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10.

「お分かりになりませんか? ああ、トライセラ殿下やリリィ嬢ですらマグーマ殿下のためにウィンドウ王国のことを自主的に調べていたというのに……」



そう言って爺はため息なんか吐きやがった! それを聞いて俺の苛々が爆発した!


トライセラやリリィを引き合いに出して、俺を責めるような言い方をされた! 俺が至らないこともあるかもしれないが、こんな言い方しやがるこの爺や周囲の人間に問題があるとしか思えないではないか!



「そうやっていつもリリィや他のやつ、よりにもよって弟と比較しやがって! 王太子である俺のほうが色々なことをしなければならない以上手が回らないのも仕方ねえだろ!? それをフォローするのがお前らの仕事だろうが!」


「で、殿下!?」


「そんなにもリリィや弟を評価するなら、彼らに任せてみればいいだろ!?」


「殿下、落ち着いてください!」



不味いと思ったのかオルドが俺をなだめようとするが思い通りになってやらない。俺をここまで怒らせてなだめるのが先だなんて舐めてるだろ!



「うるさい! もういい! 今日はこれまでだ!」



そう言って俺は部屋から出た。オルドは俺の怒りに恐れをなしたのか部屋から出ないようだ。



「どいつもこいつも……」



俺の苛立ちが収まらない。この苛立ちを払拭するにはアノマに会うしかない。そうなると今日の予定はあいつに任せるしかない。そう思った直後、当の本人から声がかかった。



「兄上、どうされたのですか?」


「トライセラ……」



こいつは俺の弟で第二王子のトライセラ。一歳年下であまり目立たない男だったのだが、忌々しいことに俺よりも成績がよくて優秀だということ。遊ぶよりも勉学を優先するようなつまらない男なんだが成績だけは俺よりも上、成績だけだけどな……しかし、気に入らないが兄思いの優しいやつだ。だからこそ、今はちょうどいい。



「トライセラ、俺は学園に急を要する用事ができたから今日の仕事はすべてお前に任せる」


「ええ!? 今日もですか!?」


「ああ、そういうことで後は頼むぞ!」


「え、ちょっと……」



俺は今日の予定の資料が記された書類をトライセラに渡して、その場を駆け出した。こういう時だけはいつも優秀だと言われる弟が頼りになるのだ。


そうだ、どうせトライセラやリリィのほうが優秀だというのなら王宮の大事な仕事もあいつらに任せればいいんだ。もしそれで困るようなら今後俺に対する扱いをもっと緩く優しくしていけばいいんだ。


それよりも俺はアノマのことを思い出したばかりだから、学園じゃなくて彼女の実家に行きたくなった。ちょうど学園に行くと言ってしまったから、それを偽ってメアナイト男爵の屋敷に行こう。


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