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21.

俺が動揺していることに気づいているのに、バードたちは気にすることなく俺に残酷なことを告げる。



「……言っておきますが殿下は部屋で謹慎なさってください。国庫から勝手に資金を引き出したという罪状がありますので呼ばれるまで部屋を出ないでください」


「何を、」


「おそらく例の男爵令嬢のために使ったのでしょう? その事も含めて男爵親子を問い詰めさせていただきます。殿下を後回しにするのは我々なりの慈悲ですよ?」


「うっ……」


「そういうことですぞ殿下! 証拠があるからな! 陛下にも報告させていただきますぞ!」


「……」



国庫の金を使った理由までバレそうになっている。俺は黙るしかない。……しかし、慈悲だと? そんなはずがあるか。慈悲だというのなら、そのゴミを見るような目は何だ……?



「ティレックス侯爵領の準備もしなければならないのは殿下のせい……はぁ、陛下が不在の時にこんなことをして我々の仕事を増やす貴方には侯爵の爵位さえ……もう我々は行きますから大人しくしてくだされ」



呆然とする俺をよそに家臣どもは動き出した。きっとアノマとロカリスを問い詰めるためなんだ。だが、俺は兵士によって自室に連れて行かれようとしている。アノマを助けに行きたくても何もできない。……無念だ。


そんなふうに絶望していた時、下の弟の姿が目に入った。第三王子のトップス・ツインローズ、十歳になったばかりで子供らしく単純で短気な性格の可愛らしい弟の姿が見えた。


その直後、俺は自分でも信じられないことを叫んだ。



「トップス! 助けてくれ! 兵士に閉じ込められる俺を、お兄ちゃんを助けてくれ! 自由にしてくれ!」


「「で、殿下っ!?」」



……兵士が驚き呆れるのも無理もないと俺も思った。なんで十歳の弟に助けを求めたんだろう。我ながら情けない。


だが、それが助けになった。それは俺が自室に入れられた直後だった。



「「トップス殿下!? 危ないからお止めくだされ!」」



俺を見張る兵士たちが何かに驚いている。どうやらトップスが何かしでかしたようで、おかげで逃げ出す隙ができたのだ。兵士が戻る前にメアナイト男爵の屋敷に行く前に……トップスの部屋に書き置きを残しておいた。



「……せめてリリィへの嫌がらせにできればいいんだが、付け焼き刃にしかならんか」



書き置きの内容は『リリィ・プラチナムが悪役令嬢で、いずれはマグーマ・ツインローズを誘拐しようとしている』とした。見張りの兵士を引きつけるあたりトップスは結構頭が良いみたいだから俺の代わりにリリィを懲らしめてくれるかもしれない。そう思って書き置きを残した。前半は事実だしな。



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