005.機動兵器さえ消し飛ばす
森の方向から、ドスドスと足音を立てながら、蜘蛛に近しい二足歩行の機械が現れた。
「嘘だろ!?よりにもよってこのタイミングで!!」
「早くあの暴走マキナを止めるぞ!」
「止めるったって、こっちもマキナを用意しないと……」
大半は慌てふためき、教師の指示など聞いていられずに逃走して行く。
一部は何やら対処法を考えようとしているが、どうやらあれは、魔法だけでは対処できない存在らしい。
「スパイダー型?暴走マキナの中では珍しい方だなぁ。」
約一名だけ、呑気に(?)観察しているが。
……いや、かく言う私もまた――
『敵機の状態を確認……動きが荒すぎる……暴走を起こした無人機と言った所か。』
「おい!!何をやっているんだ!君も早く――」
教師が避難を施していたが、必要ない。
この程度なら、今の私でも片づけられる。右腕のマシンガンが壊れていなくて本当に良かったと思う。
『座標の取得完了。動力部の特定完了。狙いは定まった。』
集中。余計な事は考えず、ただ目標に撃つ。
この一発に、ただ念じる。そうすることで、魔法陣か浮かび上がる……
魔法陣?何故だ?いやいやいやそれは後回しだ。標準はバッチリ。このまま――
「発ッッッッ射ァ!!!」
そして、機械が飛び掛かって来たのを機に、マシンガンで、撃つ。
炎に包まれたいくつもの銃弾が、動力部に命中。上空に吹っ飛び、爆散した。
落下してきた残骸は、燃えて灰になった。
「余分な事を考えず、ただ念じる。そうすれば、使える。これが魔法なのか。」
私は、壊れた武器の代わりに、魔石を使った機材や回路を入れられた。エリカ・トランサーは、それによって私でも魔法が使えると言っていた。
これが、私の持つ『火』の魔法。なるほど、火力の高いバズーカランチャーよりも、マシンガンの銃弾だけでも高い火力を出せる。
「おおおー、予想以上の威力じゃん!すごいすごい!!」
エリカ・トランサーが、目を輝かせてそう言って来た。それに便乗するように、他の生徒も歓声を上げていた。悪い気はしないが、流石に目立ち過ぎたな。
「何よアイツ……杖も使わずにあんな……」
1人、今のを快く思って無い人物がいたのを、私は見逃さなかった。とはいえ、今は放っておこう。
そう考えていたが、そう言えばさっきのあの機械は何だったのだろう。ロボットがこの世界に存在するというのはエリカ・トランサーの口から聞いていたが、その手の資料に手を付けていなかったために深くは知らない。
「……ところでだエリカ・トランサー。」
「あー、そろそろフルネームじゃなくて名前だけでよくない?」
「ならばエリカ。1ついいか?」
「これまたあっさりと。で、何?」
「先程のようなあの機械は何だったんだ?周りは『マキナ』と呼んでいたが。」
偶然か、マキナドールと同じ『マキナ』が付く機械の呼称だったので少し気になっていた。
そして、エリカはこう答えた。
「今のは『ウィザードマキナ』。この聖ガルガンチュア学院でも使用されている、魔法を駆使して操る機動兵器なんだ。」