0.7.4.2 ポトフちゃんと写し身の石
『さあ、着いたわ。ここが樹海の国の東端、湖の国に面した“木の街”よ。』
ぷるんちゃんと出会った場所から街道沿いに少し歩き、たどり着いたのは巨大な木の壁に囲まれた大きな街。ツリーハウスが立ち並び、植物族が行き交う様子はどことなく……
「森の街に似てますね。」
『あら、森の街を知ってるのね。あ、たんぽぽ族なら知ってるか。』
たんぽぽ族なら知ってる?なんだろう、たんぽぽ農園の関係者だと思われてたりするのかな?
何はともあれ、当初の目的は達成。街に着いたわけですが、チュートリアルはまだまだ続くようです。
『そうだアナタ、“写し身の石”は持ってる?』
「ええっと、持ってないと思います。」
写し身の石とはなんぞや?初耳だ。
ラアネさん曰く、持ち主の個人情報が詰め込まれた石、なんだとか。
要するに身分証みたいなものかな。取得が義務付けられている訳では無いそうなので免許証とかが近いかも?これがあると受けられるクエストや入れる場所が増えたりするらしい。
『この街に定住する、ってんなら必要ないかもしれないけれど、そうじゃないなら持ってたほうがいいわよ。少し値は張るけど、どこの国でも通用するものだから。』
そう言ってラアネさんは、首にかかったネックレスの先を持ち上げる。そこには深い青色の石が付いていて、これが写し身の石らしい。
多分作らなきゃクエスト進まないだろうし、これから先いろんな国に行くだろうし、作らない理由はないよね。写し身の石、欲しいです!
『それじゃ、総合ギルドへ行きましょう。』
………
……
…
ということで、やって来ました総合ギルド。受付へ向かい手続きをします。
『あ、ラアネさん、おかえりなさい。そちらの方は?』
『森の中で迷子を見つけてね、ここまで連れてきたのよ。』
そう話しながら、おもむろにお金の入った袋を取り出して受付の人に渡すラアネさん。な、なんかデカい!小玉のスイカぐらいある!
『はいこれ。この子に石を作ってあげてくれる?費用は私が持つから。』
『はーい。それじゃあこちらへどうぞ〜。』
えっ、いいの?
「えっ、あの、お金……」
『ここはワタシの奢りよ〜。』
『あはは。ラアネさんってば、気に入った人には惜しみなく支援する人なんですよ。後見人のような形でお金を肩代わりする、っていうのはよくあることなんで、遠慮なく受け取ってあげてください』
「じゃあ……出世払いって事で、ありがたく頂戴します。」
太っ腹だ……忘れないように書きとめておこう。木の街、ラアネさん、写し身の石、借金……っと。メモを終えたら、受付さんの所へ。カウンターを挟んで正面に立ちます。
『この魔晶石に手を当てて魔力を流し込んでくださいください。』
そう言って、カウンターの下から取り出して設置されたのは、高い足のスタンドに支えられたバレーボールぐらいある丸い水晶玉。その下には、小さいクッションか置かれている。
指示通りに魔力を流し込むと、中で緑と茶色の光が渦を巻き始める。光はどんどん輝きを増し、水晶全体を白く覆って、フッと霧散した。その数瞬の出来事の後にのこったのは、クッションの上に置かれた5センチほどの大きさの、透明な雫型の石。
『はーい、もう手を離してもらって大丈夫ですよ。』
受付さんはその石を手に取ると手早く紐で括り、ネックレスのような形にしてくれた。
『こちらがポトフさんの写し身の石になります。石が見えるようにしてもらえれば、紐の部分は好きに付け替えて貰っても大丈夫です。』
「ありがとうございます。」
無事、身分証を手に入れた所で、闖入者が現れた。
『ラアネ!戻ってたんなら声かけろ!』
総合ギルドの奥にある部屋からやってきたのは、髪に薔薇を生やした背の高い男性。険しい顔でラアネさんに詰め寄っているが、等の本人はヘラヘラと笑っている。
『ごめんごめん。今から行こうと思ってたんだって。』
『そんな事言って……なんだ、また“拾った”のか?』
あっ、目があった。なんか矛先がこっち向いた。
『あら、アナタも似たようなことしてるじゃない?』
『そりゃそうだが……とにかく来い。報告を聞かせろ。』
『はいはい。それじゃあポトフ、ワタシはこれで失礼するわね。』
どうやら、ここでラアネさんとはお別れのようです。
『普段は魔法ギルドの方にいるから、遊びに来てね〜。』
「ありがとうございました!」
最後にそう告げて、薔薇の人と連れ立ってギルドの奥の部屋へ入っていった。
残された私には、受付さんから声をかけられる。
『ポトフさんはこの街に来たばっかりですよね?だったら、街を見て回ってきたらどうです?』
「そうですね、そうします。」
“街を見て回る”のクエストが出現しましたよ。“装備の調達”とか“宿屋で休む”とかの小目標も書いてあるね。それじゃあちょっくら行ってきますか。と、その前にお伺いしたいことが……
「あの、写し身の石のお値段っていくらですか?」
『写し身の石の発行は1万石で行ってます。無くさないように気をつけてくださいね。』
ひぇ……高……
………
……
…
鍛冶屋で武器を調達し、宿屋で小休憩。錬金術店でポーションを買って、準備万端!“総合ギルドへ向かう。”の指示に従い、ギルドへ戻ってきました。
中に入ると、先程の受付さんに名前を呼ばれる。
『あ、ポトフさん!ちょっといいですか?』
「どうしました?」
手は空いてるかと聞かれるので、イエスと答えると、早速お仕事を依頼されました。
『この荷物を、湖の国にあるギルド本部に届けてもらいたいんです。』
と、渡されたのは、一通の手紙と重箱サイズの包み。
中身を絶対に見ないこと、手紙だけ先に渡すこと。その2つを言い含められ、送り出されました。
さて、湖の国へ向かいたい所なんだけど、もちさんはまだ呼べません。
しかし、ワイバーン便、なる空中タクシーのようなものがあるそうなので、そちらを利用します。
ギルドを出て、入ってきた方とはまた別の門の方へ。小さな門の先にはワイバーン乗り場……と言うよりも牧場だろうか。開けた場所で、のびのびと翼竜達が闊歩している。
『お、スライムを肩に乗せた、たんぽぽ族の小せえやつ……あんたがポトフか?』
ボーッと見物していると、横からイカついおじさんが話しかけてきた。小せえやつ……
「はい、そうです。」
『湖の国に送ってくれって言われてんだが、準備は出来てるか?』
「はい、大丈夫です。」
『よし、じゃあこっちに来い。』
おじさんについて行った先には、牧場にいた子達よりも一回りほど大きな個体が大人しく座っていた。ぐうちゃんくらいのサイズはあるかも。
『そら、後ろに乗れ。チビが落ちねえように気をつけろよ。』
「わかりました。」
ワイバーンに取り付けられた2つの鞍。前にはおじさんが乗り、私は後ろへ。ぷるんちゃんは私の首元へ収める。スカーフをキツめに巻いて落ちないようにします。オゥ、プルプル……
これで準備完了。いざ、湖の国へ!




