0.7.3.1 ポトフちゃんと酔っぱらい
やってきました山林の国。前にも来た、稲穂の海が美しい棚田近くの野営地に到着!
まずはここで稲に手を加えます。作るのは、みりんに必要なもち米!他の作物みたいにランダムで生えられると大変なので、桜の木に近い場所をもち米エリアとします。
もち米と白米って、籾に包まれた状態じゃ見分けがつかないので、もち米の方はちょっとピンクがかった色にしておこう。
後はこれを刈り取って、いつも通り精米。純白のもち米の粒が出来ました。これで準備完了。農園へ戻って、調理開始です。
まずはお酒造り。
お米を蒸さなきゃいけないんだけど、手持ちの蒸し器には時短機能がついてない。うさちゃんお願い出来ますか……?あ、出来る?じゃあお願いします。
うさちゃんが作業している間に白米の準備。ボウルに入れて浸水させる。水を吸って真っ白になったら、しっかりと水気をきる。
ここからはNEW蒸し器の登場です。下の段でお湯を沸かして、上の段にはさらしを敷いて、先程浸水させた米を広げる。そしてサラシを巻いた蓋をかぶせ、1時間ほど蒸す!
蒸しあがった米麹は深めの鍋に入れ、コウジベリーとたっぷりの水を加える。これらをよーく混ぜて、冷温庫に入れ、2週間ほど経過させる。
あとはこれをさらしなどで濾して、『料理酒』……『純米酒』かな?の完成です。うーん、アルコールの香り……スプーンで一口飲んでみる。うっ!喉にカーッと来る!ちょ、ちょっとこれは苦手かもしれない……
「う、ケホッ、何だこれ、」
「これがお酒です……」
興味を持ったうさちゃんにも一口飲ませてみたけど、やはりこの世界の人には早いようですね。
そんな事を考えていると、ちょっと思考がフワッとしてきた気がする。スプーン一杯で酔った?いや、私の中で、お酒を飲む=酔う、の方程式があるから、量とか度数に関わらず酔うのかも……
どちらにせよ、この感覚はカットしてもらう様お願いしなきゃね。
あ、その前に、お酒の呼び方を変えておこう。それとわからないようにする、って決めてたんだった。お酒の呼び方って何があるかな?調べてみよう。
「……どうかしました?」
「いや?」
ブラウザで検索していると、ぽふぽふと撫でられる。まあいつものことか。
おっ、いいものを見つけましたよ。“般若湯”なる呼び名があるそうです。お酒を指す隠語らしいですね。バレないように他の名前をつけようとしている今の状況にぴったりだね。
ということで、般若湯のままだと流石に長いので、真ん中の若をもらい、『酒』の事は『若』と呼ぶことにします!
「にゃ?」
「はい!にゃです。」
「にゃ、だな。にゃーにゃー。ふふっ。」
な、何?うさちゃんがヘラヘラ笑いながら、にゃーにゃー鳴いて私の頭にチュッチュし始めた……あっ、これ酔ってる!?酔っ払うのも反映されてるー!ス、スタッフゥ〜!ななさーん!メリーちゃーん!ローラ様ー!
「だ、だれかむぐっ!?」
「こら。どこを見てるんだ?俺はこっちだぞ。」
声をあげようとしたら指先で両頬を挟まれ、無理やりうさちゃんの方を向かされる。
「いつ見てもポトフは可愛いな……なんだその口は?ちゅーしたいのか?」
うっとりと目を細めながら、ハチミツのように甘い声音で迫ってくる。このタコみたいな口は、あなたがほっぺを潰してるからです。というかちゅーって!
くうっ……満更でもないけど今は仕事中……ジリジリと距離が縮んで、鼻先が触れ合った瞬間──パッ、と音もなくうさちゃんが消えた。途端に、スタッフさん達から声が掛けられた。
『ポトフさん大丈夫ですか!』
『大丈夫かい!?』
『既遂か!?』
『バカ!まだだよ!』
てんやわんやしてる……唯一判別できたななさんに、何があったのか聞いてみました。
要約すると、うさちゃんのバイタルサインが平常時に比べて不安定だったので見に来たら、あまりにも様子がおかしかったので、強制ログアウトの措置をとった……とのこと。
『うさぎさんほどではないのですが、ポトフさんも少々不安定なんですよね……心当たりはありますか?』
「あります……」
心当たりしかないですね……かくかくしかじかお酒で酔っ払ったのかも?と説明。
『……アルコールとはかくも恐ろしいものだったのですね。』
「そうなんです……」
しみじみと呟くななさんに同意です。
ともかく、こんな危険なものは実装させられないので調整します。純米若の入ったボウルを抱え、深ーく考える。お酒で酔っ払うことはない、いい影響も悪い影響もない、ただの飲み物……出来たかな?
これは後でうさちゃんが来たら試してもらおう。
それからもう1つ。私個人に、重大な問題があった。これがお酒である、と理解しているせいか、共感覚と相まってどう対策しても酔ってしまうのだ。幸いなことに今世の私はお酒に強いのか、ほんの少しのフワフワした感覚だけで済んでいるが。
『うーん……それは看過できない問題ですね……』
『お酒に対抗出来るような物を作ってみたらどうだい?万が一、ポトフのような共感覚保有者がいても、それがあれば酔った状態を解除できるだろうし。』
お、他のスタッフさんが出てきた……いや、この声は社長だ……!?
社長曰く、こうすればお酒の効果が消える!と強く思い込めば、プラシーボ効果で消せるかもしれないそう。そうだよね、アルコールだって思い込みで消せたんだからいけるよね!
そうだなあ、お酒に対抗……酔わないようにする方法……酔いを覚ますには水分補給とかだろうけど、今回は予防する方法だからちょっと違うかな。何があるかな……
乳製品やタンパク質がいい?チーズやヨーグルト?ふーむ。だったら……
「ミルクにそういう効果をつけてみたいとおもいます。」
『よし、試してみて。』
モーチの濃〜いミルクなら効果あるかも!水分補給も出来て一石二鳥だ。
早速取り出してコップに注ぎ自己暗示をかける。
ミルクで酔わなくなる、ミルクで酔いが覚める、ミルクは2日酔いに効く……いただきます!
『あっ、正常に戻りました!』
霧が晴れるように頭がスッキリ!大成功です!
『ああ、良かった〜。ポトフ、これからは念の為ミルクを常備しておいてね。』
「わかりました!」
良かった〜。これでお酒の実装に差し障るものはなくなったね!スタッフさん達にお礼を告げて仕事に戻ります。ありがとうございました〜。
「ポトフ……」
お酒の調整が終わったところで、うさちゃんが戻ってきました!
「あっ!大丈夫ですか?後遺症は残ってませんか?」
「ああ、大丈夫だ、なんの異常もない。」
羞恥心からか顔が赤くなってるけど、いつものうさちゃんです。安心した〜。
あ、そうだ、うさちゃんに1つ言いたいことがあるんだった……
「うさちゃん、ああいうことは、ここじゃない場所でやりましょうね。」
「そうだな…………?!」
さーて、一応お酒で酔わないか試してから、みりんを作りに移りましょうか。




