神様はぷよぷよ
ふと、辺りは深淵と呼べる程真っ暗なはずなのに、地面の砂利が見える。どういう原理かはわからないが、光はないのに砂利の部分にポツポツ光がある感じ。道標みたいなものかな?
でもそれ以外は真っ暗。
ただ虚ろなままその光に沿って進んでいた。
進む度に、自分という記憶が浮き出ては、少しずつ薄れて消えていく。
だけど突然、私の足は止まる
「パルル、かわいい~」
「はい!なでなでだよ!」
キャッキャッと天に旅立ったはずの愛犬と遊んでいる記憶によって。
それは私にとって数少ない大切な思い出。
この時に、虚ろだった自分が正気に戻ったような、自分を取り戻したようなそんな感覚がした。
だけど、その感覚と同時に私はどこかに吸い込まれた。
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「おっととと、エラーが来たね」
エラー?なにそれ。と思いつつ耳を触る。指先に機械がコツンと当たったことに少し安堵しながら
目の前にいるぷよぷよした物体をまじまじと観察。
うーん、これってアニメや漫画でよく見たな。スライムってやつじゃない?アニメでは青色だったけど、このぷよぷよは金色だ。
ってかすごい声、聞きやすいな。びっくりしちゃった。
そういえば私って衝動的に飛んじゃって、人生に幕をおろしちゃったんじゃなかったっけな…。
愛犬の記憶。懐かしかったな。
にしてもここはどこ?天国なの?
でもそうだとしたらアレは何?
スライムみたいなぷよぷよした物体。
だなんて頭の中で思考を巡らせていたら
ぴょーんとジャンプしながら、ぷよぷよした物体が話しかけてきた。
「ようこそ、エラーの子」と。
「え?!びっくりした。てか……このスライムなんかきゃわいい……。」
「きゃわ?!スライム?!……けほっけほっ」
スライムみたいな物体は、そんな言葉が返ってくると思わなかったみたいで、びっくりしてむせている。
だってすっごいかわいいじゃん。見事なスライムボディだし、初めて見たよ。
触ってつまんで伸ばしたいんだけど。
そんな気持ちをグッと堪えて、恐る恐る疑問をぶつけてみた。私えらい。
「エラーの子って何?
私の名前はは坂ノ下美香と言うんだけど……。それにスライムは一体なんなの?」
その疑問に対してぷよぷよした物体がうなだれる。その姿は半分溶けたような感じだったけど、えっと……溶けることもできるんだ……。
そしてぷよぷよした物体いわく
エラーとは死の狭間にいた人間が自我や疑問を持つことによってそこから弾き飛ばされることみたい。
大抵は生き返ってギフトというものを身につけていって、よく言う霊能力とかも、そのギフトの1つというものとのこと。
もちろん、生まれた時から身につけているパターンもあるけどねって、丁寧に説明してくれた。
でも、ごく稀に特殊な生き方や死に方をした人間、私みたいなのが、生き返らずにここに飛ばされてしまうみたいで
それをぷよぷよした物体はエラーの子と呼んでるっぽい。
「ちなみにスライムと言われてちょっと傷ついたけど、わたくしはエラーの子の世界でいう神様ですからね!」
「なっ?!」
このぷよぷよしたスライムみたいな物体が神様?!
「神様……。ふつうここは厳格そうなおじじか、綺麗なメスか、イケメンでしょ?!」
「……。色々突っ込みどころがあるけど、でもエラーの子の世界ならそうかもね。神に実態はないけれど、人間にわかりやすく見た目を変えて遊びに行ってましたから、その姿を見た人間が広めたのでしょう」
だなんて言われたけど……。そうなんだ。それなら納得。
でも、本当の神様がぷよぷよした物体、スライムだったなんて、これは誰も知らないんじゃ…。
どうしよう、敬わなきゃいけなんだろうけど
、本当に神様っぽくない。まぁいっか。
と、ジロジロ見ていたら、なんか恥ずかしくなったみたい。ごほんごほんと威厳を保つように、溶けていた部分は元に戻って、まん丸になった。だけど、そのぷよぷよした神様の体はほんのりピンクに染まっている。金色に淡いピンクが混ざっている感じ。ふふ、かわいいなぁ。
「きゃわ……じゃなくて、とりあえずエラーってのはよくわかったけど、私はこれからどうなるの?地獄行き?」
地獄かなぁって思ったら、ふとあの時の闇の中で浮かんだパルルの姿が浮かんだ。
あの子は無事、天にたどり着けたのかな?