0.7.4.3 ポトフちゃん、就職する
『はい、確かに受け取りました。こちらが報酬になります。』
無事、湖の国のギルドへたどり着き手紙を受付へ渡すと、なんと、個室に案内された。そこで小包を渡して依頼は完了した訳だが……これって初心者に依頼していいやつ……?対応が凄く丁寧だったんだけど。
個室を出ると、クエストが突然ポポポと大量にポップアップしはじめた。“職業を”“クエストを”“クラフト”ああー、現れてはすぐ消えるので、まったく読めない!
ん?もしかしてチュートリアルが終わったってこと?自由行動していいやつ?
インベントリを開いてみると、いつもの服やアイテム類が復活してる!ああ良かった。人目もないので、ここで装備を整えて行きましょう。ぷるんちゃんちょっと降りてね。
………
……
…
綿毛の服に着替え、ぷるんちゃんを再び肩へ。フードに隠れててもいいよ、と告げると、素早く潜り込んだ。見えなくなっちゃったけど、声を掛けると肩にぴょっこり登ってきてくれる。カワイイッ!
ここでやるべきことはもうなさそうなので、出てきたクエストを確認しつつギルドのロビーへ向かうと……
「うさちゃん!」
「お疲れ、ポトフ。」
私の大好きな人がいました!!椅子に腰掛けて私を待っていてくれたみたいです。
そんなうさちゃんも“ぷに”ちゃんと名付けられたスライムを連れている様子。
「大きいですね。」
「そっちは小さいな。」
私の手のひらサイズなぷるんちゃんと、うさちゃんの手のひらサイズなぷにちゃん。個体差はあれど、2匹ともイミテーションスライムだ。
ぷるんちゃんは震えているものの、同種のぷにちゃんが気になるご様子。長椅子の上に乗せてあげると、ポヨンポヨンと揺れているぷにちゃんに、こわごわと近寄り始めた。
そして……2匹でポヨポヨし始めた!スライム同士なにかしら通じるものがあるのかな?
しばらくすると、今度はぷにちゃんがぷるんちゃんの元へ歩み寄って来た。
途端に、ぷるんちゃんは私の元へ猛ダッシュ!ピョイン!とノミのように跳ねて手元へ帰ってきた。この震えは……なんだか恥ずかしがってるっぽい?可愛い〜!
さて、カワイイ成分を沢山補充したところで、ゲームに戻ります。
まずは、改めてパーティを組むために受付へ。
『こちらの書類にパーティの名前と、代表者、同行者の名前を記入して下さい。』
代表者はうさちゃん。私はその隣の同行者の欄に名前を書き入れる。
書類に連名でサインして、ギルドに届け出る……ふむ……
「婚姻届を提出するみたいだ……」
「……っ?!」
『はい、確かに受理いたしました。』
私の発言に固まってしまったうさちゃんの手から書類を抜き取り、受付へ提出。これでパーティ結成完了です。あ、お触りも許可しておきましょう。
さて、次は。「コンイン……ケッコン……!?」とボソボソ呟いているうさちゃんを横目に、受付さんへ話しかけます。ちょっとやるべき事があるんでね。
「すいません、ジョブの変更がしたいんですけど。」
『はい。こちらで変更できる職業はこちらになりますが、どれになさいますか?』
そう、職業の選択です。
受付さんから渡された紙には、冒険者、吟遊詩人、踊り子……色々載ってますね。なんというか、戦闘とか商売に関係なさそうなものが並んでいる。
そんな中にありました!テイマー!これをサブジョブに設定します。
ちなみに、メインとサブ、2つに大きな差はない。両方の武器やスキルを自由に使えるよ。
NPCからの呼称が『冒険者さん』みたいになるとか、違いはそのくらいかな。
そんなことをしていると、うさちゃんが戻ってきました。熱い視線を向けられています。ちょっと顔が火照ってきたなあ。
どうやら、うさちゃんもまだジョブの設定はしてないらしいので、一旦別行動となります。就職してから集合するよ。
別れ際に「あとで覚えてろ……」と呟く声が聞こえた気がしたけど……気の所為だよね。
………
……
…
さて、戦士ギルドの裏庭にやって参りました。ここは訓練場になっており、トレーニング用のカカシや的が置いてあるよ。誰でも自由に使っていいらしい。
ここでテイマーのチュートリアルを受けます。
『やあ、こんにちは。テイマーになりたいというのは君かな?』
「はい!そうです!」
訓練場にはすでに人がいた。ひょろっと背の高い、とんがった耳の優男風な男性で、肩には極彩色の羽を持つオウムのような鳥がとまっており、足元には2頭のオオカミを従えている。どうやら彼がテイマーの教官のようです。
『君はテイマーと言うものがどんな職業か知っているかい?』
教官は唐突にそんな質問を投げかけてきた。
「ええっと、モンスターを従えて、魔物と戦わせる……?」
『そのとおり。でも、この子達は賢いからね。私達が指示せずとも己の頭で考えて敵に立ち向かってくれる。ただ、プレイヤーが信用しきれない内は、その力を温存する傾向にある。現に、その子はスキルをあまり使わないだろう?』
「そうですね。」
うんうん。ぷるんちゃんはまだ実戦経験がないから未知数だけど、仲間にしたばかりのぽぽ達は確かにスキルを使わなかったな。
『故に、俺達がやるべきはこの子達を敬い、慈しみ、愛すること。この人になら背を預けて戦うことができる、と心を寄せてもらうことだ。そうすれば、おのずとその身に宿る力を君のために存分に発揮してくれる様になるだろう。』
うんうん。なつき度が上がるとスキルの発動頻度が上がるってことね。
『とはいえ、自衛の手段として、戦い方は知っておくべきだ。今からあのカカシ相手に練習してみよう。前衛に立って攻撃を担うか、後衛で支援に徹するか。モンスターにも向き不向きはあるが、一先ず、前衛に立つように指示をしてくれ。』
「わかりました。」
そして、ぷるんちゃんはカカシ相手に勇敢に戦った……!震えながらも懸命に体当たりする姿に、思わず涙が出そうになる。頑張れ、ぷるんちゃん!
最終的に、攻撃する敵を定める〈マーキング〉、パーティメンバーを含めた、仲間全体を回復する〈チームヒール〉など、いくつかスキルを習得した。
パーティ全体に使えるスキルが多く、連れ歩きが増える以外は、シンプルにサポーターって感じだ。
そしてそして……テイマーである、と公式に認められたので連れ歩ける数が増えました!ちっちゃい子なら5体まで連れ歩けるそうです。しかも、テイマーレベルが上がれば最大で10体にもなるそう。すっごくごちゃごちゃしそう……まあ、無理に小さい子で枠を埋める必要はないか。
では早速、ぽぽ達を呼び出します。どうやって来るんだろう、と思っていたら、どこからともなく雪のように舞い降りてきた。
ほーらぷるんちゃん、貴方の仲間がやってきたよ。戸惑い震えるぷるんちゃんを手のひらに乗せて顔合わせだ。
綿毛たちは新しい仲間に興味津々。手のひらに乗せたぷるんちゃんを囲んでマイムマイムしだした。
段々と輪は縮まり、ぷるんちゃんは毛先でくすぐられ始める。最初はむず痒そうに震えていたが……堪えきれず決壊!ポヨポヨと体を捩らせた。
それを見たぽぽ達は“やったー!”“大成功!”と言った感じではしゃいでいる。ぷるんちゃんもなんだか楽しそうだ。
こんな……こんなの愛おしすぎる……!




