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8.

学園で過ごすうちに俺は多くを学び、多くの遊びを覚えた。取り巻き共と一緒に街で買食いしたり、平民の商人から安く品物を仕入れたり、変な店で女を侍らせたり、たくさんの遊びを楽しんだ。


学びよりも遊ぶことのほうが多くなった気がするが、それで俺の心が癒されるので、それはそれで良いことだ。そうでもしない限り、リリィとの差を見せつける苦痛が少しも癒えないのだから。いや、それでも不十分だった。


一歳年下の弟が編入した頃になる。俺が運命の出会いをしたのは。それは成績が最下位になって落ち込んで気晴らしに学園の花園を眺めていたときだった。



「あの、見間違いでなければマグーマ殿下ですよね?」



不意に背後から声がかかったので振り返る。そこに立っていたのは一人の令嬢であった。制服から俺よりも一歳年下のようだ。



「……」



華奢で白い肌が印象的な、ガラス細工のような繊細な女性だった。言っては何だが、令嬢として完璧すぎて美しすぎて可愛げがないリリィと違って、彼女のことを可愛いと思ってしまった。



「そうだが、お前は?」


「アノマ・メアナイトです」


「ふうん……親の爵位は?」


「男爵です」


「そうか」



メアナイト男爵。聞いたことがない貴族の名前。いや、俺は貴族の家名なんて上級貴族の名前しか覚えていないから知らなくて当然だった。だが、男爵家の令嬢に声をかけられて俺は驚いた。リリィとの事があってろくに令嬢に声をかけられることがなくなっていたのだから。


そういうわけだから、女の子に声をかけられて俺は少しいい気になった。男爵令嬢アノマ・メアナイトとの関係はそこから始まった。





気晴らしにアノマにリリィに対する愚痴を聞いてもらった。我ながら初対面の女の子にあまり激しい愚痴をぶつけるのは格好悪い、と思っていたのだが心の中で不満が相当溜まっていたようだ。気がつくと止まらなくなっていた。



「――ということが今まであったんだ。だから俺はリリィが嫌いだ!」



最後の方は恥も外聞もなく心からの叫びを口に出してしまっていた。我ながら本当に恥ずかしい。



「わりーな。いきなりこんな話を聞かせちまって。忘れてくれ」


「そのようなことをおっしゃらないでください!」



だが、話を終えるとアノマは真剣な顔で言い放った。



「殿下の何が悪いんですか!?」


「ああ? こんな話を聞かせちまって、」


「そんなのは元はと言えばリリィさん達のせいじゃないですか!」


「ん? ああ、そうだな」


「周りに見せつけるかのように助言や手助けをするリリィさんのせいで殿下が悪く言われているんでしょう!? そんな性悪女ってムカつきますよ! きっと殿下の気分が晴れないのもリリィさんがわざとそうしてるからに違いありません!」


「っ!」



アノマはそう断言した。

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