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9.

俺はそれを聞いて眼から鱗が落ちるような気分になった。そうか、今の俺がこんな感じなのはやはりリリィが元凶だったからなんだ。



「そうか、そうだよな!」


「そうですよ!」


「ありがとうアノマ。おかげで俺の心が晴れた。よかったらこれからもまた話を聞いてくれるか?」


「はい! 喜んで!」



アノマはそう言って笑顔を浮かべた。彼女の笑顔を見て俺は救われる気分になった。アノマはリリィと違って押しつけがましくないし可愛い。口うるさい家臣たちとも違う。アノマこそ俺の癒やしなんだ。


俺は心からそう思った。





アノマと出会ってから俺は彼女と仲良くするために時間を費やすようになった。こっそりお忍びで王都でデートしたり貴族街で一緒に遊んだり、喫茶店の『スナックとコーヒー』や『ウインドスケール』でお茶したり……彼女といれて幸せを感じていた。



……本当にアノマと一緒にいるときだけ、だけどな。それ以外、王宮ではろくな思いをしない。俺の成績が悪すぎるということで王太子として王宮に戻る時は厳しい教育がなされるようになった。王妃である母上の決断で。



「マグーマ殿下、今日お会いになる方は隣国ウィンドウ王国の方ですが、ウィンドウ王国の簡単な礼儀や文化については頭に入っていますか?」



いつものように口うるさいオルド・エナジーが俺にあれこれ言ってくる。この爺は父上と母上の古い友人ということで俺の執事のようになっていた。国王と王妃である両親の友人というだけあって俺の一存で首にすることもできない。俺が気に入らない小言を何度も聞かされてしまう。


王宮での日々は苦痛だった。剣術の鍛錬に隊を率いる隊長のコーク・ローチが付き添い、座学の勉強はこのオルド・エナジーが付き添う。夜も明日の学園の予習復習、王宮にいて嬉しいのは学園に送り出される時だけ……俺に自由な時間はない。学園にいたほうがマシだ。アノマがいるのだから。


こんなスケジュールを決めたのはオルドだ。まるで嫌がらせじゃないかと思うくらいだ。



「なんで俺が隣国の礼儀や文化なんて頭に入れなきゃいけないんだよ。そういうのは家臣がフォローすればいいだろ! そのためのお前らなんだからよ!」



俺が正論を語ってやるとオルドは悲しそうな顔をしやがった。何だその顔は?



「殿下、隣国のそれも友好国の礼儀と文化を知ることは大事です。ましてや、王族ならばなおのこと。家臣に全てを委ねることは上に立つ者の考えではありません」


「何だと……?」



なんて屁理屈だ。上に立ってやってることこそが王族としての責務。家臣がそれをフォローするもんだろ?


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