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7.

厳しい生活を強いられる学生寮。不満は多く不便極まりなかった。そんな環境でも三ヶ月かけてやっと慣れた。我ながら逞しいものだなと自画自賛する。


それと同じ頃、成績表を見てびっくりした。リリィが一位で俺が下から数えたほうが早い。そんなことになっていた。



「なんだこれは……同い年で、同じクラスで、同じことを学んでいるのにこの差はなんだ……」



愕然とする俺はリリィの方を振り返る。そこで俺の目に映ったのは、伯爵から侯爵までの上級貴族の令息令嬢が取り巻きのようにリリィを囲む光景だった。しかも、誰もが親しげで笑顔が溢れている。勿論、俺の初恋を踏みにじったジェシカも一緒だ。


それに比べて俺はと言うと、学園に入る前から一緒にいた面子と変わらない取り巻きたち。それも男爵から子爵という下級貴族の令息たちだけ。しかも、成績も底辺の者しかいない。



「……~~っ!?」



学園でも何かしらの差を見せつけられた気分だった。劣等感と憎しみが俺の頭を支配しかけるのだが、そんなものでは何も変わらないことを俺はすでに知ってしまっているから。その後の惨めさも。もう行動に移す気力もない。



「……くそ」



それだけ吐き捨てて、俺はその場を後にしようとした……のに、リリィの方から声をかけてきやがった。



「マグーマ殿下」


「リリィ!? なんだ?」


「殿下の成績は芳しくありません。このままでは殿下のためにならないと思います」


「っ!?」



この女は……この学園でも俺を虚仮にしようというのか!?



「だからなんだ……」


「王宮にいた頃は家庭教師の方々によって個別の最高の教育を受けられましたが、学園で寮暮らしとなると勝手が変わります。なので、手間になるとは思いますが学園に通いながらも王宮のように……」


「っ!? う、うるさい! もう俺に何も言うな!」



俺はリリィの話を最後まで聞かずに走り去った。逃げるように。その口の先がなんとなく分かっていたから。俺は心の内側を叫びながら走った。



「どうせ自由を捨てた厳しい教育を受けろっていうんだろ! 王宮に戻れって言うんだろ! 冗談じゃねえ! もう俺の好きにさせてくれてもいいじゃないか!」



こんな事があった後で、学園では俺を嘲る声が増え始めてしまったのだがどうでも良かった。どうせ今更だし、俺がどれだけ馬鹿にされようが次の国王になるのは当然のことなのだから。そして、リリィはそんな俺の婚約者。つまり下の立場であることは揺るぎない事実。結局のところ俺が上の立場なんだ。


この時は本気でそう思っていた。


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