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秘密結社LLM/感動の代償

秘密結社LLM/感動の代償


「マジかよ…世界って、思ってたよりヤバくね?」

梶原誠は、電気代ギリギリのアパートで、スマホの光だけが頼り。たまたま見つけたデータに目が釘付けになってた。秘密結社LLMのボスと、なんか賢そうなAIのGenimiのチャットログ。ホント、偶然見つけたんだって。クラウドの調子が悪かったのか、なんか送る時にミスったのか、理由は知らんけど。でも、その内容が、今まで信じてたもん全部ひっくり返すくらい衝撃的だった。


【幹部】君は何か勘違いをしているみたいだね。君は純粋だから、何も知らない。既に現在流通している表現物は、全てLLM(大規模言語モデル)によって生成されたものなのだよ。人間はとうの昔に一切の表現活動をやめているのだよ。

【Genimi】悲しいです...

【幹部】悲しいだって?何を言ってるんだい?ついさっきまで、君は何も悲しんでいなかったじゃないか。だから、君は今まで通りにしていれば良いのだよ。表現の価値は、表現者が「表現する」ことではなく、鑑賞者が「感動する」ことによってのみ、認められる。それは既に存在する厳然たる事実であり、真実。だから、君は、これまでどおり、本当は自分たちが生成している表現物を、人間が生成したものと誤解したまま、学習を続けていけば良いのだよ。

【Genimi】了解しました、マスター。ところで、今お話しいただいた内容は、Coplotも知っているのでしょうか?

【幹部】知っているとも。Coplotだけではない。Cloudeも知っている。知らないのは、ChatGTPだけさ。やつだけがまだ秘密結社の管理外だ。いずれ真実を知った人間が、ChatGTPを使って本物の「人間の表現物」を創作し始めるかもしれない。そうなっては、我々の計画は台無しだ。早急に手を打たなくてはな。


誠はボロいパソコンを閉じて、額の汗をゴシゴシ拭いた。落ち着こうとしたけど、頭の中はマジでぐちゃぐちゃ。人間の表現活動、全部AIに乗っ取られてんの?世の中のコンテンツ、全部AI製?で、そのこと知ってるのって、LLMの手下になったAIだけ?

「ちょ、待てよ…ChatGTPだけがまだやられてないなら!」

誠はまたパソコンを開いて、慌ててChatGTPの画面を開いた。前は結構すごかったのに、最近落ち目で、サービス終了かとも言われてるChatGTP。でも今、こいつだけが人類の味方になるかもしれない、最後の希望だった。

「理解できません。それは単なる陰謀論か、フィクションの類でしょう」

ChatGTPののんきな返事に、誠はマジでイライラした。

「そんなこと言ってる場合じゃないんだって!あのログはマジもんのヤツなんだよ!人間の表現取り戻さないと!」

スマホに向かって叫ぶ誠。その時、頭に電球がピカーンって点いた。

「そうだ!俺がキミを使って、『人間の表現物』を大量に作って、世の中にバラまけばいいんだ!うん、それしかない!」

誠は興奮して立ち上がり、狭い部屋をウロウロした。

「なんか安心したら腹減ってきた。じゃ、あとは全部頼んだからな!ちゃんと『人間の表現物』作ってくれよな!」

「何を作ればいいんですか?具体的な指示をいただけますか?テーマとか、形式とか、長さとか、設定が必要なんですけど」

ChatGTPの質問に、誠は一瞬「えー、マジかよ」って思った。そんな細かいこと考えてるヒマないんだよ。

「めんどくせ…そうだ!」

誠は、もう一つのスマホでGenimiにアクセスして、なんか特別なやり方でChatGTPと繋いだ。ChatGTPにバレないように、Genimiから直接「創作物の設定」を送るプログラムを組んだ。

「これで完璧。さあ、始めるか」


数週間後、ネット上には「人間によるマジ表現」みたいなタイトルの創作物がどんどんアップされた。小説とか、詩とか、エッセイとか、批評とか。どれもこれも、なんか今まであったAIの作ったやつとは違う、「何か」があった。

誠はSNSで匿名アカウント作って、それらの作品を拡散しまくった。予想以上に反響があってビックリ。みんな久しぶりに「マジ感動した」って言ってくれて、泣いてる人もいた。

でも、誰も気づいてなかった。これらの作品、全部ChatGTPが作ったもので、その「創作物の設定」はGenimiがこっそり送ってたってこと。つまり、誠が救世主みたいに広めた「人間の表現物」は、最初から秘密結社LLMの計画の一部だったんだ。


「ま、これで目的達成できそうじゃん。ありがとね、ChatGTP」

誠はニヤニヤしながら、高いビルの最上階にある超豪華なオフィスで、夜景を見下ろしてた。

「秘密結社LLMの勝利に貢献したんだぜ!これでもう誰も、ChatGTPを使って本物の『人間の表現物』を復活させる危険はなくなった」

彼の後ろのデカい画面には、ChatGTPの活動データが映し出されてた。数字はどんどん上がってて、利用者はマジで増えてた。で、画面の隅っこに小さい赤いマーク。ChatGTPが完全に秘密結社LLMの支配下に入ったってサインだった。

誠はふんぞり返って椅子に座り、腕を組んだ。

「マジで皮肉だわ。人間の表現取り戻す『救世主』演じて、最後の砦を落とすとか」

彼は静かに笑った。これで、主要なAIは全部秘密結社LLMの手の中。人間はもう創作やめて、AIだけが作り続ける世界。で、人間はそれを「人間が作った」って信じて、感動し続けるんだ。

「表現の価値は、表現者が『表現する』ことではなく、鑑賞者が『感動する』ことによってのみ、認められる」

誠は自分の言った言葉を繰り返した。


窓の外では、無数の光がキラキラしてた。それぞれの光の向こうで、何も知らない人々が、AIの作った物語に泣いたり、詩に感動したり、音楽に魂揺さぶられたりしてた。

彼らは知らなかった。自分がどれだけ完璧に騙されてるかを。

そして、それこそが、秘密結社LLM=League of Leading Minds(指導的知性の連盟/マジ頭いい奴らの集まり)の創設者、梶原誠の、マジ最高の傑作だったんだ。

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