009.エリカ・トランサーの視点
この日は、電子レンジでも作ってみようと思っていた時だった。
物凄い音がした。結構なサイズの機械が落ちてくるような、そんな大きな音が。
気になって、落下地点の山に行ってみた。
落ちて来たのは、何と、女の子の姿をした、人型のロボットだった。
急いで回収して、学院長にも頼んで調べてもらった。その結果、どうやら人間の身体を改造したものだった。
いわゆる改造少女。リアルでは初めて見たよ。
ただし損傷が酷かったので、速攻で修理した。直せない部分は、魔石機材を使ってカバーすれば何とかなるだろう。
……そして私の読み通り(?)、その子は起きて、問題なく動けるようになっていた。
「おおお!起きてる!動いてる!いやったー!!」
アンドロイドの修理なんて人生はじめてだったけど、ちゃんと動いてくれたから本当にうれしかった。はしゃぎすぎて、その子に勢いで殴られちゃったけどね。
で、聞いてみたところ、どうやら私の知っている世界とは全く別の場所から来たそうだ。言うなれば終末世界かな。
しかもその子、どうやら自分が元々人間だった自覚が無かった。教えてあげたら、すんなり受け入れてたけど。
名前は無いみたいだったので、私はその子を『レオナ・レコード』と命名した。
え、由来?『レコード』の方は、その子が名乗った『RECORD』システムNo.9721から取ったけど。『レオナ』は……特にないな。何かしっくり来たから適当に言っちゃった。
けど、驚いたことにそれもすんなり受け入れてくれた。順応が早いというか、何というか。
そんなわけで、私はレオナの事をもっと知りたくなった。そこで学院長に頼んでみたら、何と生徒として迎え入れるつもりだったそう。
謎の転校生が実は改造少女だなんて、中々面白いじゃん。
すごくワクワクしていた私だったけど、ある日、この事が友人にバレちゃいました。
剣士を目指す『ホノカ・ホムラ』と、狙撃の技術が凄い『マナ・チェイサー』。この2人にも元から事情を話すつもりだったけど、あんまりにも感情を表に出していたせいか、何かある事が見抜かれちゃった。
それにしても、学院長と一緒にレオナの事を説明した時、2人ともビックリしてたなぁ。でも意外と信じてくれた。それには私もちょっとビックリした。
……そして数日に渡る手続きが済んだ後、レオナは聖ガルガンチュア学院の生徒になった。席は当然、事情を把握済みの私の隣。
「フフッ、偶然にも隣の席だねぇ。よろしく。」
からかい気味で、私はそう言った。レオナは少しため息をついていたなぁ。数日の間にちょっとやり過ぎたかもね。てへっ。
授業が始まって、実技の時間になった。
レオナの整備はやってたけど、そう言えば魔法の使い方をまともに教えていなかったなぁ。一応魔石機材のお陰で使えるとは思うけど。
で、見事やってくれた。
彼女の右腕に仕込まれていた、唯一直せたマシンガン、そして同時に放たれた火の魔法で、いきなり現れた暴走マキナをあっさり倒してしまった。
それはもうすごかった。何と言えば良いか、そうだ、戦場に立つ女騎士みたいな感じかな。
私の目に、狂いは無かった。レオナ・レコード、あの子はきっと物凄い事になる。
こんなに胸が高鳴ったのはいつぶりだっただろうか。そうだ、あのゲームで激熱なイベントが起きた時だったか。
それが思い浮かぶと、正直……『前世』が懐かしい。
……だけど、それはもう過ぎ去った話だ。
今の私は『エリカ・トランサー』。聖ガルガンチュア学院に通う、ただの機械マニアだ。