26.
「すまねえ……。トライセラ……トップス……。リリィのせいで人生がメチャクチャに……」
「兄上……?」
「あの女が、リリィが俺の婚約者になってしまったばっかりに俺の人生はメチャクチャに……挙げ句にはお前たちまでこんな思いを……」
「兄上、貴方はまだそんなことを言っているんですか……!」
「え?」
「トラ兄様?」
トライセラが俯く。ああ、そうか。俺がリリィを甘く見たせいだと思ったから、それを反省していないと思って失望させてしまったのか。そこは俺も不甲斐なかったと反省している。もっとリリィを調べて弱みを見つければよかったのに……!
「兄上、リリィ嬢に何の落ち度もありません!」
「は? 何いってんだ?」
あれ? 予想外の反応だった。
「リリィ嬢はジェシカ嬢と共に兄上がメアナイト男爵に利用されるのを阻止するために手を貸してくださったのです! それを、」
「何を言うんだ! 外務大臣たちがお前に何を言ったか知らないが、アノマとロカリスは俺の味方をしてくれたんだ! リリィにコケにされる俺をアノマは救ってくれたんだ! そんなアノマの父親のロカリスが悪いことしてるわけないだろ!」
「兄上! 落ちついて話を聞いて、」
「トライセラ! たとえお前でもあの二人を悪く言うことは許さん! 頭の良いお前ならじっくり考えればリリィが悪いことくらい分かるだろう!?」
「……いいえ、もういいです」
なんということだろう。頭がいいはずのトライセラまでもがリリィか大臣にそそのかされてアノマとロカリスのことを悪く思っていたのだ。トライセラはどうしてしまったんだ? 目の隈がすごいし寝不足でまともな思考ができなくなったのか?
「トップスもう行こう。兄上、これから裁判も始まります。そして、そこで聞かされるのは間違いなく真実ですので心を強く持ってください」
「は? 真実?」
「今私が口にしても兄上は受け入れられないでしょうからね。言えることがあるとすれば、兄上が知らないことはたくさんあったということです。それでは、裁判でまた会いましょう……」
苦虫を噛み潰すような顔のトライセラはトップスを連れて去った。家臣や親とは違って俺のことを心配してくれているが、トライセラの態度が気になった。
「真実……なにがあるんだ?」
この時の俺は本気に何のことか分からなかったが、裁判の日にトライセラの口にした真実を知ることとなる。新たな絶望とともに。
◇
裁判の時が来た。そこで俺は信じられない事実であり、信じたくない真実を知った。
「ロカリスが、国内外で違法な貿易?」




