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13.


「……いい提案に聞こえるかもしれないが、父上がそんなことを許してくれるはずが……」


「陛下の許しなど婚約を破棄した後でもよいでしょう。そうでもしなければ王宮はリリィ嬢の顔色をうかがう者ばかりになり、王国の政を担うのもリリィ嬢の実家のプラチナム公爵家だけになってしまいます。それだけは避けなければなりません」



ロカリスの言葉を聞いて俺は納得した。確かに、あの女の実家の公爵家が権力を独占する事態になるなんてあってはならない。もはや俺の気持ちだけの問題じゃないのだ。



「そもそも、リリィ嬢には殿下を軽んじたこともそうですが何よりも我が娘を虐めたという婚約破棄を突きつけられる理由があります。そのような者が将来まともな王妃になれると思われますか?」


「!」



そうだった、リリィ、あの女は俺を見下しアノマを苦しめた大罪があるじゃないか! 婚約破棄をされて当然の悪女そのもの! なんだ! 何の問題もなく婚約破棄できるじゃないか!



「ロカリス! よくぞ言ってくれた! なんだか目が冷めた気分だ!」


「お役に立てて何よりです」


「早速、婚約破棄の準備をしなくては。そして、新たな婚約者にアノマを選ぶ!」


「え! 私ですか!?」



アノマとロカリスは目を見開いて驚いたが当然だ。王太子たる俺が婚約破棄したならば次の婚約者を選ばなければならないはずだ。それなら俺の好きな人がいい。



「当然さ! アノマ以外に誰がいると言うんだ? 俺はお前が好きだ!」


「殿下! 嬉しい! 私も殿下が好きです!」



アノマが俺に抱きつく。ああ、癒やされる。やはり俺に必要なのはアノマのような理解者なんだ……。



「殿下、微力ながら私も協力させていただきます。これでも他国との貿易に顔が聞きますので」


「そうか頼んだぞ」


「かしこまりました」



ロカリスはそう言って部屋を出ていった。おそらく、早速俺の力になるために動いてくれたのだろう。ああ、なんて信頼できる頼もしい家臣だ。王宮の者たちにも、ロカリスのような人がたくさんいればよかったのに。



「殿下、今まで酷い婚約者がそばにいて大変だったでしょう。お辛い中よく頑張りました」


「ああ、俺の周りには優しい人がいなかった。父と母ですらもな……」



両親が優しかったかといえば微妙なところだ。あの二人は滅多に俺に干渉してこない本当に『息子』というよりも『王子』としか見てくれなかったような気がする。弟たちのことはどうかと言えばなんとも言えない。上の弟は兄の俺が見て分かるほど優秀だ。下の弟はまだ十歳にもなっていないし。



「大丈夫です殿下。私と父上は何があっても殿下を裏切ったりしませんから」



俺を抱きしめるアノマの言葉から王宮の家臣達から感じられなかった誠実さを感じる。ああ、ずっとこの時間が続けばいいのにと思ったが多忙な俺にはそんな時間はない。


だけど、今だけはゆっくりしていこうと思った。



「そうか、それなら今日は屋敷でゆっくりしていこう」


「はい、この屋敷にいる時ぐらいは心を楽にしてください」



こうして俺はメアナイト男爵の屋敷でくつろいでいくのだった。



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