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2.

「お前の婚約者は、公爵令嬢リリィ・プラチナムで決まりだ」



国王にして我が父、ウィンビジブル・ツインローズは面倒くさそうに言った。その隣では我が母にして王妃、バーラス・ツインローズが目にクマを浮かべて眠そうにしている。俺はそんな二人を気にすることもなく受け入れることを口にした。



「はい……」



リリィ・プラチナムは我が国内有数の貴族プラチナム公爵家のご令嬢、俺の婚約者は有力貴族の令嬢から選ばなければならないというしきたりに従って彼女に決まったのだ。



「はじめまして。リリィ・プラチナムですわ」


「……マグーマ・ツインローズだ」



子供の頃に俺達は互いに婚約者として出会った。銀髪に白銀の瞳が特徴的で子供ながらも整った顔立ちは美しいと思った。勝手に決められた婚約だと思って不服だった気持ちが半減したものだ。



しかし、後になって新たな不満が膨れ上がる。リリィ・プラチナムという娘は、俺と性格が相性が合わないのだ。



「殿下、服装が乱れておりますわ」


「え?」



たかが服の裾が乱れたぐらいで指摘したり、



「ここは……間違ってます。逆ですわ」


「何!?」



側近と一緒に勉強している時、俺が間違えていると指摘したり



「殿下、今日の演説ですが大丈夫ですか? 一応、紙にまとめておきました」


「どうして、そんなものを……」



彼女はいつも俺の行動を先回りして嘲笑っていた。頼んでもいないのに親切なふりをして、俺を笑いものにする。そんな彼女の態度は、俺を苛立たせた。 俺は王子なんだぞ! 俺を立てろよ!


リリィの完璧主義のような態度に、俺はいつも息苦しさを感じていた。苛々した俺は父上に直談判して婚約の白紙を願い出た。それなのに………



「父上! リリィは俺に口うるさく小言ばかり言います! 婚約者を変えてください!」


「駄目だ」


「なっ!? 何故ですか!?」



何でも許してもらえた俺が『駄目』と言われた。父上にそう言われたのはこれが初めてだったと思う。父上の冷たい視線が、俺の心を凍りつかせた。



「彼女に何の非がないと聞く。むしろお前に問題がありすぎるというではないか。家臣の者たちが心配しておったぞ?」


「こ、この俺に対して、心配? なぜ俺が心配されるのですか!?」


「随分と我儘をしてきたようだな。たいしてできの良いとは言えないどころか悪い癖に人並みの努力をしない。威張り散らして遊ぼ呆けるばかりでは何もできんぞ?」


「……くっ!」



父上の言葉は、ナイフのように俺の心を切り裂いた。たとえ父上の言うことを半分も理解できなかったとしても。リリィのことは本当に口うるさい女としか思っていなかったからだ。




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