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30.

「……リリィ、いつもお前が俺の邪魔をしてきた」


「殿下?」


「俺より成績が良くて、俺よりも本当に優れていて、同級生や家臣に常に注目される……。俺が努力してもお前に叶うことは何一つ無い。そんなお前が婚約者なんだぞ? 俺がひねくれて無気力になるのも仕方ないじゃないか?」



リリィに対する劣等感。それが俺の本心……遂に俺はそこまで口にしてしまった。思えば、そんな弱みを最初に見聞きさせたのはアノマだった。こんな弱みを見せれば付け込まれて当然だったな。


そんな俺の本心にリリィは……



「ふざけないでください。私に劣っているからといって、あなたが努力をしない理由にはなりません!」


「っ!」


「マグーマ殿下、それが貴方の本心だというのなら私は貴方に決して同情できません。たとえ私に劣るのだとしても貴方は努力を怠るべきではありませんでした」


「ぐ……」


「貴方が周りに見放されたと思うのなら、それは貴方が理由をつけて怠惰になった結果です。……どうか今後は反省して私達皆を見返せるくらいには努力をしてください」


「! リリィ……」



怒りを見せた……生まれて初めて俺はリリィに怒られたのだ。





裁判の結果、ロカリス・メアナイト男爵は元凶として懲役50年ということになった。娘のアノマは本当に何も知らなかったということで奇跡的に無罪になった。貴族令嬢ではなくなったけどな。



肝心の俺は……王族じゃなくなり、大幅な臣籍降下とアノマとの結婚が決まった。こんな結果になったのは国王である父の発言によるものが大きい。



「公爵令嬢を婚約破棄してまで得ようとした娘なら責任を取れ。情けない息子だがせめてそれくらいはやってみせろ。たとえ王子でも公爵令嬢を勝手に婚約破棄しようとしたり、王宮を抜けて行方不明になったり、挙句には他国に逃亡をすれば思い罰を課すことになるのだが、それくらいの処分で済ませるのは我らの温情だ」



ようするに――俺がこうなったのは構ってやれなかった親である自分たちにも非があるから、せめて軽い処分にする――って感じだ。



「そんなことされても嬉しくない。辺境に追いやられるのが温情だなんて、冗談じゃない。それに、俺を陥れた女と結婚させられるなんて! しかも、伯爵だなんて!」



……しかし、しばらくティレックス領で伯爵を続けてきて考えも変わった。結局、俺はアノマと仲直りできたし何よりもリリィとジェシカの顔を見ることもなくなったのだ。誰も俺を馬鹿にしないのも良い。


ただ、暮らしは王宮よりも遥かに劣るのが大問題だった。辺境の土地での暮らしは大変だった、しかもアノマの話によると並の男爵よりも貧しい暮らしが今の現状……やっぱり不満になったのだ。頑張ったけど付け焼き刃だった。

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