました。
「こんにちは〜今配信してるんですけど、撮っても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。」
「アタシもだいじょぶ。」
「ありがとうございます。 」
中肉中背の、温厚そうな人間の男性。どうやら、配信画面に映りこんだ私たちを見た視聴者達から『あの人たち何やってるの?』『凸しろ凸』なんてコメントを貰ったそうだ。
「今は焚き火で食材を焼いて食べてるところです。」
「へえ〜。お、『アニメで見た!』ってコメントが来てますね。」
「アハッ!アタシと同じこと言ってる!」
せっかくなので、配信者のお兄さんにも、1本どうぞ〜中の骨には気をつけてね〜と串焼きを手渡す。
「え、アザッス。つーか食べれるのか……」
おっ、ボーロ食べてない系ですか?まあ、食べてる人の方が珍しいっぽいんだけどね。
猫お姉さんもアイテム欄のほうから使っちゃったみたいだし。残念だけど食べ物なんて未知すぎるもんね。しょうがない。
配信者さんは、暫くの間周りで食べている人達と、手元の串焼きをしきりに見比べていたが、意を決したのか、はたまた視聴者に催促されたのか、食べてみる気になったようだ。
「えー、じゃあ食います……ん!?あ、味がある?え、なんだこれ!?」
「ね、ビックリだよね。」
「うわうわ、え?じゃあ、宿屋で貰ったやつも味ついてんの……?」
「ついてますね。優しい甘さでほろっと崩れて、美味しいですよ。」
「甘さ?」
「はい。甘いんです。」
そう、甘味。あっそうだ、いい機会だしここでに甘味を広めておきましょう。
インベントリから砂糖の瓶を取りだして皆さんにご提供。指先でつまんでペロッと舐めてみせ、さあどうぞと差し出す。
「甘さ、これが甘さ……」
「わ、溶ける!」
「ねえ、これもピグ、マリ……?で売ってるの?」
「はい。ピグマリアンで売ってました。」
……傍からみると、粉を摘んで舐まくるヤベー集団になってしまった。ま、まあ、砂糖の味力を伝えることは出来たはずなので良しとしよう。
そんな風に、砂糖を舐めたり、バスクサをとってきた人たちに串焼きの作り方を教えたりしていると、日が暮れてきました。そろそろ終業時間です。
名残り惜しいけれど、プレイヤーの皆さんに別れを告げ、家路につきます。またね〜。
それでは、今日も一日お疲れ様でした!




