0.3.2 ポトフちゃんと試食タイム
さて、デザートタイムです。
取り出したるはモモ!ねえねえゴインキョさんこれ持ってみて、と手渡す。
「なんじゃ?……お?ふわふわして、痛っ!?」
「引っかかりましたね。」
「引っかかったも何もお主に渡されたんじゃが?」
「ちゃんとその産毛取ってくださいね。」
このくらいの痛みは感じるんだね。服の袖を伸ばしてモモを撫で回し産毛を取ると、ゴインキョさんもそれに習う。モモって皮ごと食べられるんだって。せっかくだからそのまま食べてみる。
「ん~みずみずしい!」
「んん、柔かい、そして甘い!」
ほんのりピンクがかった皮に歯を立てると、ジュブッと水っぽい音がなる。かといって味が薄いわけではなく、舌で潰せるほどの果肉からは濃厚なモモの甘みが口の中に広がる。甘く爽やかな香りからは多幸感をもたらされ、なるほどこの香りの香水が作られていたのも頷ける。さあもう一口!といったところで。
「んがっ?な、なんじゃ?」
「ああ、種ですね。」
「た、種!?リンゴと全然違うんじゃが!?」
「正確にはこの殻の中に入ってるんですけどね。」
二口目で種にぶつかるゴインキョさん。いやぁ伝えるの忘れてたよ。
食べ終えて種だけになるとアイテム化して、殻の周りにあるあのもじゃもじゃした部分が消えた。流石にあの状態で持ち歩くのは気が引けたのでありがたい。
「そういえばこの殻の中にある種って、薬になるらしいですよ。ポーションの材料なんかに
使えませんかね?」
「ほう。提案しておこう。ん?それじゃあリンゴの種も薬になるのか?」
「そっちは毒ですね。まあ、モモの種も毒になったりするんですけど。」
「わしらが食べたもの全部毒が入っとるな?」
「ゲー厶の中なんだから大丈夫ですよ。」
「えぇ……」
さっき自分がいってたことでしょ。
それはさておきもう一個食べる。2つ食べることで、とりあえずの品質の優劣を決めておくのだ。うーん、さっきのよりちょっと硬いけど味は遜色ないな。よし、こっちは〈良〉あっちは〈優〉にしておこう。後からいくらでも変えていいらしいからね。
お次はブドウ。一房にたくさん粒がついてるけど、これはどういう扱いなんだろう?丸ごと食べてバフがかかるのかそれとも一粒でバフがかかるのか。
「そこんとこどうです?」
「ふむ…………………ポーションのほうは一口でも飲めば効果があるな。半分だけ飲んで半分残して置くことも可能じゃ。その場合、効果の持続時間も半分になるのう。」
「使いたい量を調整できるんですね。」
「そういうことじゃ。」
これなら一房を二人分け合っても問題なさそうだね。早速、ブドウを一粒とって割ってみる。
「種入ってますから、気をつけてくださいね。」
「うむ。」
「皮は残していいですからね。」
「皮は食べんのか?」
「う〜ん、食べちゃってもいいんですけど、今回は私は残します。あ、いや、一個目は食べます。」
結構分厚そうな皮のブドウなので、剥いてから食べようと思ったけど、そういえば味覚を学習させてるところだった。というわけで種もそのまま皮ごとパクリ。
「うん、うーん、果肉はなかなかいい感じかな。あ、苦っ。」
「……うん?甘い部分もあるがこれは……ん゛っ!?」
種噛んじゃった、うえ〜。ゴインキョさんも種、噛みましたね。(本日二度目)
「それは、“渋み”と“エグみ”とか“苦味”とか言われるものですね。」
「た、たくさん出てきてもわからんのじゃが……」
「舌が“ギュッ!”ってなるような感覚です。」
「ああ、そんな感じじゃな……」
表情からして渋い!って顔になってますね。
とりあえず同じ房からもう一粒取り、皮を剥く。おお果汁が垂れる。サッと口に含むと、うん甘い。酸味は控えめ。渋みもほとんど消えてるしいい感じ。よし別の房と比較だ。
「なぁ、ポトフ……」
「どうしました?」
「種、飲み込んでしもうたんじゃが……」
「ああ、毒はないし大丈夫ですよ。でもおへそから芽が出るかも「そうなのか!!??」って子供をからかう冗談として言いますけどね。」
「そ、そうか。」
なんか静かだと思ったらそんなことか。へそから芽が出るのは、そういう寄生型モンスターでもいない限り大丈夫です。……いないよね?実装されないよね?提案は絶対しません。
皮を剥いたブドウで口直しして貰ったら次のブドウへ。こっちは皮が薄そうだ。一応割ってみる。種なしだ!こちらも一口でパクっ。
「うーんこっちは全体的に渋い気がする……」
「わしは甘い方が好きじゃのう。」
皮を剥いてみる。……薄すぎて剥きづらいな。何とか剥けたところをかじってみると……皮付きよりマシだけどやっぱちょっと渋いなぁ。
「うーん〈並〉で。」
「これより酷いのがあるのかのう……」
「あくまでも私基準ですからね。私にとっては〈粗〉でもゴインキョさんからしたら〈良〉に感じる食材だってあると思いますよ。」
「あるといいのう……」
ゴインキョさんしょんぼりしちゃってる。ブドウの味比べは済んだし次だ次!
「お次は『バナナ』です。」
「今までのとはまたガラッと変わったのう。」
バナナは1本ずつバラバラでインベントリに入っているようだ。何本か取り出して熟してそうなのを選び、剥き方の実演をする。
「皮をこうしてこう剥いて、この白い部分を食べます」
「これ、皮は……」
「食べなくていいです。」
「種は……」
「食べられます。」
も〜!疑心暗鬼なっちゃってんじゃん!
皮を食べられる品種もあるらしいけど、そんなの前世でも食べたことないんだよね。ちょっとだけ齧っとく。あ、苦っ!無理ですぺっぺっ。
身の方を一口食べるとねっとりとした食感が口に広がる。これだよこれ!舌にまとわりつく甘みがたまんないね!
「これは正直〈極〉をあげたいくらいですね。」
「そ、そんなに美味いのか……!もぐっ、!!何じゃこれは!!」
「今までのと全然違うでしょ?」
「口の中に甘みが残り続ける……!」
今までのジュワーッと果汁が溢れて喉を通り抜けてくあの感じと違って、モッタリ重く口内に居座る感じ。腹持ちもいいし文句なしですわ。
もう一本食べてみるけどこっちはちょっと硬め。〈良〉にしておこう。さっきのは〈優〉にしておこう。
さて、バナナを食べ終わったところで。フルーツはまだまだあるけど、そろそろ街へ出発しましょうか。
……………
…………
………
……
「街ってどこにあるんですか?」
「まだまだかかるのう……このペースじゃと明日の昼か……」
めちゃくちゃ遠いです。休憩をはさみつつ、寄り道しつつとはいえ3時間くらい歩いてるんですが……終業時刻のアラームが鳴りました……。
「私、明日はお休みですね……」
「む、そうじゃったか。」
ここの会社は週休3日で休む日を自由に選べる。私の場合は水、土、日だ。
「それじゃあ、また明後日に。」
「うむ、お疲れ様じゃ。」
それではお疲れ様でした。