007.魔法の機動兵器について。そして偉そうな女子生徒
昼休憩の後、また講義の時間となった。今度は機械学のようだ。
話に出てきたのは、エリカも言っていた『ウィザードマキナ』について。
魔石を主な動力源にしている機動兵器ウィザードマキナ。人が持つ魔力の増幅の効果を持つので、要するに巨大なパワードスーツに近い。
これが使用されているのは、まず『魔獣』の討伐。魔石を取り込み、暴走する生物『魔獣』。戦争以外の方法なら、食材にするなどの目的で魔獣を狩る事に使用される。
次に、暴走マキナの撃退。たまに、制御できずに暴走するマキナが存在するようで、それを止めるためにも利用される。要は尻拭いに近いが、そもそも暴走させた方が悪いので罪にはなる。
聖ガルガンチュア学院では、魔法や機械の基礎を身に着け、免許を得るための試験や教習をれ行えば、学院で用意されたウィザードマキナを使用することが出来る。しかも、自分のスタイルに合わせた改造も可。
エリカはそのウィザードマキナに興味津々。本人曰く、機械好きなら絶対触れておきたいものだそう。
実のところ、私にも興味がある。魔法の存在する世界に組み込まれた機械技術。この世界の機械技術の代名詞とも言えるそのウィザードマキナ、その仕組みが気になる。
気になると言えば、あの蜘蛛みたいな暴走マキナは何だったのだろうか。『スパイダー型』と呼ばれている機種のようだが、出所はあまり良くないのだそう。
と、そうこうしている内に、授業が終わった。
いわば放課後。生徒は寮に戻り、勉強や特訓に勤しむ時間でもある。
私も今日からここの生徒故、エリカ達の部屋で世話になる。彼女たちからすれば、私は新しいルームメイトでもあるのだ。
「じゃあ私先行ってるから。部屋の場所は地図に書いたからその通りにね!」
エリカが先に寮の方に行ったようだ。何気に久々に1人になれた気がする。
「寮に行く前に、少しふらついてみるか……」
「ちょっと、そこの貴方?」
何か声がしたが、無視しよう。
「ちょっ、ちょっと待ちなさい!!あなたの事を言ってるのよレオナ・レコード!!」
声の主を見てみると、確か実技の時に私を睨んでいた女子生徒だ。関わるのも面倒そうなので無視をする。
「だから無視をするんじゃないわよ!!よくもまあこの『イレーナ・タイマー』をそんな躊躇いなく無視しますわね!!」
そんな名前なのかこの女子生徒。というか何故私に突っかかろうとしてくるんだ?シンプルに邪魔なんだが。
「って、邪魔だって思ったでしょ絶対!いい加減無視しないで頂戴!!というか話くらい聞いてってば!!」
流石に可愛そうになって来るので、「何の用なんだ」と言っておいた。
「ゼェ……ゼェ……何でそんな平然と無視が出来るのよアナタは……」
「明らかに面倒臭そうだったから。」
「明らかに面倒臭そうだなんて何たる無礼な!!」
と、そしたら取り巻きが2人くらい現れた。どこから出て来たんだ?
「この方は、かの有名なタイマー家のご令嬢『イレーナ・タイマー』様であられるのですよ!!」
「にも拘らず、驚きも慄きもせず無視するなんて!!無礼にも程があります!!」
取り巻きがあれこれ言って来た。
「そんな偉いのか?そのタイマー家とやらは。」
「って、貴方そんな事も知らないの!?あのねぇ、私のパパは管理局のエリートなの!ガルディギカじゃ知らない人はいないって言うのに!!どれだけ辺境出身なのかしら貴方は!!」
管理局と言うのは、ガルディギカの警察機関の事だ。と言っても、機械関係は別の筋に任せているらしいのだが。
ちなみに、私の出身は離れに在る辺境の町という扱いになっている。
「わざわざ説明してくれてありがたいのだが知らないものは知らん。第一エリートの娘だから何なんだ?肩書を見せびらかしても意味を成さないと隊長は言っていたぞ。」
「貴方どれだけためらいなく言うのよ!!というか隊長って誰!!」
私が言ってる隊長というのは、マキナドールの中でも初期に作られた機体、要は人の手で作られたマキナドールの事を指す。私の場合、No.8さんに物凄く世話になった。
というかこの女子生徒、どれだけ食い下がる気だ?
「そもそもよレオナ・レコード!!貴方上下関係というものが分かってないようね!!」
「だったら何だ。」
「なっ……だから!どこの馬の骨かも知らない奴が調子に乗り過ぎって事よ!!」
「乗ってたとして何だと。」
「ぐっ、貴方、私を馬鹿にしているんじゃないでしょうね!?」
「しているが?」
「してるの!!?」
何かツッコミが五月蠅いなこの人。
「……いい加減行っていいか?タオルだかタイマーだか知らないが、そもそも勝手に恨まれる筋合いはないぞ。」
……構っていられないので、無理矢理この場を離れた。
「なっ、勝手にどこ行くのよ!!というか覚えてなさいよレオナ・レコード!!いずれぎゃふんと言わせてやるんだから――」
本気で五月蠅いので、早歩きで廊下の角を曲がった。