27.
裁判所では多くの情報が飛び交う。その大部分がロカリスの裏の顔を証明するものだった。
なんとロカリスは我が国と隣国との間で秘密裏に違法な貿易をしていたのだ。俺が出会う以前からコソコソ行っていたようだが、俺がアノマと付き合い屋敷に出向くようになってからは大胆になったという。数々の証拠と証人をあげられたのだから俺も反論の余地がなかった。
その中でも気になったのは、俺がアノマと出会った頃に違法貿易による犯罪が大胆になってきたということだ。
「……俺と出会ってから? まさか!?」
ロカリスの違法貿易が大きくなった理由――思い当たることがあった。俺が、金を……!
「ロカリス! 俺がお前に渡した金は、生活費に使ったのではないのか!? 俺が持ち出した金を使って違法な貿易の資金にしたのか!」
俺は引き出した国庫の金を最初はリリィのために使っていた。しかし、メアナイト家の屋敷に行くようになってからは大半をロカリスに与えていた。借金で困ってると言うから金を工面したのに!
「……ええ、そうですよ殿下。何も知らぬ我が娘と何故か仲良くなってくださった貴方のお陰でワシの懐は潤いました。それを多少貿易に利用させてもらいましたよ」
「お、お前……!」
「くくく、まあ貴方の金を利用して大胆なことをしてしまったのは失敗でしたが……それに欲を言えば我が娘を王妃にしていただくか我家に婿入してほしいという思惑もあったのですがね。ワシのしたことをうやむやにできたかもしれぬし」
「こ、この野郎……!」
ロカリスは俺に見せたことがないような悪意に満ちた顔で笑う。最悪だ……俺は知らず知らずにロカリス・メアナイトの犯罪の手助けをしてしまっていたんだ!
「そんな……お父様?」
「……アノマ。お前には何も言っていなかったが、ワシはこういう男だ。娘のお前に苦しい思いをさせたことは親としては悲しく思う。許してほしいとは言えないが、すまなかった……」
「…………」
娘に対してだけは申し訳無さそうな顔をするロカリスだが、娘のアノマは顔を蒼白にし、震えながら『どうして…どうして…』と呟いた。まるで、信じられないというような表情で。
「……ふざけんな、なんだこの茶番は?」
しかし、俺はそんなアノマの姿さえ信じられなかった。思えば、彼女と関わってから俺はおかしくなったような気がするからだ。ただでさえ周りの者達を信じられなかった俺はアノマと出会ってからそれがより顕著になっていたからだ。アノマが意図的に俺を陥れようとしたのではないか。そもそも現時点でアノマは犯罪者の娘であり、彼女を信じることは難しいではないか!
 




